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進む日本の近代化

維新14年3月、第1次5カ年計画の最終年段階の総括が行われた。

出席者は徳川首相、及び細田官房長官、各大臣、技術庁長官、陸海空軍の司令官及び衆議院及び貴族院の代表各5名である。徳川首相は長く首相を務めた織田首相がハクリュウが来たことで日本の安全保障面で万全になり、さらにその知識を活用して大発展し始めたことから、一区切りということで長く側近を勤めてきた徳川に首相の座を譲ったものである。


しかし、織田前首相はなお貴族院の議員の籍はもっているので当然今日の会議には出席している。空軍司令官はハクリュウ艦長を続けている佐川良太大将、技術庁長官は、異日本で博士号を持っていたハクリュウ元機関長の永田健司であり、彼らはそれぞれ侯爵・伯爵の爵位を持っている。

 ハクリュウの乗員については、この世界の乗員が育ってきたため、その異日本における常識を活用するため各種の技術・産業の指導または実業に従事しており、5人が貴族院に選出されている。最年少であった湯川は貴族院の議席を得るには年が足りないので、元ハクリュウ乗員というネームバリューと、義父が経営する今や大会社に育ちつつある大和重工業株式会社(改名後の社名)の後押しもあって第1回の衆議院選挙で議席を得ている。

 こうしたことで、この会議には現・元ハクリュウ乗員は空軍司令官である艦長の佐川、貴族院議員として出席している副長の西村、科学技術庁の長官である永田、さらに衆議院議員の湯川が出席している、

第1次経済成長5カ年計画は以下のような内容であった。

 1)所得倍増

 2)九州・北海道・樺太奪還

 3)憲法・法体系の確立、政府・地方自治体の体制確立

 4)国会の制定、衆議院、貴族院設立、普通選挙実施

 5)税制制定:所得税・法人税・事業税・固定資産税など所得税・相続税は累進課税

 6)1都、40県、さらに市が200、町が800の地方自治体を制定

 7)学校制度:小・中・高等学校、大学制度の確立、奨学金制度の創設

 8)研究所:農業・工業・鉱業・医療・水産等の国立・地方拠点研究所創立

 9)交通:東京・大阪-鉄道敷設運用、各主要都市・定期航路就航、各主要都市間10m道路建設

 10)農業改革:農地整備、水源開発・灌漑設備整備、有機・化学肥料施肥の促進、

  畜産の大々的な導入、耕作に牛馬及び農業機械の導入

 11)医療改革:国立・地方拠点病院の創設、診療所の大増設、医療従事者の生徒・学生の大増員

 12)インフラ:各主要都市電力網構築(石炭火力)、主要都市:上水道施設建設、

  東京・大阪・福岡-下水  道施設建設

 13)鉱山開発:10金銀山、10炭鉱、5油田、10石灰岩、その他マンガン・ニッケル・クロム・チタン・タ  ングステン・モリブデン・銅・亜鉛・鉛・コバルトなど20箇所

 14)工業:釜石製鉄所、横須賀製鉄(年産1千万トン)・造船所、新潟石油精製、呉・長崎・名古屋造船  所、秩父・宇部・石山セメント、愛知・東京・福岡自動車等福岡自動車等


 これに対して、以下のような達成状況であった。

1)所得倍増

 所得は、初年度維新10年度で一人当たり55円であったものが、維新15年の予想では125円程度と予想されており、概ね計画通りであった。なお、人口は初年度3千4百万人、4年後の昨年で3千7百万人であるので人口増加率は1.5%であった。


2)九州・北海道・樺太奪還

 これはすべて完了している。

 その中で、スイレン帝国関係では九州侵略の賠償金5億ペソはすでに金貨で払い込まれ、海外に連れさられていた4万人の同胞の奴隷は、すでに1万2千人ほどが亡くなっていたものの、残りは確認できる限り送り帰されてきた。また、イサリア教は解体されて新イサリア教として出直して、その教義である極端な白人至上主義は日本国の要求に沿って変わっており、さらに海外植民地への指導員を派遣して残虐行為を止めさせる方向ではある。

 

 スイレン帝国から、こちらの要求を呑んだということで。平和条約及び通商条約締結の申し入れがあるが、彼らが虐殺した九州の人々、奴隷に攫われて帰ってこなかった人々、さらに現在侵略中のシナについてはこれを看過できないことから日本は拒絶している。

 また、日本国政府としては、スイレン帝国については、基本的にかの国は敵性国家であることには違いはなく、あくまで今回の賠償金や諸要求は、我が国が九州を蹂躙され、人々が虐待されたことの報復として、かれらの海上戦力と主要都市を破壊することをしないことに引き換えたものにすぎないという姿勢である。


