#1 何かがおかしい異世界転移
「異世界転生」
なんとも素晴らしいフレーズだろうか。自分が暮らしている世界とは違う世界に飛ばされて最強の能力を手に入れて無双したり、可愛い女の子にちやほやされてウハウハしたり…ほとんどの人がそんなことを想像しているのだろう。
そう俺も最初はそうだった。朝目が覚めたら普段とは違う景色の場所に飛ばされていて、前を見れば例の青色のぷにぷにしたやつが蠢いている。後ろを見ればデカすぎる帽子がぶった女とキラキラ光った剣をブンブン振り回している男がその例の青いのと戦っている。
俺は一瞬で気づいた。これは俗に聞く異世界転移だと。(異世界転生ではないから顔とかスタイルも前世のままなのは少し気になったが元からイケメンなのでまあいいだろう)それはもう興奮したね。前世はいわゆるニートというやつをやっていたものだから、そう言うストーリーのラノベやアニメは嫌と言うほど見た。無双物もハーレム物もたくさん見た。そんな人生を送ってきた陰キャがこんな状況に立たされて、興奮するなというのも無理な話だろう。
そして最初に俺が気になったのは異世界物恒例の俺ツエー能力。そう言う作品の主人公たちはこぞってそのキャラたち特有の最強能力を持っている。いや、勿論そのキャラたちが人に作られた物で、最強スキルもその作品を作った人の自己満でキャラに与えられていると言うのはわかっている。だとしても、自分にもそんな最強の力が眠っているのかもしれないと妄想を巡らせたとしても、誰も俺を責めはしないだろう(ってか責めてほしくない)。
考えても仕方ないと思い、早速俺は立ち上がりその青いのに近づいて行った。俺が目の前まで行くとそいつはこちらを振り返り不思議そうに首を横に傾けた。さあ、俺の力を試してみようと思い俺は拳を後ろに引いて力を溜め、
「ファイナルアルティメットゴッドパンチ!!!!」そう叫びながら液体状の体に全力の正義の拳を叩きつけた。
しかし何か感覚がおかしかった。凄まじい必殺技が出たような演出もないし、そもそも奴にダメージを与えた気がしない。まさかと思い横からそっと奴を凝視すると、嫌な予感は的中した。プニプニした体は最初見た時と変わらず傷ひとつなく光り輝いていた。
まずい。これから始まる華々しい異世界ライフを謳歌するためにもスライムごとに負けるわけにはいかない。俺は大きく息を吸い、大技ファイナルアルティメットゴッドパンチラッシュを放った。俺の拳が奴の体を何度も殴打する。しかしやはりさっきと結果は変わらない。奴はボケーっとした顔を変わらずキープしていた。
バカなと思い俺は尻込みをついてしまった。その隙を見逃さなかったのかその青いのが俺にたいあたりをしようとしてきた。俺の攻撃がきかないとはいえこんな奴の攻撃でダメージを喰らうわけがない。そんな感じで避けようともせずただ座っていた俺は、青いののたいあたりを受けたとき、前世で感じたこともない凄まじい痛みと圧力を受け後方へ吹っ飛んだ。どんくらい吹っ飛んだんだっけな。たぶん50mは吹っ飛んだと思う。たぶん。
俺は困惑した。奴にはダメージはまともに入らずそして攻撃を受ければ凄まじい距離吹っ飛ばされてまともに立たことすらできなくなってしまう。こんなの俺が知ってる異世界転生じゃない…。俺ツエー能力は…可愛い女の子は…俺だけを優遇したストーリー設定は…どこにあるんだ…。
こんなの…まるでゲームにあるハードモードじゃないか…!いやハードモードでも足りないな。そうだとしてもスライムに吹っ飛ばされるなんてそうそうないだろう。こんなの…超ハードモードじゃねえか…クソ…。そんなことを考えていると少しずつ視界が狭く暗くなっていった。脳みそもまともに動かなくなり、もう無理オワタということろで俺は少しずつ、ゆっくりと目を閉じた。
この時の俺はまだ知らなかった。いや知る由もなかった。これから始まる異世界での、辛く厳しい葛藤の日々と困難の数々を…。
はじめまして。SIUです。
なんか気分転換にやりたいなーと思って小説書いてみることにしました。
無双物は個人的に嫌いなのでそう言うのではない一般的な異世界物にしたいと思っています。
一話のほんと序盤の導入部分なので大した量書いてませんが、次回からはもっと多く時間をかけて書いて行けたらいいなと思います。
これから気軽に連載していこうと思うので応援よろしくお願いしす。