逮捕
2人の対局が再開される。
男は角を取り王手竜取りをかける。
僕は飛車でその角を取る。
男は一度相手に捕獲された飛車を、敵陣深くに放り込む。
同じ実力の者同士の対局はなかなか終わらない。
僕は斧を振り回す男から、必死に逃げまわり活路を見出そうとする。
苦しいはずなのにどこか高揚感を覚える。
斧を躱しながら二枚目の角を設置する。
男は許さぬと丸裸の本丸めがけて追い回してくる。
首が繋がるか繋がらないか、紙一重の好防の中集中していた二人は、
外の階段から降りてくる足音に気づかなかった。
バンッと勢いよく扉が突然開かれ、青色の制服に身を包んだ二人の長身が入ってくる。
「警察だ。対局の現行犯で逮捕する。」
男は対局を中断させられたことに激怒し、雄たけびを上げながら警官に突撃する。
「お前らキャベツにしてやる。」
男は肩を警官にぶつけるが、大柄な警官はうろたえることなく男を静止させた。
暴れる男の手に、手錠がはめられる。
「署まで同行してもらえるかな。」
僕は無抵抗のまま、男と警官たちについてゆく。
警官に引きづられビルを後にしながら、男は走馬灯のように昔同じようなことがあったことを思い出す。
「お師様..」