 日本国は今後、多島海道(フィリピン)太平島(ボルネオ)海嶺島(ニューギニア)海洋島(ニューカレドニア)さらに南洋道(オーストラリア)を領有化しようと計画しているが、その過程で生じるスイレン帝国のみならず、平和条約を結んでいるイングラム国、ロマノ帝国との摩擦も覚悟の上ということであるが、イングラム国、ロマノ帝国については衝突の事前に警告することは必要と考えている。


 次にイングラム国、ロマノ帝国については、占領地からの引き上げは、現地に残ることを希望した者を除き完了しており、賠償金代わりの家畜や種々の品物はすべて受領済になっている。さらに双方の国と平和条約と通商条約が締結され、それに従って、双方に対して互いの大使館は首都に設立済みである。

 双方の国共に、日本国で起きている改革に対する関心は極めて大きいらしく、いずれも3次にも渡る制度・技術に関する調査団を送り込んできており、東京の大使館にはぞれぞれ数十人の調査員が常駐している。とりわけイングラム国はその新聞社ロンドンタイムスがすでに東京に支局を作り、日本の読売新聞とも提携している。さらに、すでに双方の国との貿易は開始され、日本で異日本の技術・知識を活用して作られる様々な製品が輸出され、両国からは農産品や加工食品等を中心に日本へ輸入されている。


3)憲法・法体系の確立、政府・地方自治体の体制確立

4)国会の制定、衆議院、貴族院設立、普通選挙実施

 どちらかと言うと、異日本帝国憲法に似た憲法が制定され、維新12年施工された。国会は維新13年に選挙が行われて衆議院・参議院が招集された。憲法に基づいて様々な法がこれも異日本に習って作られ、維新13年及び15年で概ね必要な法律が出来た。

 

 この中の政府は、議員内閣制をとっており、国会は衆議院と貴族院により構成されており、衆議院は18歳以上の成人の納税者とその配偶者による普通選挙による投票によって選ばれた議員300人で構成されている。これは、一定の収入以下のものは納税を免ぜられているが、その納税していない15%ほどの成人とその配偶者は選挙権がないわけだ。

 

 貴族については基本的に世襲ではなくなっており、貴族の子弟でも一定の成果、例えば軍務、学業、実業において成果を上げたものしか貴族位を持つことはできないことになっている。しかし、家柄が審査の対象に入っているので、貴族の家の出身者はいわゆる平民に比べ審査が甘くなるとは言えるであろう。

 また、皆、最初は準男爵から始め、功績が積み重なるにしたがって男爵、子爵、伯爵、侯爵と上がっていき最後は公爵ということになるが、公爵ということになると、今後は殆どでないだろうと言われている。

 

 すでに爵位を持ったものは、犯罪などを犯さない限りそのままであり、現在のところ、公爵は前首相であった織田信頼氏ただ一人である。織田前首相は首相になる前から公爵であったが、功績からしても今審査してもまた選ばれることは間違いないと言われている。

 なお、ハクリュウ現・元乗員は全員が爵位を与えられているが、佐川艦長は先述のように侯爵になっており、最も若い湯川は産業振興に功績が大きくすでに男爵に陞爵されており、他の者も異日本の知識を生かして功績は大きく、今後もどんどん陞爵されていくと見られている。

 ちなみに、貴族院入りするためには、貴族のみで選挙を行って100人が選ばれることになっている。貴族院と衆議院では異日本の衆・参議院と同様に衆議院の権限が卓越している。地方自治体については、地方自治法が維新14年に制定された。


5)税制制定:所得税・法人税・事業税・固定資産税など所得税・相続税は累進課税

 異日本の税制を参考に累進性の所得税を中心とする税制が制定されたが、当分は所得の把握が十分でないことから、農家については3公7民の年貢、商家については人頭税が兼用された。


6)1都、40県、さらに市が200、町が800の地方自治体を制定

 維新14年、地方自治体の境界分け及び庁舎の確保と県レベルでは7割また、市町レベルでは30%の各自治体の長と議員の選挙が行われた。


7)学校制度:小・中・高等学校、大学制度の確立、奨学金制度の創設

 期間6年の小学校教育の義務化に伴い、すでに小学校は殆どが出来ていたが、進学率50%を目指す中学校の大増設を行った。3年制の高等学校については当面10%程度の教育を目標として校舎と教員の確保が行われた。大学は当面、東京、大阪、京都、名古屋、九州、東北に国立大学がおかれた。

 教科書は基本的に、異日本のものを不都合なところを補正して使われたが、中学でも一部、高校ではほぼ全部が生徒と教師が一緒にその教科書を解き明かしながら勉強するような状態であった。しかし、これは学生にとっては極めて勉強になる方法であり、こうして初期の学校で鍛えられた生徒には後に大きな成果を上げた者が多い。

