ハクリュウ無双2
しばらく、出来次第投稿します。
香港において、スイレン帝国の艦船のスタンスが良く表れているのは、港に停泊していていた巡洋艦が最初に砲撃準備ができたことから、陸側に浮いていたハクリュウに対して、外れるのをお構いなしに砲撃を始めたことである。実際に、彼らが撃った5発の内ハクリュウに命中したのは2発だけで(無論効果は無かったが)他は外れて港周辺の建物を大破壊した。
直ちにハクリュウは舞い上がり、その巡洋艦の横腹に火薬庫を狙って砲弾を4発撃ち込んだ。すぐに船腹が破裂して大爆発を起こした巡洋艦は2つに折れて浅い港に沈む。
さらにハクリュウは、駆逐艦3艦を2発ずつの砲撃で火薬庫の爆発を誘って沈める。
「2時間後に帰ってきて港の倉庫と船を焼き払う。それまでに逃げたいものは逃げよ」そうアナウンスして香港を去り、上海に向かう。
香港に向かう間に昼食をとるが、ルックス総督とジェファーソン准将は西村に聞かれる。「今のうちに昼食をとって頂きますが、お二人のお部屋に運ばせますのでそこで取って頂きます。よろしいですか?」
ルックス総督が答える。「ああ、ありがとう。それといささか刺激的なシーンばかりで疲れた。すこし休ませてほしいが」
「ええ、狭いですが、お亜二人の部屋になっていますし、寝台もありますのでお休みになれます。たしかに今まで緊張の連続でお疲れになったでしょう。お食事の後は、ごゆっくりなさってください」
西村は応じて、彼らが持ってきた荷物を乗員に持たせて部屋に案内する。その部屋はドアから入った両側にベッドが2つあって、奥の突き当りに狭いが事務机がありそれに並んでドアがある。乗員がベッドの足側の上部に設けている棚に荷物を置く。
「大変狭くて恐縮です。荷物はこの棚に置いて頂きます。昼食のための台はこれを引っ張り出します」
西村は説明して、ベッドの下から台を引っ張り出すが、それはベッドに座るとちょうど食事の台になるような高さと大きさだ。
「あの奥はトイレとシャワーがあります」2人を案内して、狭いドアを開ける。「奥のものが弁座です。使った後は水を流してください。こちらが大でこちらが小ですね。大の時はこれを押すとお尻を洗ってくれます。これは気持ちがいいですよ。洗った後はこのトイレットペーパーで水を切ります。
シャワーは節約を心がけてください。青に倒すと冷水、赤に倒すと温水で、これを捻るとその水出てきますが、温水の場合は暖かくなるまで1分ほどかかります。
バスタオルとタオルはここに用意しています。この、小さい流しは使い方はわかりますね。こちらに捻ると冷水、こちらに捻ると温水です。この場合も温水は暖かくなるまで時間がかかります」
かれらは、再度部屋に戻ってくる。「さて、すこしお待ちください。食事を運んできます。では、しばしお休みください」そう言って西村はドアを外に出て、開いていたドアを閉めて去って行く。
総督と准将は顔を見合わせる。准将は士官候補生の頃は2段ベッドで生活をしていて、もっと狭い部屋での経験があるが、昔はシャワーなどはとんでもなく、トイレは海につき出した台で海に向かって出していた。最近はさすがに変わって来てシャワーもあるが、士官でさえ使えるのは三日に1回程度である。
トイレは当然ぼっとん形式であり、タンクの中身は外洋で捨てている。
「わしはちょっと、あのトイレを使ってみる」ちょうど便意を催した総督がドアを開けて入っていく。
准将が部屋で待っていると、ノックの音がしたので開くと乗員が2段に重ねたトレイをもって来て、引き出した台の上に置く。それは、メインが魚料理のものであったが、パンもついていて准将の基準から見て海軍の食事としては士官用をものを越えている。
やがて何やら「ひや!」というような悲鳴のような声が聞こえたので准将は慌てて、「総督大丈夫ですか?」とノックすると「「大丈夫だ。ちょっと驚いただけだ」と返事がある。
やがて、総督がでてきて「あのトイレはいいな。わしも欲しいが」と感心している。
「まあ、食事が来ましたので食べましょう」
「ほお、メインは魚か。パンは日本人が作ったものでは期待できんだろうが」総督はそう言って食べ始めるが「おお、このパンはうまい。総督府のコックより上だな。その他の料理もなかなかだ。かなりレベルの高い食事をしているのう」そう感心する。パンはハクリュウにはパン焼き機があるのだ。
