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Ⅰ.夢の実現の裏側



僕らの未来。



僕らの明日。



僕らの運命。




誰も知らない。


明日生きているのか。


十年後生きているのか。


六十年後僕らは一緒に生きているのか。





神さましか知らない。



それが、僕らの運命。





a trick of destiny Ⅱ - 運命の悪戯2 -








「ほら、剣斗行くぞ。」



オープニング曲が流れ、歓声が響くライブ会場。


ついにこの日が来た。



「よし、俺らの未来はこれからだ!行くぞ!」

「玲架、いいこと言うな!」

「柳、スタンバイ、OK?」

「おう!」

「よし、行くからな!」


魅波がマイクを握り、ステージ台に上がる。




「DIM-TAM 10.3 メジャーデビューライブ、歴史を作ろうぜ!」

魅波の声とともに幕が上がる。





大きな声援が聞こえてくる。

メンバーの名前を呼ぶ沢山の声。


「行くぞ、東京〜!」



デビュー曲

「The Mischief of Fate」のイントロが流れる。



The Mischief of Fate

出会ったあの日から今日まで

奇跡の日々だった

どんな時も隣にいて

手を繋いで 離さない

僕らは未来へ 明るい未来へ


君の涙の雫 胸を締め付けた

過去の傷 強く深く 刻み込まれた傷


君を傷つけたくない

君を幸せにしたい それだけなのに

その優しさが君を傷つけた


「幸せって何?」

僕の言葉に君は微笑んでいってくれた

「そばにいてくれること」だと


The Mischief of Fate

あの日のキスから今日まで

いくつもの試練があった

どんな時も笑顔でいて

その手決して 離さない

僕らの明日(あす) へ 明るい明日(あす)


「幸せって何?」

君の言葉に僕は君の目を見て言った

「笑顔の君を見ていること」だと


The Mischief of Fate

これから先 君と僕とで紡ぐ未来

何が待っているのだろう

涙の日も 笑顔の日も

どんな時も 離さない

まだ知らない未来へ 僕らの未来へ





魅波の声に涙するファンのみんな。

インディーズの頃からずっと応援してくれたファンは喜びもひとしおだろう。


三階の関係者席を見上げると、そこに亜紀がいた。

「メジャーデビュー曲は、ライブで聴きたい。」

と言った亜紀は2週間前にネットで動画配信したPV(プロモーションビデオ)も見ていないし、三日前に発売したメジャーデビューシングルも聴いていない。


初めて聴いた亜紀は、泣いていた。

どんな気持ちで聴いていたんだろう。






デビュー記念のライブは大成功に終わった。

楽屋には家族や友人がお祝いに駆けつけてくれた。


「賢くん、かっこよかったよ!」

「お父さん!来ていただいて、ありがとうございます!」

「え?!亜紀ちゃんパパ!?」

魅波がびっくりした様子で駆け寄ってきた。

「どうも、はじめまして。谷沢一雄です。いつも亜紀がお世話になっています。」

「ヴォーカルの魅波こと、南 聖太です。亜紀ちゃんには本当にお世話になっています。」

「本当にお世話になりすぎなんだっつーの。」

「おお!翼くんじゃないか!ドラムかっこよかったぞー」

「おじさんもその格好イケてますね!」

「だろ〜?Tシャツ買っちゃったよ!」

「そういえば、亜紀ちゃんは…?」

魅波が亜紀が居ないことに気づいた。


「あれ〜、さっきまで一緒に居たのにな。」

「トイレにでも行ったんじゃない?」

「まあ、そのうち来るだろう。そうそう、みんなの好きな酒饅頭持ってきたぞ〜。」

「やったー!」

「俺、大好きなんだよな。」

「柳も好きだろ?」

「ああ。あとでいただきます。いつもありがとうございます。」

「柳くん、ありがとうね。」

「亜紀さんには本当にお世話に…」

柳が亜紀のお父さんに挨拶をしていると、スマホの通知が来た。


谷沢亜紀 : たす


「亜紀…?たす…って?」

「どうしたんだ?剣斗。」

「いや、亜紀からメッセージが届いたんだけど…。」

「たす…?」

「誤操作じゃねーの?」

「そうだといいけど…。」


黒澤 賢 : どうした?亜紀、今どこにいる?


返信したが、亜紀からの返信はなく、既読にもならない。





「亜紀ちゃん、まだ来ないのかなー。」

「亜紀の奴、本当に遅いな…。」

「わたし、お手洗いに行ってみますね。」

ヘアメイクの桂 明日香さんがトイレに向かっていった。

「俺も、途中までついていきます!」

トイレで体調悪くなったのかな…?

どうしたんだ…?


