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8/12

(8/12)確定した証拠は何もない

「言いがかりだよ!」リベルタが叫びました。「さっきから聞いてりゃなんだい! この子は(緑の髪の『ナンシー』を指差した)間違いなくアタシの子だよ! な……なんの証拠があるっていうんだい!? 全部想像じゃないか!!」


「確定した証拠はなにもありません……」


 ダッタが悔しそうに唇を噛んだ。


「だからこれは『完全犯罪』だと申し上げたんです。『忘却の子供たち』は羽化したら全てを忘れてしまう。瞳以外は全て変化して出てくる。それを利用した恐ろしい犯罪です。だから僕たちは状況証拠を固めていくしかありませんでした」


 オルトリアの戸籍課とデルタストンの戸籍課は総出で2市の『紺色の瞳』の子供たちの『羽化した状況』を確認しました。


 2人の15歳の娘の運命がかかっているんです。捜査には慎重を期しました。


 オルトリアでこの1年羽化した『紺色の瞳の子』は123人。122人までおかしなところはなかった。

 大勢の前で星を飲み、まゆになり、羽化したときの状況もはっきりしていた。


 デルタストンは110人。やはり109人までおかしなところは見られなかった。


「僕たち『戸籍課』はこんなに仕事をしていてよかったと思ったことはありませんよ!! 先輩たちが15年前地道に瞳の色を記録し続けてくれたからこその捜査ですからね!」


 ダッタは朱色の髪の娘を指差し「おかしいのはあなた! ナンシー=ウェインさんと」次に緑の髪の少女を指差しました。「ローレンヌ=ゲートリンガンさんあなただけです!」


 それから緑の髪の『ローレンヌ』の前にひざまづき両手をとった。


「ローレンヌさん。申し訳ありませんでした。あなたを救うのに僕たちは1年もかかってしまった。しかしこうやって証拠を固めるしかなかったんです」


 眼鏡の奥の優しい目が贖罪の色を見せました。おかっぱ頭が傾いて『ローレンヌ』の手の甲にダッタの額がつきました。(ゆる)しをこうているようでした。

 レインも『申し訳ない』といった風情で彼女に頭を下げました。


 緑の髪の『ローレンヌ』は震えながら首を振りました。


「確実な証拠を固めてから、あなたがアンナさんたちに『再誘拐』されないようわざわざ来ていただくしかなかったんです。全てが露見したとしてもリベルタさんがあなたの命を盾にゲートリンガンさんを脅したら我々は身動き取れませんでした」


「怪しいからってなんだい!! ちゃんとした証拠はないんじゃないか!! 言いがかりもいい加減にしておくれっ!!」


 リベルタが叫びました。


「証拠はあります………」


 え?


「リベルタさん。あなた。勝ちを急ぎましたね?」

【次回】『あなた勝ちを急ぎましたね』


〈登場人物紹介〉


【デルタストン市】

ナンシー この物語の主人公。緑の髪の毛。15歳。

アンナ ナンシーの叔母

ジム アンナの夫

ルネ ナンシーの叔母

ダイク ルネの夫

レイン デルタストン市役所戸籍課職員


【オルトリア市】

ロバート=ゲートリンガン(ご当主)街一番のお金持ち

パトリシア=ゲートリンガン(奥様)ロバートの妻

ローレンヌ=ゲートリンガン ゲートリンガン夫妻の一人娘。朱色の髪の毛。15歳

リベルタ ゲートリンガン家のメイド

ミンティ ゲートリンガン家のメイド

ダッタ=ヘッジ オルトリア市戸籍課職員

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― 新着の感想 ―
[一言] 連載のミステリーって感想書きづらいですねw すでに完結しているから作者さんには影響がないけれど、後から読む方もいますし…(*´ω`*)
[一言] おはようございます。 楽しく読ませて頂いています。 謎が謎を呼びますね。 誘拐の目的はお金持ちの家の財産を奪うことだったんですよね? なら、何故子どもをすり替えたのか。 どうやって奪うつも…
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