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24 庭での語らい

ジョージアナ

「クリストファー様、歴史書は全て読みましたわ。私には難しくて、時間がかかってしまいました。ジョージアナはすぐに読んでしまったそうですのね。早く読めるようになりたいですわ」


クラリッサがはしゃいだように言い、クリストファーが穏やかに微笑んだ。


「……そうでしたか。こちらに来てお暇そうでしたので、読んでいただいたまでですが」

「それより、メイド長に庭のことを聞きましたのよ。ここでお茶会が開かれたのは、ずいぶん前なのですってね。どのあたりでやっていらしたの?」


ジョージアナはふと顔を上げた。


お茶会の話は、ジョージアナも聞いたことがあった。イチゴを使ったケーキが人気で、前の侯爵夫人が張り切って飾り付けをしていたと。クリストファーはそれをよくつまみ食いし、追いかけられていたことなど、今のクリストファーからは想像もつかないやんちゃな話をふんだんに聞いた。


うっかりクリストファーと視線が合った。本人に黙って話を聞いたことに後ろめたさを感じ、頬を染めて俯いた。彼もすぐに目をそらしながら、立ち上がった。


「ご案内しましょう。こちらですよ」


二人は仲良く連れあって、花の間を歩いて行った。ジョージアナはその姿をぼんやりと見つめた。羨ましいを通り越して、遠い出来事のようだ。つい先日まで、隣にいたのは自分だった。でも、それが続くように願うのは、ジョージアナのように魅力のない女性には、罰当たりなことだ。


「ほら、見て。一生懸命なクラリッサの可愛いこと! なのに、侯爵様は、日取りをお決めにならないのよ」


ジョージアナは首を傾げた。


「まだ決まっていないの? でも、花嫁修業も進んでいるし、結婚はするのでしょ?」

「そのおつもりだと思うけど……」

「早く決まるといいわね」

「あらやぁね。まるで、決まらないのは当然と言いたげに。気に入られてないとでも言うつもり? クラリッサはあなたじゃないのよ」


そんなことわかってるわ、と言いたかったが、苦しくて言えなかった。気が抜けた声になってしまったのは、あまり考えたくないからだ。


ジョージアナの母は憤慨したように鼻を鳴らした。


「クラリッサが気に入られないわけがないじゃない。ほら、あんなに仲が良さそう」


事実、二人は寄り添って庭を散策しており、楽しそうではあった。でもクラリッサの妙にはしゃいだ様子と、クリストファーの穏やかな物腰に不安を禁じえない。


どうして日取りを決めないのかしら。


自分のためにも、早く決めてほしい。そして早く終わって、クリストファーが目に入らない場所へ行きたい。


ジョージアナの考えをよそに、彼女の父はのんきに妻のモニカを励ましている。


「そうだよ、季節を考えているだけさ。人をたくさん呼ぶなら、日程調整も必要だろうしね」


そうよ。


結婚は愛し合う二人か必要な二人がする。


クリストファーとクラリッサはどちらも持っている。結婚は必然だ。


そう思うと、愛し合ってもおらず、必要ともしていないのに、ジュリアンが結婚式が終わったらジョージアナとの結婚を両親に話すなんて、おかしな話だ。ジュリアンには迷惑をかけたことを謝って、撤回してもらおう。


自分は確かに、嘘をついた。でも嘘をつかないとやってられない。


「そうねぇ……」


ジョージアナがぼんやりと頷くと、モニカが訝しげに彼女を見た。


「ジョージアナ」

「何? お母様」

「あなた、ちゃんとクラリッサのいいところを売り込んでおいたんでしょうね」

「え?」

「あの……なんとかって男爵の息子の話とかはしていないわよね?」

「もちろん、していないわ。どうして?」

「だっておかしいじゃないの。あなたはよくやってくれたわ、でも、クラリッサに悪影響だったのかもしれないって思うのよ。自分のできないところがクラリッサと似てるとか、そういうこと言ったんじゃなくて? 似ても似つかないのに!」

「ジュリアンかもしれんぞ」

「あら。どうして?」

「兄は私が成功することを気に入らんだろうからな。娘が侯爵夫人になんてなってたまるかと、そう思ってるはずだ。だから、ジュリアンを侯爵様と仲良くさせ、クラリッサを悪く言わせたかもしれん」


すると、モニカは青い顔をした。


「まぁ、大変! 信用するんじゃなかったわ!」

「待って、お母様もお父様も。ジュリアンはそんなことしてないわ。それに、もしそうだったら、クリストファー様も、クラリッサが来る前に破談にしていたはずよ」

「そうかしら? 侯爵様は良い方ではないようだし、クラリッサを弄ぶつもりかも」

「そんなこと、するはずがありません!」


ジョージアナは憤ったが、モニカは眉をひそめただけだった。


「自分には手を出さなかったから? でもね、ジョージアナ。クラリッサとあなたは違うのよ? 女性として色気がない人を誘惑しようがないじゃないの?」


私の問題じゃない、とジョージアナは言おうとしたが、喉の奥に物が詰まったように出てこなかった。





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[一言] この両親ムカつく!(笑)
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