女子トイレの前で桂さんが出てくるのを待っていたが、

「亜紀さん、トイレには居ないみたいです。」

「亜紀…。」

「他のフロアも見てきます!」

「亜紀、亜紀ー!」

「剣斗、やっぱり亜紀ちゃん居ないの?!」

「ああ。今、桂さんが他のフロアの女子トイレを探してくれてる。」

「俺も探すよ。」

「ありがとう、魅波。」


トイレだけではなく、ライブハウス全体を探したが、亜紀の姿は見当たらなかった。


「先に帰ったのかもな。」

「いや、亜紀がお父さん置いて帰るわけない。」

「剣斗さん!」

「桂さん!見つかりましたか!?」

「二階の階段のところに、こんなものが!」

「これは…。」

「先月、岩手に行った時に買ったお守り…。」

中尊寺で買った縁結び守のキーホルダーだった。スマホにお揃いでつけていた。


「亜紀…。」

「電話してみようか。」

お父さんが電話してもなかなか繋がらない。

「繋がらないな…。」

「誰かに連れ去られた…?」

「佐々木って奴か?」

「いや、女一人じゃ連れ去るのは無理だよ。」


「なあ、どうしたんだ?」

「翼!亜紀ちゃんが見当たらないんだ。」

「電話も繋がらない…。それに、亜紀のお守りが二階への階段の途中に落ちてたんだ…。」

「それに、さっき亜紀ちゃんからメッセージ来てたじゃん!『たす』って…」

「たすけて…ってことじゃねえのか?」

「亜紀…!」

ライブハウスを出ようとした時、俺のスマホが鳴った。

「電話だ。非通知…?」

「とりあえず出てみろよ。亜紀かもしれないだろ?」

「ああ。」


「もしもし。」

恐る恐る電話に出る。

「誰だ!?」

「ははははは、剣斗。久しぶりだな。」

男の声がスマホのスピーカーから聞こえる。

魅波が俺のスマホをハンズフリーにして、周りのみんなは静かにその男の声を聞いていた。

「誰だ、お前は。」

「もう忘れたのか。寂しいね〜。」

「亜紀はどこだ!?」

「この女、亜紀って言うのか。お前の女なんだろ?」

「お前が誰だか知らねえけど、亜紀に指一本でも触れたら許さねえ!!」

「お熱いですね〜。」

「亜紀を返せ!」

「タダで返すと思ってんのか?…まあいい。取引しよう。30分後、また電話する。」

そう言い残して、男は電話を切った。







(コウ)…今の煌の声だ。」

黙っていた柳が口を開いた。

「煌さんって…?」

桂さんが柳に尋ねる。

「俺らが専門の時に一緒にDIM-TAMをはじめた、下手(しもて)ギターだよ。」

「あいつ…暴力沙汰で専門退学になって、田舎に帰ったって聞いてたけど。」

「俺らがメジャーデビューしたのを知って、嫉妬してるんだろう。」

「亜紀…。」

「お父さん、僕らのせいで…ごめんなさい。」

「大丈夫。君たちのせいじゃない。」

「とにかく、ここを出よう。桂さん、申し訳ないけど充さんに電話してもらっていい?」

「わかりました!」


俺たちは30分後に電話がかかってきた時にライブハウスを出てすぐに動けるように、車を事務所に取りに行かことになった。


亜紀のお父さんが、お母さんやお兄さんの博人さんにも連絡をしてくれ、家族で警察署に向かうことになった。

「お父さん、何かあったら翼の携帯に。またきっと俺の携帯に煌から連絡が来ると思うので。」

「わかった。みんな、よろしく頼むよ。」

「亜紀を絶対助けるぞ。」








事務所に着くと、ちょうど最初の電話から30分が経とうとしていた。

すると、俺のスマホが鳴った。


「もしもし。」

「剣斗…どんな気分だ?」

「何がしたいんだ、煌!」

「やっと思い出したか。」

「亜紀はどこだ!」

「大丈夫、まだ殺してないよ。ほら、亜紀ちゃん。愛しの剣斗くんが呼んでるよ。」

「キャーーー!」

「亜紀!!!!」

「ヒントを与えてやろう。そうだな、思い出の場所、とでも言っておくか。」

「思い出の場所…?」

「煌、俺らの思い出の場所ってことか!?」

「おお、玲架か。みんな周りにいるのか?」

「ああ。」

「亜紀ちゃんに何かしたら許さないからな!待ってろ、煌!」

「魅波、やめろ。挑発してどうする!」

「ははははは。相変わらず仲良いねえ。じゃ、待ってるよ。1時間以内に見つけられなかったら、この女の命はねえからな。」

煌はそう言い残して電話を切った。


「思い出の場所…。」

「専門学校の時によく言った場所ってことか?」

「そんなの、いっぱいありすぎる…。」

「いや、煌がいた頃ってことだろ。それならいくつかに絞られるだろ。」

柳は事務所にあった地図を広げた。


専門学校の練習室、部室、練習していたスタジオ…


「とにかく、探すぞ!」

「剣斗、待て!警察がそろそろ到着するみたいだ。」

翼に亜紀のお父さんから連絡があり、事務所に向かっていると伝えられた。

到着までの間、刑事に電話で煌からの電話のことを報告した。


数分後、警察が到着した。

「よし、今から3つの部隊に分かれる。A班は東京ミュージック専門学校の練習室と部室、B班は練習スタジオ、C班は専門学校付近のカラオケ店!」

「はい!」

「君たちも一緒に来てもらえるか!?」

「はい!もちろんです。」



ー亜紀、絶対助ける。信じて待ってろ…。




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