18 友情
クリストファー
「ジュリアン」
クリストファーが声をかけると、驚いた顔でジュリアンが振り向いた。
「なんでしょうか」
「彼女の両親はいつもああなのか」
「ああ、とは?」
「ジョージアナのことをずいぶん悪く言っている。クラリッサのことはべた褒めするのに」
ジュリアンは表情も変えず、逆に質問を返してきた。
「どうお思いで?」
「どうも何も……私にとっては二人とも大して変わらない普通の令嬢だ」
「そうですか」
「だが、子爵はジョージアナをけなしすぎる。ジョージアナは聡明で、淑やかで、とても優しく、……笑顔はとても美しい。クラリッサに引けを取らないくらい……むしろ、それ以上に可愛いじゃないか。そのことを、ご両親が知らないはずはないだろう?」
ジュリアンは首を傾げた。
「さぁ? 知らないんじゃないですか。クラリッサのことばかりですから。現に、クラリッサを一目見て結婚を決めたのはあなたでしょう」
痛いところをつかれた。確かに、彼女の華やかさと、評判に惹かれ、すぐに話に乗り気になったのは自分だ。
「確かに、結婚を決めたのは早かったが……私はあまり女運が無いというか……その、女性の扱いが上手くないから、みんなに心配されていて……クラリッサなら、大丈夫じゃないかと言われて……」
「ご自分の意見はないのですか」
「い、いや、クラリッサのような明るい子はいいなと思ったんだよ。本当に」
言い訳のように言うと、ジュリアンは困ったように眦を下げた。これではどちらが年下なのかわからない。申し訳なく思いながら、ジュリアンの言葉を待った。
「では、今はどうなんです? クラリッサでよろしいんですか?」
「……馴染むには時間がかかるだろうが、別に」
「なら、問題は無いですね。せいぜい、大事なこのお屋敷を、幼い令嬢の趣向で大改装されないように、気をつけてください」
言うと、さっさとその場を離れようとする。クリストファーは慌ててその腕をつかんだ。
「待ってくれ」
「なんでしょうか。ちゃんと結婚式には出ますよ」
本当に不思議そうなジュリアンの顔からは、それ以上の気持ちは読み取れない。本当に何も考えていないのか、隠しているのか、さっぱりわからない。
「君は……ジョージアナと結婚するのか?」
急に空気が冷えた気がした。やはりクリストファーとの仲を疑っているのか。そのつもりはない、とわかってもらえればいいのだが。クリストファーはジュリアンにもジョージアナにも嫌われたくなかった。
「どうしてそんなことを気にするのです?」
「最初から思っていた……彼女のためだけに来るなんて、公表していないだけで、そういう関係なのだと」
クリストファーが言うと、ジュリアンはため息をついた。
「あのご両親を見たでしょう。あの方たちがジョージアナをあまりに構わないので、僕は父からジョージアナの手助けを任されているんです。僕はジョージアナを守りに来ただけですよ。あなたの評判が良くなかったものですからね」
「それは……申し訳ない……」
「もう偏見は持っておりませんから、気になさらないでください」
ジュリアンは微かに笑った。彼が友になってくれたら、どんなにいいだろう。だが、年齢差もあるし、何より、彼とはジョージアナの夫として会わねばならないのは、きっとひどく辛くなるだろう。
「君は……その……いつも穏やかで感じが良く、……羨ましいな」
クリストファーの言葉に、ジュリアンが穏やかに微笑んだ。
「……クリストファー様にそうおっしゃっていただけるとは、僕としても嬉しいです」
「ジョージィも、君のそんなところに惹かれたのだろうか」
「惹かれ……”ジョージィ”?」
「あ、いや……その……クラリッサ嬢が彼女をそう呼んでいたから……」
しまった。思わず口走った言葉に、頭に血が上った。




