(6/12)みなさんこれは完全犯罪です
完全犯罪?
事態が飲み込めないナンシーと、魂の抜けた人形みたいになっているローレンヌを交互に指差しダッタ=ヘッジが大きな声でいいました。
「1年前。こちらにいるローレンヌさんと! ナンシーさんは『まゆ』の状態ですり替えられました!!」
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バラバラバラ〜ッと人が飛び出てきました!
どこに隠れていたのでしょうか!?
制服を着ています。警官です! 20人はいる。
メイドたちお屋敷の従業員も全員揃ったようでした。
リベルタたちをぐるっと取り囲みました。逃げる隙を与えないようにです。
焦ったリベルタが腰を浮かしかけましたが、奥様に「お掛けなさいっ」と言われて再び座り直しました。
「あっあんた何言ってんだい!?」リベルタがダッタに向かって金切り声を上げました。「そんなことあるわけないだろう!?」
「おだまりなさい!」ピシャッと奥様にはねつけられる。
思わず立ち上がったリベルタとすでに立ち上がっていたダッタが睨み合うような形になりました。
「リベルタさん! あなたいつから『怪しい』と思われていたかご存知ですか!? 僕らがあなたをマークしたのはいつでしょうか!? こちらにいらっしゃる『ローレンヌ』さんがまゆから羽化して2ヶ月後です!!」
「え………?」
「ご当主と奥様は初めから疑ってました。当たり前でしょう! なんの問題もなかった娘が両親に相談もせず勝手に『まゆ』になるなんてあり得ない! しかし状況から言って信じざるを得なかった!!! 娘の手紙、娘の銀の髪、娘の服に下着です!! 誘拐したにしても『まゆ』はどうなるんですか!? こればかりは擬装できない。おまけに出てきた『紺色の瞳の女の子』です。お二人とも『ローレンヌには何かのっぴきならない事情があったのだ』と納得しなければなりませんでした!」
「でもおかしかったわ!」奥様が叫びます。
「出てきた『ローレンヌ』はあまりに羽化前と違ってたわ! この子ソーセージを食べて言ったのよ『この肉ウマイ!!』って。ローレンヌはそんな言い方しない!「お肉。美味しいわ」というでしょう。全く言葉を忘れたなら理解できる。しかし言葉遣いを変えてまゆがでてくることはない。まゆの中で言葉遣いだけ変えてきた? そんなことはありえない!」
子供のころからそう言っていた。それが自然な考え方です。
「葉巻も吸ったのよ! 主人が吸っているのを見て! 目を輝やかせて!! 勝手に火をつけたわ。ローレンヌはそんなことしない! あの子は葉巻なんて吸ったことないのよ。この子!(と言いながら朱色の髪の『ローレンヌ』の腕をつかんだ)大人になる前にタバコの味を覚えていたんだわ。恐ろしいこと!!」
朱色の髪の娘は今やハッキリと震えていました。無意識に席を立とうとするが奥様が腕を離しませんでした。
ご当主が落ち着いた口調でリベルタに告げました。
「私たちは最初から『身内』を疑っていた」
全員がリベルタを見つめていました。
「なぜならば『ローレンヌの星』は常に金庫の中にあったからだ」
【次回】『怪しい従業員』
【デルタストン市】
ナンシー この物語の主人公。緑の髪の毛。15歳。
アンナ ナンシーの叔母
ジム アンナの夫
ルネ ナンシーの叔母
ダイク ルネの夫
レイン デルタストン市役所戸籍課職員
【オルトリア市】
ロバート=ゲートリンガン(ご当主)街一番のお金持ち
パトリシア=ゲートリンガン(奥様)ロバートの妻
ローレンヌ=ゲートリンガン ゲートリンガン夫妻の一人娘。朱色の髪の毛。15歳
リベルタ ゲートリンガン家のメイド
ミンティ ゲートリンガン家のメイド
ダッタ=ヘッジ オルトリア市戸籍課職員