准将もその後トイレを使ってみて2人はそのトイレ、ウオッシュレットについて熱く語るのであった。
やがて総督と准将もスクリーン前に席に戻り、上海に着いて護岸が望遠で見えるようになった時、何かざわざわうごめいているので、さらに拡大するとぼやけた像で多くの人々が建物の前にずらりと鎖でつながれて並ばされているのが見える。さらに、岸壁に繋がれている船を見ると、やはり大勢の人々が鎖または綱で繋がれている。
上海総督フリップ・ドン・ラメーラは総督府の窓から見て、周りの者に得意になって叫んだ。
「ほら見ろ、あいつら有色人種は、ほかの有色人種を殺すのをためらうだろうと思ったがその通りだった。大体2時間後に帰ってくるというのは現地人を殺したくないからだ。これで、あの化け物は手を出せん」
一緒に居る部下や有力商人がほめたたえる。
「さすがは、総督!これはいい手ですな」
「あ、でもこっちに近づいてきます。この総督府を狙ってくるのではないですか!」一人が叫ぶ。
はっと、上海総督は気がついた。確かに、この総督府は少し港から引っ込んでいるが、周りに比べて目立つ壮麗な建物だ。ほかに目標がなければ、ここを狙ってくる可能性は高い。
しかも、汚らしい現地人をここに近づけるわけにはいかないので現地人の防壁はない。はたして、近づいてくる化け物から、火花が散るとあっという間もなく総督は天に召されてしまい、その汚れた一生を終えた。
ハクリュウ内では、佐川艦長が言う。「これは徹底しているな。後のために好ましくはないが、とりあえず放っておくしかないな。今回はあれが総督府だろうから、あれだけにしておこう。ただあれには木部はなさそうなので、レールガンで4発打ち込んで穴を明けてそこから熱線砲を撃ちこもう。人がいれば、誰一人生きてはおれないな」佐川はひと際壮麗な4階建ての建物を指す。
一点に集中した4発のレールガンの射撃で最上階の屋根から壁にかけて大穴が開き、そこを目がけて熱線が撃ち込まれる。数舜後、総督ビルの窓という窓から火が吹き出す。
佐川はそれを見て「十分だな。今回のスイレン人の措置を見るに現地人の扱いの想像がつくな。今回の借りは10倍返しで返させてもらおう。では香港に向かおう。同じ措置を香港でしていないことを祈るよ」
ハクリュウは再度香港に向かう。速度を調整して予告した時間に着くように飛行する。今度はどうかと、港の様子を見ると上海のような人質はいない。
「では予定通り、船から行こうか。おお、逃げている船もいるな。まずあの逃げて言うる2隻から行こう」ハクリュウは2隻の煙をもうもうと吐いて走っている汽船を追って熱線砲でひと薙ぎすると、一隻はたちまち火災を起こすが、もう一隻は大爆発を起こす。
「火薬を積んでいたな」副長の西村がつぶやく。ハクリュウは再度港に帰り、残り8隻の汽船を焼き払う。3隻は大火災を起こしたが5隻は部分的に火災を起こしている状態ではあるが、熱で大きく変形しているので、どっちみち大修理しないと使えないであろう。
そうしているうちに砲台から砲撃が始まった。砲台も規模が大きく10門の砲があって一斉に撃ちかける。そのうちの3弾が横を向いているハクリュウに当たり爆発が起こるが電磁バリヤーに阻まれていつものようになにも影響がない。
「なかなか勇敢な兵と指揮官だが、これも戦だ。熱線砲、あの砲台を撃て」熱線砲がひと薙ぎすると火薬に引火して大爆発が起きる。
「では次は港の倉庫群だ」佐川の指示に、50棟あまりの倉庫群は部分的にレンガ作りだが木構造が主であるためひと薙ぎで発火して崩れ落ちる。
「さて、高度を上げて倉庫から資材を持ち出していないか確認する」佐川の指示にハクリュウは1000mに高度をあげて周辺を見る。
「北北東の街道に荷車群が見えます!」その報告にスクリーンがその方向に焦点を合わせる。
なるほど、畑に中の道を20両ほどの馬車に荷物を満載して遠ざかっている。位置的にたぶん港の倉庫から持ち出されたものだ。
「よし、高度100mで後ろから追い抜きざま、道路から5m離して最大集束でひと薙ぎしろ!」赤白い光が馬車に並行して走る。馬車の男たちはその熱気と後で土が湧きたっているのを見てぞっとするがその時上空からアナウンスがある。
