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36 それが君の罰

ジュリアン

 ジュリアンはクリストファーとジョージアナを急き立て、二人を無理やり屋敷へと追いやって、ホッと息をついた。


これから先の話は、二人がいない方がいいだろう。本当はクラリッサだっていない方がいいが……ジュリアンはちらりとクラリッサを見たが、彼女はその視線を受け止め、頷いた。その彼女を、ボビーが優しく抱きとめる。


覚悟はできているようだ。それならば、このまま続けた方がいいのだろう。


「……陛下に会ってきた、だと? お前が? 私が御目通りするのも大変なんだぞ」


ベイルが怒りを顕にした。クリストファーの前では抑えていたらしく、ジュリアンをきつく睨みつけた。ジュリアンは少しだけ乾いた笑いをした。


ジュリアンの父はこんな叔父でも、心配し、愛していた。いつだって、気にかけていた。その気持ちをいつだってふいにしてきたのはベイルで、彼はこうやって、様々なものを壊してきた。器の小さい自分を認められず、ただ兄へのコンプレックスで。


「まぁまぁ、叔父上。クリス様の代理ですから、会えるのは当然と言えるでしょう。ウィケット侯爵家は、この国でも上位五本の指に入る資産家貴族ですからね」


あえて軽く言うジュリアンに、ベイルはギリギリと歯ぎしりをしながら、唸るように話を促した。


「何をしてきたんだ」

「私がしてきたのは、ただの仕事です。クリス様が調査した結果を書いた書類と、要望書を陛下にお見せして、宰相様や大臣にも調印してもらい、丸っと実行するだけです」

「なんだと」


クリストファーの守りたい人のために。その人が愛する人のために。


クラリッサは充分に罰を受けている。また、今後とも受けるだろう。いくら噂を訂正して流しても、結局は、変えられない。


だが、表立って非難されることはなく、また、クリストファーを、そしてジョージアナを裏切らない限り、彼女たちは守られるだろう。


何があってもウィケット侯爵のために。命を差し出すことも厭わせない。


例えば、ジョージアナは身代わりにすることなど考えないと思うが、もし、その時が来たら、クラリッサは身代わりにならざるをえないだろう。


この枷を、クラリッサは一生負っていくしかない。


それが、クリストファーを裏切り騙した罰だ。


だが、彼女はジョージアナの妹であり、二人は仲が良く、そして互いのことを思いやっているのはわかっている。その方法が間違っていただけ。


間違えさせた両親の罪は重い、とジュリアンは思っていた。


こうして引き返せないところまで、彼らは来てしまったのだ。身分相応の幸せを作っていくだけで良かったのに。


「さて。……どうやって、伝えようかと思っていたんですけどね。ひとまず、ベイル叔父上とモニカ叔母上、叔父上たちは……、ジョージアナとクラリッサに接見禁止となっています。準備が出来次第、ここから離れてもらうことになります」


言いながら、視点は定まらなかった。クラリッサの方を向くことができない。案の定、モニカは悲鳴を上げ、ベイルが叫んだ。


「な……なん……だと?!」

「そして、子爵邸から出て行っていただくことになります」

「馬鹿を言え! お前にそんなことをする権利がどこにある!」

「勅令なんです。僕がそうしたいわけではないですよ?」


ジュリアンの言葉に、空気が止まった。ベイルが震える声で繰り返した。


「……勅令? 勅令だと?」

「はい。恐れ多いことに、陛下が直々に了承してくださいました。正式な文書がここに」


ジュリアンは頷いて、手にしていた紙を広げた。そこに書かれた文字を読み上げる。


「えぇと、……『スペンサー子爵ベイル・ウィルクスは、その子爵の位を引退し、すぐにでも次世代へ譲ること。近親者で適した者とすれば、ジュリアン・トッドが適任である。辞退するなど、譲られる者がない場合は、返上とする。また、当人に譲るつもりがない場合、剥奪となる』」


きっと、叔父には恨まれるだろう。でも致し方ない。


ジュリアンはできるだけ淡々と伝えることを心がけることにした。そうでもしないと、心が折れてしまいそうだ。


「お……横暴だ!」

「僕もそう思いますよ。気が合いますね、これだけは。まさか、クリス様の要求がここまですんなり通るとは思いませんでしたので」


ベイルは机を叩いた。


「なぜ……私たちは、娘を嫁がせようとしただけだ! ただ、その、……いろいろあったが……」

「国でも影響力のある侯爵を騙した罪だそうですが」

「騙す? そんなつもりはない!」

「でも、そうでしょう? その上で、クリス様はこう思われたようです。もし気づかずにクラリッサと結婚していたら、侯爵家を乗っ取られるのではないかと……、そうやって、ひいては、王家の転覆を狙っているのではないかと、お思いになられたそうです」

「そんなわけがなかろう! ありえない! 叛逆などしない!」


叔父には寝耳に水のことだろう。そんなこと思いつきもしない、小物だ。そんなこと、わかっている。


だからこそ、しても構わないことで、しなければならなかったんだろう。見せしめとして。かわいそうに。






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