表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/39

15 すれ違い

ジュリアン、クリストファー

「ああ……やってしまった……」


ジュリアンは頭を抱え、深くため息をついた。


「君たちもそう思うだろう。無礼講だ、なんとでも罵っておくれ」


ジュリアンの言葉に、ウィルとエレインが顔を見合わせるのがわかった。


「そうは言いましても……」

「売り言葉に買い言葉になるのも、仕方ないかと……」

「そうだろう、そうだろう? ああいうところが、ご両親とも理解し合えない根本原因な気がするんだよなぁ。まぁ、叔父上には問題がありすぎだけど、それを差し引いてもさ……」


我が意を得たりと一瞬喜びはしたが、さほど長続きはしなかった。


「まいったな」

「そんなに困ることでしょうか? ジュリアン様とジョージアナ様は、仲がよろしいですし、ご結婚なさっても、いいご家庭を築けそうな気がします。もちろん私は、ジョージアナ様にはクリストファー様と結婚していただきたいですが」

「ま、ね。仲はいいけど、お互いにそういう対象ではないから。やっぱり兄妹みたいなものだと思うよ。僕は妹がいないから、感覚でしかないけど」

「恋してはおられないと?」


エレインの言葉に、ジュリアンは少し考えた。でも、やはり、そうそう感覚は変えられない。


「広い意味の、家族としては愛しているよ、もちろん。でも、それまでだ。だからと言って、結婚できないわけじゃない。そういうものだと言われれば、なるほどなと結婚するだろうね」

「お好きでもないのに?」

「条件は満たしてるから。人として好ましく思っていて、頭が良くて、親切で、しっかりしている。信頼できるから、家を任せても安心だろう」


エレインが困ったようにジュリアンを見た。


「……そこまでよくご存知で、本当に愛しておられないのですか?」

「あいにく、そんな目で見たことがないんだ。ジョージアナはどちらかというと、同志に近いかな。強いて言えば、僕は君のような人のほうがいいね」


ジュリアンが笑いながら言うと、ガシャンと茶器がぶつかる音がした。


「どうしたんだい? 大丈夫?」

「あ、いえ、ジュリアン様がおかしなことをおっしゃるから……」

「おかしなことって?」

「私のような者がいいなどと、お戯れをおっしゃって」

「嘘でも冗談でもないけど……君がそう思うなら、そうなんだろう」


澄ましたジュリアンの言葉に、ウィルがクスリと笑った。


「エレイン、今まで君、誰にどう口説かれても動揺一つしなかったのに……君も人間なんだね」

「何を言うの、ウィル。私はいつだって困ってるし、第一、誰もどうも口説かれていません」

「え、でも、こないだ」

「何もありません。私はジョージアナ様の侍女としてまだまだ働くんですから」

「別に結婚したって仕事はできるよ、エレイン」

「ウィルぅぅぅぅ」


☆☆☆


エレインがウィルを半泣きで呼んだ。


それまで、彼らがどんな会話をしていたのか、クリストファーには、わからなかった。ドアに隠れて耳を澄ませていたにもかかわらず、彼らの声がさほど大きくなかったのと、衝撃が大きすぎたためだ。


たまたま通りかかった部屋からジョージアナが出てきたのは驚いたが、さらに、彼女があんな大声で決意を言い出すとは、思ってもみなかった。


わかっていたはずなのだが、やはり、言葉にされると辛いものがあった。ジョージアナは確かに、ジュリアンと結婚したいと言っていた。怒り声だったが、おそらく、ここの滞在が長く、うまく話が進んでいないからだろう。もしかしたら、ジュリアンに、自分との仲を疑われてしまったのかもしれない。ようやくクラリッサがきて、ホッとできるのだろう。


クリストファーは自分が傷ついているのがわかった。それも、思ったよりも深く。


ジョージアナの態度が可愛かったから。優しく、自分を気遣ってくれたから。自惚れていた。


クラリッサを呼んで、話し合い、手順を踏んでこの話を白紙に戻せば、クラリッサの経歴には傷がつかないはずだ。その上で、ジョージアナに申し込もうと思っていた。すでに相手がいるのに、別の女性に手を出そうとすれば、それは愛人であり、不名誉なことだ。ジョージアナにそんなことはさせられない。そう思って、一抹の不安を感じないようにしていた。


でもそれは間違っていなかった。


彼女はあくまで、自分のことはクラリッサのお相手としか見ておらず、自分だけが愛していたのだ。


クリストファーは足元がぐにゃりとするように感じた。


そうだ。自分は彼女を愛してしまったのだ。迷惑にしかならないのに。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] それにしても本当に家族愛なんですね、ジュリアンさん。 クラリッサ来襲楽しみになって来ました。ヘタレ君はきっと後悔するに違いないです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