11 依存
……早希から連絡がない。
それだけで1日ずっと不安になる。スマホを何度見ても何の変化もなくて、スクロールを何回もして更新しても、新着メッセージが来ることはなかった。
(どうしたんだろう、何かあったのかな)
頭の中が早希でいっぱいになる。お母さんにも、スマホばっかり見てないで、と言われてしまうくらいには私はそわそわしていたらしい。
(そうだ、図書館に行けばわかるかも……!)
そう思い、荷物をかき集めて図書館へ向かう準備をする。
「麻衣、どこか行くの?」
「図書館!」
「行ってもいいけど、最近暑くなってきたからあんまりうろうろしたらダメよ?あと、お昼までには帰ってきてね」
「うん、わかった!」
せっかくのお母さんの休みだというのに、私は適当に返事をするとそのまま玄関を出る。私の頭の中には早希のことでいっぱいで、他のことなど考えられなかった。
(早希、早希、どこ……、早希……!)
図書館に着くやいなや、早希を探す。図書館だというのに、ちょっと早足でキョロキョロと辺りを見回していたせいか、ドンっと司書さんとぶつかってしまった。
「す、すみません」
「館内を早足で移動するのは危ないですよ」
「……はい」
自分が悪いのに、そう言われてちょっとムッとしてしまった。確かにちょっと早く歩いていたけれど、そんな言い方しなくていいじゃない、とつい反抗的な考えが浮かぶ。
余裕がなくなっている、ということに気づかず、司書さんの手から散らばった本を拾うこともせず、私はそそくさとその場から立ち去る。
(早希、どこ行っちゃったの?何かあったの?)
普段は出勤なはずなのに、と図書館を何度も何度もいたるところを回ってみるが見つからない。
(何でいないの!どこにいるの!!)
どんどんと理不尽な怒りが、モヤモヤぐつぐつと自分の中で滾ってくるのがわかる。いくら何度館内を見回ろうが、見つけることができず、もうここにはいなそうだと渋々諦め、今度は外に出る。
いつの間にか日差しは強くなり、朝出てきたときよりも暑くなっていることに気づいて、少しフラつく。
(うっ、気持ち悪い……)
ふらふらと、足取り重く家路につこうとしたときだった。
「早希!」
「あー!きーちゃん久しぶりー!!」
目の前で仲睦まじく友達らしき人と戯れている早希を見て、勝手に絶望する。
(……誰?何で私に返信してないのに、他の人と会っているの?)
理不尽な怒りと気持ち悪さで、とうとう我慢ができなくて、胃からせり上がってきたものを吐き出す。
「うぇ、っげほ、ごほっ、う、ぐ」
「あら!貴女、大丈夫?!」
道すがらの人に声をかけられるも、ただ「うぇ、ぐ、だ、だいじょ、うぶ、です」としか答えられなかった。
(私だけが友達だと思っていたのに……!!)
勝手な想いが募る。口元を押さえながら、睨みつけるように早希達を見る。
友達が少ないって言ってたじゃないか!
私に連絡も返さなかったくせに!
なんでなんでなんでなんで…………っ!!
「……麻衣?あれ、どうしたの?大丈夫?!」
早希がこちらに気づいたようで、不安げな顔をしながら私に近づいてくるのがわかる。
でも、私のこの、こんがらがった感情はどうすることもできなくて、「来ないで!」とぶっきらぼうに怒りに任せて拒絶した。
「え、麻衣?」
「ちょ、早希、大丈夫?この子知り合い?」
「友達だけど……」
「え、友達なの?」
明らかに、冷めた目で見られているのがわかる。なんでこんなやつと?といったような目で見られて、感情が追いつかずにその場から逃げ出すように踵を返して早足で立ち去る。
「麻衣!」
「早希、逃げちゃったんだし、いいんじゃない?追いかけないほうがいいよ。変な病気うつっても困るでしょう?」
「で、でも……」
「あんた、そういうところが人に付け込まれやすいんだから。何でもかんでも受け入れちゃダメ」
後ろの会話が聞こえる。もう何も考えたくなくて、聞きたくなくて、私はぐちゃぐちゃのまま家に急ぐ。
家に帰ると、吐瀉物まみれで汚くて異臭のする私を見て、当然ながらお母さんにはとても心配された。
でも私は自分でもよくわからないほど興奮していて、何でもないと強がって、吐瀉物で汚くなった服をゴミ箱に押し込む。そして、そのまま部屋に引きこもって、ただただ泣くしかできなかった。