「次は馬車を薙ぐぞ」中国語だ。見ると化け物が500mほど行きすぎて止まって、先ほどの後尾を先頭にして道路の先から帰ってくる。「逃げろ!焼き殺されるぞ」中国人の労務者は馬車から飛び降りて我先に逃げる。スイレン人の監督は、「帰れ、帰らんと撃つぞ!」と馬車の上から銃を構えて叫んでいるが構ってはいられない。
熱線については、今か今かとひやひやしながら逃げているが、なかなか撃たない。その間にもスイレン人が撃ってくるがさすがに威嚇らしく当たるようには撃っていない。逃げる男たちは、火矢の方が怖いのでなおも全力で逃げる。
彼らが100mほど馬車から離れたとき、さっと光が馬車の列をひと薙ぎした。多くはドンと燃え上がったが、2両の馬車は大爆発を起こした。その近くで逃げていたものは、爆風で前方に飛ばされて顔は擦りむいたものの他に異常なく助かった。
「俺の馬車の積み荷は火薬だったんだ。だから、撃つのを待ってくれたんだ。しかし、スイレン人の監督は皆死んだな。ざまを見ろ」彼は一人でののしった。
「よし、中国の作戦はこれで終わる。次はマニラまで1200kmか。もう夕刻だが、まだ十分日がある。今度は艦船と総督府のみがターゲットだ。2万mまで登って時速2万kmで行こう。出発!」佐川の命令だ。
ハクリュウがマニラ湾に降りていくときはすでに日は沈む寸前であった。
「湾内に、駆逐艦3隻です」報告に佐川が命じる。高度1000mで駆逐艦については各艦25mm弾2発ずつで火薬庫を狙って撃て、次はあれが総督府だな。そうですよね?」ルックス総督とジェファーソン准将に聞くと、准将が答える。「そうです、私は前に艦を指揮してここに来て、あれが総督府と聞きました」
准将ははっきり言って有色人種を極端に迫害するスイレン人は嫌いであったので、そう教えることになにも良心の呵責はなかった。
「そう、あの総督府は香港と同じやり方だ」佐川が改めて命じる。
駆逐艦3艦については1艦が爆発せずもう一度砲撃が必要だったが、いずれにせよ2分足らずで爆沈し、総督府については上海総督府と同様、レールガンで大穴を開けてそこから熱線砲で打ち込み瀑燃させた。
「よし、本日のミッションは一応終了、明日朝はファイラ(カルカッタ・ムンバイ)だから、その沖まで移動するが、マニラからファイラまではスイレン帝国に主要航路だから航路沿いの7700kmを1万mの高度で時速1万kmで移動し、戦闘艦を見つけたら撃沈する」佐川が命じて出発する。
マラッカ海峡に近づいた時、観測担当士官の水谷3尉が報告する。
「戦闘艦2隻です。ただし質量から見るとイングラム艦の駆逐艦です」
「よし、無視しろ、通過!」佐川が言うのを西村副長が総督と准将に通訳する。
「イングラムの駆逐艦2艦ですので通過します」総督と准将は顔を見合わす。
「私たちの国がスイレン帝国と同じことをしていたら、その2隻は海の藻屑でしたね」ジェファーソン准将が言い、総督が頷く。
さらにインド洋に入ったとき、再度水谷3尉が報告する。「戦闘艦、3隻です。巡洋艦1艦、駆逐艦2艦。質量から見てスイレン帝国艦と考えられます」
「よし1000mまで降下確認せよ」すでに薄暮状態であるので、拡大しても視覚では判然としない。佐川の命令に高度を下げて3000目程度の高さで視覚的に確認された。
「間違いなく、スイレン帝国艦です」水谷が確認する。
「では高度2000mで、まず巡洋艦を25mm弾4発、駆逐艦を2発で火薬庫を狙って沈める」約2分後最後の駆逐艦が爆沈するのを見て佐川がしゃべり始める。
「これでもう今日は敵艦に出会うこともないだろう。本日は最初の艦隊以来多くの艦、さらに総督府を攻撃して多くの敵兵であるスイレン兵が亡くなった」
日本語でしゃべっていた佐川はそこから英語に切り替える。
「それでは、全員起立、戦火の中で亡くなったスイレン将兵の冥福を祈り、黙とうします」
総督と准将が立ち上がって姿勢を正したのを見て、「では黙とう1分間、黙とう!」佐川は静かにしかし皆に届く声で言う。
「直れ!ではこの位置でホバリングする。現在は18時05分であるが、翌6時丁度に勤務を開始する。当直はローテーション通りである。では、解散!」1分間の黙とうの後に佐川が自由時間を告げる。




