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北海道奪還、第1次国土開発5カ年計画始動

遅くなりました。今後たぶん1週間に1回更新程度になります。

 会議では、さらにロマノ帝国への要求範囲が練られたが、これについても織田首相からの提案があった。「まず、わが領土とはっきり呼べる範囲をはっきりさせよう。北海道は旧松前藩が函館と小樽に拠点を構えており、我が国の商人および猟師や漁民も住んでいたので問題ないと思う。樺太とその間にある千島列島はすで地図の作製はしているが、アイヌが住んでいる他は日本人は殆ど住んでおらんので、やや微妙だが、ロシアこそ何も領土としての根拠はない。

 従って、測量図を根拠として我が国の固有の領土と言い張ることで領土主張は出来る。また、樺太はハクリュウ情報で石油が出るのでぜひとも確保しなければならん。一方でカムチャッカ半島は広大ではあるが、小規模な金の鉱脈があるくらいで、あの寒冷な大地を所有することの利点は見いだせない」


 そう言って織田首相が出席者を見渡すと皆頷くので首相は続ける。

「したがって、樺太から北海道に至る領土を取り返すことで、及びロマノ帝国による北海道から持ち去った金等の代償として5千万円を請求しよう。こんなところでどうであろうか?」

 会議はこの首相の案でまとまった。

 

 その後、政府はハクリュウ帰国から半月後、首相名でロマノ帝国あてに織田首相の案に沿って要求書を作り、函館のロマノ帝国総督事務所に届けると共に、ハクリュウでモスクワに飛び、その上空を悠々と縦横に飛び回り、宮殿で通告書の紙をばらまいた。

 無論、ロマノ帝国にもスイレン帝国の惨劇の知らせ及び、ロンドンでの騒ぎの報告は届いており、その報告を元に皇帝イワン17世と宰相ロフマン・ガガーリン、軍事大臣セーマル・プチャーキン、外務大臣アイン・シュトマフが日本国政府の通告書を協議している。


「スイレン帝国の被害は深刻というほどではありません。圧倒的に世界一であったかの海軍は、主力艦の約半分が失われましたが、陸軍はまだほぼ手付かずですからな。ただ、その威信に大きく傷がついたことは事実であり、今後この事実が知れ渡れば植民地支配に苦労するようになるでしょう。

 しかし、あのハクリュウを擁する日本が、少なくとも海戦において圧倒的な強者であるということは、我がロマノ帝国を含むいわゆる列強諸国にとっては同様であるので、それほどスイレン帝国の立場は変わらないでしょう。いずれにせよ、われわれも日本に敵わない点では同じですからな。

 日本が島国でありあのハクリュウがある以上、日本を征服することは世界中の国が集まっても不可能です」外務大臣シュトマフが冷静に述べる。


「軍務大臣としてふがいない話でありますが、外務大臣の言葉に賛同せざるを得ないですな」軍事大臣プチャーキンが同意するのを聞いて外務大臣は続ける。


「その意味では、日本国の要求である、北海道及び樺太に至る領土の返還と6ヵ月以内の立ち退き、さらに5千万ルーブル(5千万円)の賠償金というのは、要求としては抑制されたものであると思います。これは、受け入れるべきであると考えます」この言葉に宰相ガガーリンが付け加える。


「北海道と樺太の開発について少し調べましたが、開発による漁業収入や金の採取による収入はありますが、残念ながら現状では投資を取り返すに至っておらず、現状では引き上げるとなるとその引き上げ費用も含めて約1億ルーブルの赤字です。その上に5千万ルーブルの賠償ですから合計1億5千万ルーブルの赤字になるわけです。しかしながら、戦争をして兵と艦船を失い結局領地も失うよりはおおいに増しだと思われます。さらに、この際考えるべき重要な要素があります」


 宰相の言葉に外務大臣が問う。「それは、ハクリュウが持っている進んだ知識のことでしょうか?」


「そう、外務大臣もそう考えますか? そうです。ハクリュウの乗員は我々より大いに進んだ世界の日本から来た者達です。彼らが、遅れた世界とは言っても同じ日本に住もうということ、これはやむを得ないことだと思います。

 しかし、彼らが遅れた日本をそのままに済まそうとは思わないはずで、かならず彼らの知識を使って、日本の社会を変革し、とりわけ我々も享受しつつある機械文明を大幅に促進することになると思うのです。

