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何気ない日だった。


クラスメイトの友達と一緒に、何気ない話をしながら、いつもの通学路で学校から帰る。


お母さんもお父さんも、仕事が忙しくていないのはわかっているから、ランドセルを片付けたり、用意されてる軽食用のお弁当を持って支度したりして、塾へ向かって私立中学校の受験勉強。


何ら変わりない、いつもの出来事のはずだった。


横断歩道でいつものように「今夜の夜ご飯なにかなー」なんて適当なことを考えていた。すると、突然明るくなる視界。


(眩しいなぁ)


気づいたときには、目の前にトラックが物凄い勢いで迫ってきていた。


悲鳴を上げることすらできなかった。


そして、私の意識はそこで途切れた。





ずっとずっと、深い深い海の底に漂っているような感覚。


海の底になんて行ったことはないけれど、きっとこんな暗くて冷たくて静かなところなんだろう。


(……動けない)


苦しくもない、つらくもない、でも何もできない。


ただ、ここに自分がいるだけ。


何で私はこんな真っ暗なところにいるんだろう、と思い出そうとして、ゆっくりと身体が浮き上がるような、ふわふわするような、そんな不思議な気持ちになる。


「どうかどうか、お願いだから、目を覚まして……っ!」


この声はお母さんだろうか。お母さんの声が聞こえて、キュッと胸が苦しくなる。


「もう一度、お願いだから」


お母さんの苦しそうな声。つらそうな声。こんな声は今まで聞いたことがなかった。


(お母さん、泣いてるの?)


何をそんなに悲しんでいるのだろうか。私に何ができるかな。お母さん大丈夫かな。


どんどん疑問や感情が湧いてくる。今までにない感覚。


ふっと身体が軽くなる。


今なら、手が動くかもしれない。


……そう、今なら頑張れば、きっと。


今までで一番というくらい、全力で動く。それが実際には指先しか動かせなかったとしても、それが今、私にできる全力だった。


「……っ、麻衣?!看護師さん、看護師さん!麻衣、麻衣が!!!」


ザワザワと色々な音が聞こえる。


先程まで静かで真っ暗なところにいたというのに、今は明るくて真っ白な空間にいることに気づく。


(ここは、どこだろう)


ぼんやりと、あまりの眩しさに目を細めながら、私は長い時を経て目覚めた。

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