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34 夢のような出来事

ジョージアナ

まるで夢のようだと思った。きっとこれは夢なのだと。


ジョージアナは呆然とクリストファーを見つめた。私の聞き間違いかしら? でも、彼はとても不安そうな目をしている……


だが、背中を支えてくれているクラリッサの手は温かで、本物で、その優しい支えは、それが真実だと伝えていた。


本当に? 私を? ジョージアナは困惑しながらも、悟ったことがあった。先ほど思っていたように。他の人を愛していながら、ジュリアンと結婚することなどできない。まして、……こんな状況では。


「ジュリアン、そこにいる?」


ジョージアナはジュリアンを探すことができず、ただ呼んだ。すると、彼の驚いた声が聞こえた。


「え? 何?」

「私、あなたとの約束を守れないわ」


ジョージアナの言葉に、ジュリアンが深くため息をついた。


「ジョージアナ……そもそも、クリストファー様とクラリッサが結婚しないなら、約束は反故になるだろう? 僕たちの約束は、なしだ」

「私が結婚したいなんて言ったこと、怒らない?」


クリストファーがぴくりと動いた。ジョージアナはふと怯えて身を硬くした。


「あんな、その場の勢い、本気にする方がおかしいよ」


言われて、ジョージアナはただホッと息をついた。ジュリアンは自分を怒っていない。元から結婚する気もなかったジュリアンに無理に約束させたのは自分だった。わがままで振り回したのに、まるで最初から分かっていたかのように。


「ええ……そう、よね」

「残念かい?」

「……正直なところ、ホッとしてるわ」

「だよね。僕もだ」


ジュリアンが含み笑いをして言った。声にようやく、ホッとしたような色がつく。


そうだ。きっと、ジュリアンは分かっていたのだ。ジョージアナは深くため息をつきそうになって、慌てて抑え込んだ。まるで残念がっているようだ。そうではない。ただ、……自分の気持ちが見透かされていて、ただあやされていただけだったと恥ずかしかったから。


「でも、私、どうしたらいいのか……」

「何言ってるんだ、ジョージアナ。君は充分、魅力的だよ。自分を信じて。そして、クリス様を信じて。遊びでそんなことを言う方じゃない」

「え、ええ、……」


ジョージアナは俯くと、どこを見ていいかわからなくて視線を彷徨わせた。そこへ、ジュリアンがクリストファーに声をかけた。


「ところで、クリス様」

「なんだ」

「思う存分、愛を伝えてくださって構わないのですが……ええ、僕たちは、邪魔をしませんから。でも、書類のことでちょっと、話をせねばなりません。お尋ねしますが、書類通りでいいんですよね?」


書類? ジョージアナは思わずクリストファーを見たが、表情は変わらず、ジョージアナをじっと見ていた。


「ああ、もちろんだ。一つも変更はない」

「わかりました。それでは……乗りかかった船です、このまま最後まで、この仕事を成し遂げましょう」

「……頼んだ。申し訳ない」

「お安い御用です。あなたの友人としての初仕事ですからね、張り切ってますよ。まぁ、陛下に会いに行かされるなんて思いませんでしたが。肝が冷えました」


ジョージアナは、ジュリアンの言葉に耳を疑いそうになった。陛下に会いに行ったって? なんのために?


「ですから、ジョージアナを連れて、お部屋にお戻りください。この先は私だけで充分です」


聞き返す前に、ジュリアンに急き立てられ、クリストファーと二人、ジョージアナは屋敷の中に追い立てられた。






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