 ですから、すでにイングラム国は日本と友好条約、通商条約を結ぶことにしているようですが、我が国もぜひ彼らと友好関係を結び、その進んだ知識の成果をできるだけ早く取り込む努力をするべきと思います。幸い我が国は、もうすぐ完成するモスクワに繋がるシベリア鉄道で結ばれたウラジオストックがあります。それなりの人材を極東に送り込んで置けば、彼らと交流するのに欧州の諸国に比べ圧倒的に有利な位置にあります」この宰相のことばに皇帝が大きく頷く。


「宰相、良く言った。その方針で行こう。外務大臣、ただちに彼らの要求の受け入れと友好条約、通商条約の締結を進めよ」

「は!陛下、かしこまりました」臣下の宰相、大臣は皇帝に向かって畏まる。



 維新10年3月、東京首相府で日本国開発5カ年計画最終確定の会議が行われた。

 司会は織田内閣の細田官房長官である。内閣の大臣及び次官さらにハクリュウ乗員からは佐川艦長と西村副長が出席している。なお、ハクリュウ乗員は艦長が侯爵、副長が伯爵、将校が子爵、兵は男爵または準男爵を受爵して、爵位に応じて年金も出ることになっている。

 さらに、戦力は今のところハクリュウだけだが空軍が設立され、佐川艦長が空軍司令官、大将に任ぜられ、一番下っ端だったが能力はある湯川一士は情報将校として中尉に任ぜられ、準男爵を受爵した。

 空軍の設立は事実上ハクリュウ乗員にそれなりの待遇をするためという側面が強い。しかし、ハクリュウの乗員はレシプロの輸送機と爆撃機を製作するべく準備をしており、維新15年頃には実際の戦力を整えるつもりである。


 細田官房長官から、まずここまでの状況が整理された。

「では、まず我が日本国を取り巻く状況から、内容的には皆さんがご存知のことばかりかと思うが、お手元の資料をご覧いただきながら整理をしたい。

 まず、スイレン帝国は、やや意外であったが我が国の要求を全面的に呑んだ。その結果、海外に奴隷として連れ出された約4万人を彼らが連れて帰ってくることになり、すでに第1陣である2000人ほどが帰ってきている。

 また、帝国はイサリア教に全面対決を選び、強硬派を追放または投獄し最強硬派の教皇の首をすげ替え教義も書き換えた。さらに、イサリア教本部から監視団を送り出して、植民地の有色人に対する迫害を禁じたようだな。どうも、今の皇帝はイサリア教の腐敗に腹が据えかねていたようだ。

 また、有色人を奴隷扱いしたところで得は無いと気が付いているようだし、おなじ白人国の中からもあまりの残虐行為が多いことに抗議されて機会を狙っていたと思われる。さらに、賠償金の5億ペソ、約10億円も素直に払うということになり、この賠償金は我が国政府の2年分の予算に相当するので大変助かります。 イングラム国、ロマノ帝国も素直にこちらの要求に応じましたので、余計な戦をせずに賠償金までは行ってきたのでこれも有難いことでした」官房長官は、こう言って出席者を見渡すが、実際にとりわけスイレン帝国が要求に応じたときは国中が驚いたものだ。彼はさらに続ける。


「次に本土の奪還と、その後の復旧についてですが、まず薩摩を除く九州については昨年11月の状況でハクリュウの力を借りつつ、自力で敵スイレン帝国の地上・海上戦力を殲滅することで奪還できた。

 すでに、福岡、長崎(佐賀と一体)、熊本、大分、宮崎各県を編成して知事も地元有力者から選んで任命済みだ。市町村は名称、配置と境界はすでに決めて組織を編成中であり、今年中には大部分の自治体が動き始める予定だ。

 九州には、スイレン帝国からの賠償金約10億円のうち半分を投入する予定で予算の編成中だ。九州について開発として当面緊急的に重点を置いているのは、石炭の採掘と金銀鉱山の開発であり、すでに調査員を送り込んでおり、出来るだけ早くの操業にかかる。

 現在、神奈川に建設中の製鉄所は良質な福岡からの石炭で賄いたいので、遠賀川沿いの石炭開発は最優先にしている。さらに、九州から逃げ出して本州・四国にいる住民もいま続々と帰還中だ。

 また地上軍として、現地のスイレン帝国抵抗組織を母体として内地から指導部隊を送り込んで第9師団を編成している。さらに、海軍として福岡、長崎、熊本には駆逐艦を各2艦配置している。

