犯人
はい。私が殺しました。
コーヒーに薬品を混ぜて飲ませました。
しばらくすると苦しみだして、もがいた揚句、動かなくなりました。
目を見開いたまま動かないから、死んだと思いました。
だから、脈を計ったり、息をしているかの確認はしませんでした。
毒は大学の研究室から盗んできました。何かあった時の為にと思って。
「備えあれば憂いなし」
です。
どうやって、毒を盗み出したのか、ですか?
同じ研究室に可愛らしい女の子がいるのですが、その子の要領が悪いのです。
よく不手際でみんなに迷惑をかけたりしているのですが、可愛らしい見た目もあって教授も厳しく叱ったりしないのです。
で、私の欲しい薬品の瓶を、その子がぶつかりそうな机の上に置いておきました。
その薬品の瓶の中身は粉体です。
案の定、その子は私の置いた瓶にぶつかって、落として瓶を割ってしまいました。
周りの人は、またか、くらいの感じで特に大事に感じていませんでした。
私はすぐに箒と塵取りを持ってきて、割れた瓶の破片や薬品の粉を拾い集めました。
教授には、
「この薬品の廃却方法は、屋外の広い場所で焼却処分なので私が行ってきます」
と、言って研究室を抜け出し、外で自分のカバンに隠しました。
ダミーの薬品を焼いておくのも忘れませんでした。
ダミーの薬品はドラッグストアでも売っている安全なものです。
私は優等生と見られていたので、誰も怪しむ人はいませんでした。
瓶を割った女の子が私に
「ごめんね。色々ありがとう」
なんて言ってきたので、
「怪我は無い?危ない薬品を使ったりするから気を付けた方が良いよ」
って、優等生らしく振舞っておきました。
殺した理由?
私は薬学部に通っていて、高額の授業料を払わなくてはなりませんでした。しかし、父はかなり前に他界していましたし、母は弟二人と暮らしていますが裕福なわけではありません。ですから授業料は自分で稼ぐことにしました。ドラッグストアのバイトだけでは足りず、体を売って授業料を捻出しました。
ただ、聞くところによると、金銭の授受の時に支払いを渋る客がいるっていうのは、そういうネットワークの中では当たり前のように言われていて。下手すると殺されてしまう女の子もいるらしいし。
で、保険の為にその行為を録画しておいたのです。
「備えあれば憂いなし」
です。
しかし、その録画に気付いた男がいたのです。
それが、小野寺さんです。
小野寺さんは、隠しカメラに気付くと、
「私は、こういうことが好きではないんですよね」
って、顔では優しく微笑んでいたのですが、目は全然笑ってなくて。
映像データをその場で消されて、他にも隠しカメラが無いか結構、時間をかけて探していました。
これは、やばいって思って。親や大学にバラされるか、何か私にとって良くない取引を持ち掛けられるかも知れない。
このままだと、せっかく薬剤師になろうと頑張ってきたのに今までの努力が全部無駄になってしまう。強請られるかも知れないし、一生付きまとわれて私の人生終わってしまうかもって。
だったら、先に手を打たなければ。
殺すしかない、と思いました。
あとは簡単でした。
ダイニングキッチンのテーブルに向かい合って座り、コーヒーを飲みました。何の疑いも持たずに小野寺さんは毒入りのコーヒーに口を付けました。
死んだのを確認した後は窓側の部屋の布団に寝かせました。
その後、チャイムが鳴って宗教の勧誘が来て焦ったのですが、布団に死体が寝ているとは思いもよらなかったみたいで、全く気付かれませんでした。
死体は、解体してゴミと一緒に捨てるつもりでした。
結局、何も出来ずに布団に寝かせておくだけでした。
あとは刑事さんが知っている通りです。




