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寺崎 里奈(てらさき りな)

面接試験でよく聞かれる、


「尊敬する人は誰ですか?」


と、いう質問。

私の答えは決まっている。


「双子の姉です」


私は姉には敵わない。本当に姉を尊敬している。


 私たちは子供の頃から美人姉妹と言われていた。ただ、私と姉は二卵性双生児だから、似ていない。


それでも両親が二人とも背が高かったから、私たちも身長が伸びるのは早い方だった。同級生の中でも背が高く、スタイルも良く見られた。


 なぜか周りの人は、美人は何でも出来るものと思っているみたいだった。勉強にしてもスポーツにしても。性格も良いものだと決めつけられている。それは理想だと言ってやりたかった。現実に、そんな人はごく稀にしか存在しないんだよ、って。


けれど、姉はそんな理想通りだった。少し天然だったけど……。私とは違った。


 美人が何か出来ないことがあれば、途端にダメ人間の烙印を押される。あいつは顔だけだ。甘やかされて育ったんだって。そう言われている娘を何人も見たことがある。

そんなことにめげずに挽回して美人の地位を守る娘もいるし、そのままダメ人間として楽な道を歩む娘もいる。


 私はダメ人間になんて見られたくない。必死にこの地位を守る。

美人は、周りの人と同じレベルの事をしていてはダメ。

同じスタートだったとしても、要領良く物事を吸収しなければいけない。

周りの人より常に先を進んでいなければならない。

そして、周りの一般人にコツや要領を教えてあげられる立場を保たなければならない。

一瞬たりとも弱みは見せられない。

一度でも一般人レベルだと思われれば、それこそ一般人は付け上がる。


 付き合う男にも気を付けなくてはいけない。

見た目だけ良いチャラい男が言い寄ってきたりするけど、そういう男とは友達以上の関係にはなってはいけない。自分の品位も落ちるし、もし変な別れ方をしたら、後々どんな悪い噂を流されるかわからない。

ただ、そういう男はスクールカースト上位にいることが多いから下手に振って関係を悪化させても私の立場を危うくする。付かず離れずの微妙な関係を保ち続けることが、一般人に成り下がらないための秘訣だ。


 私はいつでも高嶺の花で居続けなければならない。

白鳥は優雅に浮かぶその水面下では、必死に足で水掻きをしているということを知らない人は多い。

美人というのは、生まれつき何の苦労もなく綺麗な顔をしていて、抜群のスタイルを維持していると思っている人も多い。

充分な睡眠をとらなければ肌は荒れるし、好きなお菓子やスイーツがあっても食べ過ぎればスタイルの維持は厳しくなる。

白鳥と同じで、美人も水面下で努力をしている。

しかし、その努力を気付かれてはいけない。


 私の場合は私が出来ないことがあれば、姉が教えてくれていたから、すごく助かっていた。

姉が出来ないことがあるのを見たことはない。

常に私よりも先を進んでいた。

そんな姉に引っ張られるように私にも出来ることが増えていった。

私は姉に教わりながらだけど、姉と同じ美人の地位というのを守り通すことが出来た。

だから、何かあれば何でも要領良く対応することが出来るようになった。


 学生時代は姉と一緒に勉強もスポーツも学年のトップクラスを維持し、才色兼備という言葉を欲しいままにしていた。


高校卒業後の進路を決めかねていた時も


「私は大学に行って将来は秘書になりたい」


と、姉が言っていたのを聞いて私も秘書になるって決めた。

結局、姉と同じ大学に進み秘書検定にも合格し、今では二人とも違う会社だけれど、社長秘書として頑張っている。

 社長秘書ともなれば、困難な業務も多々出てくるが、その都度、過去の『気付かれてはいけない努力』を行ってきた成果で、乗り切ることが出来ている。


 今は、姉とは離れて


『メゾン・ド・コント・ド・フェ』


と、いうアパートで独り暮らしをしている。

姉への感謝は忘れずに。


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