 

 薩摩、琉球については現在イングラム帝国人及び、九州各地から避難してきたスイレン帝国人が引き上げ中であり、予定では合意通り今年6月にはその引き上げは終了の予定だが、民間人について1000人ほどは日本国の国民として残りたいというので許可した。

 薩摩では同様に、本州・四国に避難していたものが帰還しており、現在軍の治安部隊は1000名が入って、イングラム軍と一緒に治安維持に当たっている。また、薩摩については鹿児島県として現在行政組織を構築中であり、市町村については準備段階である。

 薩摩は金銀山の豊富なところであり、一部イングラムも採掘しているが、すでに調査員を送り込んで調査中であり、出来るだけ早く操業にかかりたい。


 琉球については、琉球王朝はすでに解体されているので、鹿児島と同様に沖縄県として現在行政組織を構築中だ。琉球は温暖であるので、サトウキビの栽培を重点的に進めたいと思ってすでに調査中である。

 なお、イングラム帝国の賠償金は3千万円であるが、交渉の結果、牛・馬及び羊さらに鉄塊を主とする現物での支払いとした。結局イングラム人の引き上げ船は空船で来るわけだから、これに積んでくればいいのでお互いに都合がいいわけだ。


 北海道・千島列島・樺太についても、ロマノ帝国の住民・軍が引き上げ中だ。こちらもロマノ帝国民間人の2000人ほどが残りたいと言っている。北海道には元の住民3万人ほどが帰ることを希望しており、まもなく帰還予定だ。

 また、ロマノ帝国によって開拓された農地が相当あり、ここには農地に相当する開拓民を送り込むが、新たな開拓そのものは、極めて過酷であるので今開発中の農業機械の生産を待ちたい。また、北海道は良質の石炭資源に恵まれているのでこれを釜石の製鉄に使いたい。この炭鉱開発と金銀鉱山を出来るだけ早く操業したいので、4月末には調査員を送り込む。

 また、軍についてはロマノ帝国軍に置き換える形で、樺太を含めて5千人は今年に送りこみ、加えて追加で5千人を配置したい。なお、樺太の油田の開発については調査要員の第1陣の訓練中であり、4月末には送り込む。

 なお、ロマノ帝国からの賠償金はイングラム国と同様に、現金でなく木材、牛・馬や羊、鉄塊などの物納で受け取ることになっている。以上が、奪還した領土についての概要です」

 この官房長官の話の後に、4月から始まる第1次国土開発計画の前段階としてハクリュウ到来から現在までの進展が説明された。


 すでに陸軍ついては、12万人10個師団を配備して、軍政も異日本の旧軍・自衛隊を参考にした体制を確立し、ライフル銃と手榴弾及びりゅう弾砲を配備し弾の量産体制を整備している。

 海軍は、いまだ弱体であるが、軍政は陸軍と共に確立し、スイレン帝国、イングラム軍から鹵獲した艦を配備して、さらに国産の艦として高速魚雷艇を建造中である。また、鹵獲艦の砲弾の量産体制を構築しようとしているところである。

 また、先述したように、主としてハクリュウ乗員を遇するために空軍が設立され、ハクリュウのバックアップのため1000人の要員が配備されたが、彼らは実際にところハクリュウ乗員の設計したレシプロ機を製造するために奔走することになった。

 

 こうした、軍備の緊急的な製造を含めて、ハクリュウのプリンターで印刷された膨大なノウハウ文書が、ハクリュウ乗員により分類され、10段階の秘密指定がされて、あるものは、当分は絶対秘密で金庫にしまわれ、秘密指定の高いものは少数コピーされて選ばれた者のみが学び実用化にかかり、指定の低いものは活版印刷されて一般に配布されて多くが学び実用化を目指した。


 このために、1万人を超える知識人が集められあるものは、秘密保持のために缶詰にされて学び作業する必要があったが、農業や医学に係る知識は比較的広く学ばれた。このハクリュウ知識は日本国のものとされ、その活用には一定の特許料を払う必要がり、国内向けにはごく安かったが国外での利用はそれほど安くない料金がとられた。

 こうした体制の中で、最も緊急を要するとされ、既に稼働しているのが先述した兵器関係と釜石の製鉄所及び造船所等であり、すでに建設・製造にかかっているのが、大型造船所、大型製鉄所、発電機等電気機器工場、エンジン工場、肥料工場等であった。


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