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27 当然だと思ってた

クラリッサ

「こ、侯爵様……」

「都合の悪いことは何もかもジョージアナですか?」


冷たい声が、さらに冷たく響く。


「彼女を愚弄しないでいただきたい。彼女は立派で高潔な人だ。彼女は、クラリッサ嬢の駆け落ちのことは何一つ言わなかった。家で冷遇されていることも、何一つ。言ってくれたら、助けになれたかもしれないのに……」


クラリッサはちらりとジョージアナを見た。青い顔で信じられないようにクリストファーを見つめ、立ち上がってすぐにでもその場からかけて行ってしまいそうだ。クラリッサは慌ててジョージアナの腕を掴んだ。ジョージアナが泣きそうに歪んだ顔でクラリッサに顔を向けた。


「あなた方は、駆け落ちを隠してジョージアナを連れてきて、気分が戻ったとクラリッサ嬢を平然と連れてくるような嘘つきだ。それに振り回されるジョージアナがかわいそうだと思わないのですか。クラリッサ嬢だってそうだ。素直でとてもいい子なのに、あなた方の限りない贔屓とおだてのおかげで、尊大で配慮の足りない令嬢になってしまっている。あなた方のせいですよ!」


クラリッサは驚いて両親を見た。


格上ではあるが年下の若造に説教をされ、憤りで頭に湯気が登っている父ベイル、不愉快さで眩暈を起こしそうになっている母モニカ。


大好きな両親だ。クラリッサとジョージアナを振り回していた? 自分は贔屓されていたの? でもずっと、……ずっとこうだったから。何が悪いのか、わからない。


クリストファーがクラリッサに目を向けた。


「クラリッサ嬢、私は人のものを無理に手に入れる趣味はありません。まして、私と契約を交わしながら、私の知らないところで、別の男と約束した女性など。……帰っていただきたい」


冷たい言葉に、クラリッサは足先まで一瞬で冷えた。本気だ。クラリッサは自分の愚かさを呪った。そして、それを許して甘やかしてくれた両親にも。


うまくなんて行かないじゃない。大丈夫って言ったくせに。


すると、父ベイルが憤って、鋭い声で言った。


「私たちに帰れとおっしゃるのですか。ここまで進んで、そんなことがまかり通るとお思いですか?!」

「思いますよ。駆け落ちしたと公表すればいいのですから」

「そんな不名誉なことできますか!」

「私がします。駆け落ちされたから、婚約破棄する、と。簡単なことです」

「お待ちください、侯爵様。クラリッサは素晴らしい娘ですわ! ジョージアナなどよりずっとあなたに釣り合います。身代わりとしてやってきて、権利もないようなジョージアナのために、何をお怒りなのですか」


モニカの言葉に、クリストファーはイライラしたように手で振り払い、ため息をついた。


「ジョージアナは聡明で優しくて……可愛い方ですよ。令嬢として、あなたの求める姿とは違うかもしれません。ですが、彼女はれっきとした、しっかりと自分で立てる令嬢なのです。もっと彼女を見てあげてください。親であるからといって、彼女を押さえつけすぎるのは、とても勿体無いことです」


クラリッサはクリストファーを呆然と見た。


ジョージアナが聡明で、優しくて可愛いのは、自分だけが知っていることだと思っていた。いつだってジョージアナはクラリッサの後ろにいて、支えてくれて、だから、クラリッサはジョージアナを独り占めできたのだ。


「私じゃなくてジョージィ? ジョージィなの……?」


クラリッサは思わず呟いた。


信じられないことに、クリストファーは自分を擁護せず、ジョージアナを擁護した。


自分が望んでいた世界と違う。クラリッサは、クリストファーと結婚するはずだ。そして、そこでは、いつだってジョージアナが助けてくれる。


「ボビーのせいよ、ボビーが悪いんだわ。あの時、あんなことを言うから! 私、好きな方と、結婚できなくなってしまったじゃない。お父様、お母様も! 大丈夫だとおっしゃったじゃないの!」


「違う。あなたはその時、愛を選んだんだ。愛し愛される、強い結びつきを望んだのでしょう? あなたが好きな私は、見目と、肩書きと、お金です。そこに愛はない」


愛?


愛なんて。


クラリッサは頭が混乱してきた。





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