 小学校・中学校・高等学校で成績の一定レベル以上のもので経済的に進学が困難なものは、奨学金が与えられ、寄宿舎に入れる制度が確立された。


9)研究所:農業・工業・鉱業・医療・水産等の国立・地方拠点研究所創立

 維新12年には農業・工業・鉱業・医療・水産の国立研究所が設立され、維新14年には各県に農業、工業、医療の研究所が設立された。


10)交通:東京・大阪-鉄道敷設運用、各主要都市・定期航路就航、各主要都市間10m道路建設

 鉄道・道路の建設については、当初は人力のみで着手することも検討されたが、第1優先で着手されたブルドーザ・バックホー・ダンプトラック等の重機の量産を待つことにして、維新12年末までに測量・設計を終え重機が配備された維新13年、東京・大阪間の広軌(1500mm)の鉄道工事および国道1号線の工事に着手している。

 20工区で同時工事着手という大予算を投入した工事であるが、完成は維新17年が予定されている。主要都市間の道路の改良工事も同様に重機の配備と共に開始され、こちらは維新27年には1期工事を終える予定である。

 現状で実用されているのは航路であり、日本を巡る旅客の定期航路、さらに貨物輸送に1千トンの量産型のエンジン付きの客船が50隻、貨物船が150隻完成して運行している。旅客船の場合は最大15ノット(27km/時)で走れるので東京~大阪を24時間で結ぶことができる。


11)農業改革:農地整備、水源開発・灌漑設備整備、有機・化学肥料施肥の促進、畜産の大々的な導入、耕作に牛馬及び農業機械の導入

 当面耕作に、イングラム及びロマノ帝国を通じて入手した馬・牛が使われた。それに伴い堆肥の生産が始まり、さらに化学肥料については維新12年から量産が開始され維新13年には約10万haで深く耕し、肥料を十分使った農地の生産量が大幅に高まることが立証された。

 維新15年にはトラクターが開発され量産化が始まった。また、輸入した乳牛による畜産も開始され、牛乳と乳製品の製造販売も始まった。


12)医療改革:国立・地方拠点病院の創設、診療所の大増設、医療従事者の生徒・学生の大増員

 東京には国立病院、各県には地方拠点病院が設立され、さらに各市町には自治体経営の病院が設立された。また、医療専門学校も各県に作られ医療従事者の大増員が始まっている。


13)インフラ:各主要都市電力網構築(石炭火力)、主要都市:上水道施設建設、東京・大阪・福岡-下水  道施設建設

 各都市は、人口が把握されて将来人口を予測して、必要な電気消費量、上水給水量、下水量が計算されて必要な給電所、浄水場、下水処理場の施設が計画された。

 これらは、全て公社形式の経営によって受益者負担による運営を行うように法で決められ、その施設建設の資本金はスイレン国の賠償金が充てられた。

 また、市街地はきちんとした街並みの既存市街地を活用する場合と、入り組んだ町並みを再開発する場合に分けられ、前者は電線、水道管、下水管及び雨水排水渠が既存道路に埋設され、電線、水道管、下水管が宅内に引き込まれる。後者では区画整理事業の中で道路建設に合わせてこうしたインフラが埋設される。

 

 いずれにせよ、既存市街地でまず水道、次に下水管または電気ケーブルを引き込みことに比べると極めて低いコストで建設が可能になる。なお、この場合異日本と違い低圧電線は基本的に埋設される。さらに、30年以上の将来には核融合発電を行うことが決まっているため、基本的には家庭における石油・石炭の燃焼は必要なく、すべて電気によるものとしている。

 さらに、発電機もすでに量産されており、当面国内で豊富な石炭を使ってできる限りの排煙対策をしたうえで石炭火力も導入する。なお、すでに樺太のオハ油田からの石油が採掘を始めているの重油による発電機も用意されている。


14)鉱山開発:10金銀山、10炭鉱、5油田、10石灰岩、その他マンガン・ニッケル・クロム・チタン・タングステン・モリブデン・銅・亜鉛・鉛・コバルトなど20箇所

 鉱山の位置は、ハクリュウ情報により正確に把握されているので、当面開発資金調達のための金銀山、製鉄のための鉄鉱、炭鉱、油田(新潟、樺太)、セメント製造のための石灰岩などを優先して掘っている。


14)工業:釜石製鉄所、横須賀製鉄(年産1千万トン)・造船所、新潟石油精製、呉・長崎・名古屋造船  所、秩父・宇部・石山セメント、愛知・東京・福岡自動車等福岡自動車等

 最も重要な鉄については、すでに順次能力を拡大してきた年産10万トンの釜石と、年産1千万トンの横須賀製鉄所が1年前に動いているが、釜石の採掘量はせいぜいその半分、さらに資源量は3千万トン足らずなので、早晩行き詰まることが見えている。そこで、すでにオーストラリアの世界最大規模の鉄鉱山を入手すべく軍が動いている。

 一方、ハクリュウ情報による内燃機関であるエンジンはすでに様々な規模のものが量産に入っており重機用、自動車、船舶、発電機用等が量産化されている。また、石油精製、造船、セメントもすでに量産工場も稼働しており、これらは全て大増産された鉄材のお陰である。


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