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13 下っ端を叩きつぶす

「そろそろ、山賊のアジトだな」

 そう、カサデリア様が硬い声で言った。


 その視線は足元に向けられている。

 何やら、革紐のようなものがぶら下がっていた。


「それに足を引っかけると、がらがらと音が鳴る仕掛けだ。そしたら連中がこちらを殺しにやってくる」

「わかっていることとはいえ、やっぱり物騒ですね……」

「物騒でない山賊団だったら何も怖くないからな。最近だと物だけでなく、人さらいも随分とやっているらしい」

「ひどい……」


 思わず、義憤のようなものを感じた。


「経済的な被害だけならギルドにでも任せておけばいいと思っていたが、少々程度がはなはだしすぎる。そこで私が出向くことにした。あまり人間を手にかけることはしたくないのだがな」

 そうか、もっぱらカサデリア様はモンスターと戦ってきたのだものな。

 カサデリア様達、勇者パーティーのおかげで魔王は討伐され、今ではモンスターの数もめっきり少なくなってきている。


「アーアー、お前も人を殺すのが嫌ならそこは手加減をしていい。殺すのが必須の仕事ではないし、やむをえない場合は私が手を下す」

「わかりました……」


 そして、敵の仕掛けからさらに三十分も歩くと、すっとカサデリア様が手を挙げて、すぐに下ろした。


 事前に定めていたサインだ。


 もうすぐ敵が来るぞという合図。


 私たちのレベルは高いから、そのまま直進する。場所はすぐ右手は山の斜面で、左手は崖という細い一本道。両側からはさまれたら、逃げ場はない。


 それを敵もわかっていた。


 正面と背後、両方から山賊たちがやってきた。

 多くが、ぼさぼさの頭で分厚い斧みたいな剣を持っている。


「おいおい、女が二人だぜ」「これは儲けたな」


 それから先も下卑た言葉をかなり浴びせられたけど、カットする。

 こういうふざけた連中はとことん叩き潰さないとな。


「アーアー、お前は後ろをやってくれ。前は私がやる」

「わかりました……ママ」

「あ、そうか……うん、わかった……娘よ……」


 こんな時にはママって言うべきじゃなかったかな……。

 山賊もちょっと混乱したのか「おい、ママって言ったぞ」「姉妹の間違いだろ。あんなデカい娘産める歳じゃねえよ」などと言っている。カサデリア様は魔王と戦った時に竜の加護というものを受けたいせいで、当時の二十歳の頃の姿を保っているのだ。


 さて、私はどうやって戦おうか。敵は後ろに三人。

 ちょっと、自分のステータスを確認してみよう。


=====

アーアー

年齢:17歳

名称学者・大賢者 レベル99

 体力:587

攻撃力:352

防御力:460

 魔力:790

素早さ:813

 知力:905

魔法・特殊能力・資格:名称変更・名称判断・書物速読・回復(SS)・大風(S)・火炎(SS)・水(S)・氷雪(S)・大地(SSS)・魔法耐性(S)・語学(S)・歴史学(S)・記憶力(S)

=====


 いきなり魔法を使うよりは、まずは打撃かな。この攻撃力でどれぐらいの効き目があるか知りたい。


 完璧に丸腰だけど、そこは素手でどうにかしよう。


 山賊達が武器を持って襲いかかってくる。

 刃物で切られたくはないから、これはかわさないといけない。

 でも、そんなに武器って簡単にかわせるのかなと思ったら――かわすとか以前に武器がなかなか私に到達しないのだ。


 敵の動きが明らかに緩慢になっている。

 一秒数えるごとに少しずつ動いているように見える程度。


 その敵の攻撃だけじゃない。すべてがほとんど止まったように感じる。


 そうか、これが素早さ813の世界なんだ。

 自分があまりに高速で動けるので、周囲が逆に止まって見えるらしい。


 さてと、こんなに考える時間があると、かえって悩むな……。

 ひとまず、前に来た敵をくぐり抜けて、一番奥にいる敵にパンチを当てる。


 一応、グーにして鼻のあたりを叩いてみるか。


 グーが当たった途端、時間の流れが正常に戻った。


 ――バアアァン!


 男がパンチを受けて吹き飛ばされる。


「い、いてぇ! 鼻が、鼻が折れたぜっ! うあああああ!」

 よほど痛かったのか、男がのたうちまわっている。


「なっ! いつ、後ろに回りこんだんだ!」

「まったく見えなかったぜ!」


 前方の二人も困惑していた。

 そっか、私はレベル99といっても、職業は名称学者とそれの発展形と思われる大賢者だ。だからなのか、ステータス的には攻撃力や防御力より、魔力、素早さ、知力あたりが高い。


 じゃあ、この素早さを使って倒す方向でいくか。


「くそっ! 生きてることを後悔させてやるぜ!」

 残っている男がまたこちらに向かってくる。じゃあ、こっちも私に向かってきたことを後悔させてやろうか。


 再び、時間の流れが極端にゆったりとしたものになる。

 背後に回りこむ。

 今度は背中をグーで殴る。


 ――ズゴォォォッ!


 その男も吹き飛ばされて、ほとんど動けなくなった。

 二人がやられて、残り一人もようやくこれはおかしいぞと気付いたらしいが、悪いけど、もう遅い。


 まあ、そんなに遠くへ逃げる暇もないだろうしね。


 今度は連続キックでやってみようか。

 でも、一回目のキックですぐに吹き飛ぶのかな。


 今度は男の足を蹴ってみたけど、そこが不自然に曲がっただけで、まだ吹き飛んだりはしない。時間の流れは遅いままだ。


 素早さ813の人間がさらに攻撃をしようって意思を持ってるからだろう。私の意思が完結するまではこの緩慢な時間が続くらしい。


 じゃあ、今度は逆側の足をキック。


 そして、また普通の時間に戻る。


「ぐぁぁぁ! 両足をいつのまにか折られて……ぐうぇぇぇ! いてえええっ!」


 これで三人とも戦闘不能だろうか。いや、鼻っ柱に攻撃をした敵は、攻めてくる可能性もなくはないな。

 私はうずくまってる敵のところまで行って、足にキックをかます。


「ていっ!」


「うぎゃあああああ!!!!! 足がああああああ!!!!」


 こんなところでいいか。

 ひとまず、私の打撃の性能はだいたいわかった。たしかに、これは戦闘をしてみないとわからないな。カサデリア様に感謝だ。

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