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杉本 太一(すぎもと たいち)

『メゾン・ド・コント・ド・フェ』


それが、このアパートの名前。何語なんだろう。


僕は、この春から大学生としてこのアパートで新生活を送る。

生まれてから高校卒業まで地方にある実家で暮らしていたので、この101号室が、僕の初めての部屋だ。


このアパートは長方形の建物で道路側に端面が向いている。二階建て、各階五部屋ずつの計十部屋がある。

部屋は横一列に並んでいて、全ての部屋の玄関扉は北側に向いている。

道路側から見て101号室は一番奥にあたる。

105号室のわきに二階に上がる階段があるから、101号室の前まで来るのは、この部屋の住人の僕だけなので、静かで良い。


玄関を入ると、すぐにダイニングキッチンがあって、向かって右側に風呂とトイレの扉がある。部屋によっては左右逆の作りになっているらしい。見たことはないから、はっきりしたことは言えないんだけど、大家さんが言っていたから間違いないだろう。風呂とトイレが別々になっているのも、このアパートの良い所だ。


ダイニングキッチンを抜けると、六畳の洋間がある。一見、狭そうだけど収納もあるし、一人暮らしなら問題ない広さだ。


南向きの窓を開けると、一階でも二階でも各部屋に一畳ほどの小さなベランダがある。ベランダの向こうは一メートル程の幅の土の通路があり、腰くらいの高さの塀の向こうには川が流れている。

都会の川というと汚れているものと思っていたが、その川は透き通る程ではないけれど、きれいに管理されているようで、春の日差しを受けてキラキラと輝いていた。

川の向こう側には、小さな工場があって、何を作っているのかはわからないけど、騒音も排煙も無いから気にならないし、高い塀があるから、こちらを覗かれる心配も少なくて良い感じだ。


アパートの外観は、茶褐色の屋根に山吹色の壁。屋根の端々の装飾、階段や窓の手摺りが、洋風の造りをしていて、女性受けしそうな感じだ。女性の入居者の多そうなアパートだが、隣に住んでいるのは残念ながら男のようだ。

築五年くらいなので、とても綺麗だし、この辺の建物の中では、群を抜いておしゃれだ。それにも拘らず、家賃は安めなので、大学生の一人暮らしには、とてもありがたい。

家賃が安いのにはわけがあって、このアパートは立地が悪い。最寄りの駅からは、歩いて二十分かかるし、その駅も各駅停車しか止まらない。


バスが通れるような広い道は無いから、駅まで行くには歩かなくてはいけない。自転車があった方が良いのかな。

スーパーには、その駅を超えて行かなければならないし、一番近くのコンビニに行くにも駅前まで行くしかない。


ただ、僕の通う大学は、その沿線にあるので乗り換えは無いし、急行に乗るほどの急ぎの用事もないから僕にとっては、何の問題もない物件だった。


大家さんに聞いた話だと、僕が入居したことで十部屋中、八部屋は借り手がついて、各階一部屋ずつ空き部屋があるそうだ。だから、


「大学の友達で部屋を探している人がいたら紹介してくれ」


って、頼まれた。この物件なら友達に紹介しても問題ないと思う。


 僕は、東京からは程遠い田舎で高校卒業まで育ち、東京の大学を受験した。やっぱり、田舎暮らしが長いと都会に憧れる。

僕は学校の成績は良い方だったから、親からも先生からも東京に行くことは反対されず、入試さえ通れば大丈夫っていう感じだった。


でも、入試の時には田舎から出てきてすぐの電車の中で、痴漢に間違われちゃって。慰謝料として、その日泊まる予定だったホテル代を払う事になって、都会って怖いなって思った。


結局、その日は二十四時間やっているお店で時間を潰して過ごせたから良かったけど。田舎だと、そんなお店無いから大変な事になっていたかも知れないと思うと、都会ってすごいなとも思った。帰りの電車はチケットを往復分、先に買っておいたから大丈夫だった。


そんなトラブルがあっても志望大学には無事に合格出来て、一安心した。

ただ、将来何がしたいのかは、決まってなくて、大学で勉強している間に何かやりたいことを見つけられれば良いかなと思う。

 さあ、これから始まる新生活を楽しもう。


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