靴についた宝石
「ネゼ、早く出なきゃ」
「カロタルは臆病だなぁ」
ネゼは、棚の奥に隠れる。
僕はその後についていく。
棚の奥に隠れようとしたからだろう、本が何冊か落ちた。
「ネゼが強情なだけさ、君はここをよく分かってない」
「いいかい、カロタル、僕たちはみんなに強いって証明するためにこの時計塔に来たんだよ」
そういって、埃まみれの手をこちらに伸ばした。
僕はその手を強く掴んで、イライラしながら言い放つ。
「なんだよ、ネゼ…、君は誰にだって勝てるくらい強いじゃないか」
「大人に勝てるくらい強くなりたいのさ」
「そうかいそうかい、勝手にしたらいいよ、僕は後についていくだけだからね」
僕は君の腰巾着みたいなものだからね。
「カロタル、僕は君に伝えたい事があったんだ」
「改まってなんだ?」
「…僕は君の大親友ってことを伝えたかったんだ」
「な、なんだよ、ネゼ。そんなこと知ってるさ。」
こんな暗い中でそんなことを言われても、本当のことなんてわからない。
だけど、改めて言われると照れ臭くなって、顔を下に向ける。
「カロタル、君はどうだい?」
「ね、ネゼは大親友だよ…」
なにを言わせるんだネゼは。
照れ臭くって仕方ない。
へへっと、笑う声が聞こえた。
少し上ずっているような気もする。
「そうか、じゃあ…僕らまた会えるってことだよな」
「…?なにを言ってるんだ、君は」
「カロタル、僕らは今からきっと離れ離れになってしまう。でも、大親友だと言ってくれた君と、言った僕らの友情を信じて…絶対にまた会えるという事を誓おう、約束しよう。」
「だから、なにを」
ネゼの顔が暗くてよく見えない、繋がれた手のあったかさ、呼吸音、全てが遠のいていく気がした。
「ネゼ、ネゼ!待ってくれ、僕は」
まだ繋がれている暖かい手を強く握る。
血が出るくらい強く。
「カロタル、痛いよ」
「…君が変な事を言うからじゃないか」
「ごめん、カロタル、僕ができる事はコレだけなんだ。君と僕で秘密のパスワードを作ろう。そうだな、僕の妹の名前にしよう、リゼルだ。もし、僕にそれを伝えても答えないのなら、それは偽物だ。早く逃げて。」
「り、リゼル?リゼルがどうしたんだ、リゼルは…」
「ガンで死んだ。これが次のパスワードだ。」
「ガンで…そうだよ、髪の毛が抜けて、君はショックで何日も寝込んだんだ。それで僕が数学の宿題を持っていく羽目になって…」
「この次のパスワードは、数学の宿題を持って来た。」
「ネゼ、君は話の腰を折るのが大好きみたいだね」
「ははは、そうみたいだ。
…カロタル、僕は君を信じてるよ。
だから、生きて逃げ切ってくれ。」
泣いたような声。
我慢しながら、泣くような、そんな声。
君は強いから、何に対して泣いているんだ?
ねぇ、ネゼ。
いつの間に君は、僕の前から消えたんだ。




