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そこで彼女の中の何かのスイッチが入ったのか、今までよりも熱心にたたみかけてきた。
そして、颯の前で少し上目遣いで尋ねられるとそういう耐性のない颯は、
「いえ、まあ」
先ほどと同じような曖昧な返事しかできないようになってしまう。
「どうしても、だめ? かな?」
彼女がたたみかけてくる。
それと同時に熱が入ってきたのか徐々に顔が近づいてきているようにも感じる。
端正な顔が近づいてくると、颯は余計に緊張してしまう。その大きな目でのぞき込まれると恥ずかしくなってしまう。寒いテラスの席なのにいい匂いがこっちまで漂ってくると、もう彼女の眼を見ることはできない。
颯は目をそらしながら
「でも、僕が行っても迷惑じゃないですか」
何とかそれだけは言うことができた。
「ううん、興味のある人が行ってくれたら私も嬉しいし、第一少しは鍛えていくんだから大丈夫よ」
彼女はどうやらどうしても誰かと行きたいらしい。
なぜだろう、と颯は思った。それに山の方というのも気にかかる。山までの道はブリザードが吹き荒れているので、山に登るなら夏の時期に船から直接のぼるのが主流である。というか、冬のルイミをのぼって超えてきたのは今までいなかったはずである。そんなところに一介の高校生が言っても大丈夫なのだろうか。
改めて冷静に考えると分からないことや不安なことも多い。やはり断ろう、と颯は思った。
「一か月鍛えたくらいでルイミの山に登れるとは思わないのですが」
彼女は少し驚いた表情をした。
「まさか山に登りたいの?」
「違うんですか?」
「私は山のふもとに行きたいだけなのだけど、それに冬のルイミに登るのは私たちでは無理だわ」
山に行くというから登るものとばかり考えていたがどうやら違うらしい。
「冬に登らないなら夏に近づけるんじゃないですか?」
「夏はもう行ったわ。陸路で行ってみたいの」
颯はここでもう一つ思い浮かんだ疑問を口にした。
「何で僕なんですか?」
そう、いくら颯がルイミの方を見ていたからと言って、それだけでいきなり誘ってくるのは疑問に思うところである。
初めて読んでいただいた方も、いつも読んでいただいている方もありがとうございます。この物語は平日の21時に投稿予定です。今週はここまででですが来週もまた読んでいただけると嬉しいです。また、少しでも続きが読みたいと思っていただけたのならブックマーク等で応援していただけると嬉しいです。




