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10 料理クラブとコラボ

料理クラブに行きます。日間5位ありがとうございます!

 その日のクラブ活動、私は赤ポテト料理を見に行くため、エリーちゃんと一緒に料理クラブに来た。


 料理クラブは部員数が二十五人ということで、かなりのにぎわいを見せている。実験農場クラブに何人か来てほしいぐらいだ。


「ああああ先生、こんにちはです。料理クラブの部長をしています、フランと申しますでーす!」


 鮮やかな水色の髪をした女子生徒が私に頭を下げてきた。女子生徒といっても私とほとんど年齢差なさそうだけど。

 そして、やっぱりああああ先生と呼ばれるのだな。もう、これは宿命みたいなものなのだろう。


「よろしく、実験農場クラブの顧問をやってるアーアーです」

「我が料理クラブは『食べられないものはない』をモットーに日夜、新しい料理の開発に取り組んでおりますです。ああああ先生、今日は珍しい食材を提供していただき、感謝いたしますでーす!」

 ちゃんとアーアーって名乗っても、ああああ先生って言うんかい!

 まあ、これは愛称、つまりニックネームだと認識することにしよう。


「じゃ、早速だけど、まずは赤ポテトの素材の味を楽しんでもらおうかな。エリーちゃん、よろしく」

「先生、わかった」


 エリーちゃんは赤ポテトを料理クラブの窯に入れていく。今回は窯焼きスタイルでいく。


 しばらくすると、いい焼き上がりになった。


 料理クラブの面々に赤ポテトが配られる。

 私も表情には出さないが、けっこう緊張していた。これで「不味い!」なんて反応があったら、手伝ってもらうのは難しくなるからだ。

 味にそれなりの自信はあるけど、何十人が食べた結果ではないので、一般的な意見だと考えるほどの勇気はまだなかった。


 さて、反応のほどは……。


 まず、部長のフランさんがふうふう息を吹きかけて冷ましながら、ぱくっと食いついた。


「おおっ! これはっ! まるでこれそのものがお菓子でできているかのような甘みでーす! そして、このホクホク感も素晴らしいですっ! これ、もし冬に食べたらさらにおいしいはずですっ! 焚き火っ! 冬場に落ち葉を集めて焚き火をしている絵が頭に思い浮かびまーすっ!」


 おお、大好評だ!

 しかも、なぜか本当にフランさんの背景に焚き火をしている絵が見える。いったい、どうなってるん!? これって魔法なのか? それとも料理クラブ部長の特異な能力なのか!?


 部長が高評価を出したのでほかの部員たちも次々に赤ポテトを口にしていく。

 これは素晴らしいという声が次々に上がった。


 よかった。赤ポテトは大成功を収めたらしい。


「なるほど。これは是非とも食材として広めるご協力をさせていただきたいですし、それだけの価値があるかと思いますです。料理クラブに任せていただきたいです」


「そう言ってもらえると、本当にありがたい」


 エリーちゃんもそこまで表情には出さないものの、うれしそうだった。


「さてと、では、この食材をどう使うかですが、フフフ、いくつか思いつきましたです」


 不敵にフランさんが笑った。

 部員たちも「部長が動くわ!」「今日の部長は何を作る気!?」と興味津々の様子だ。この人が大物なのは間違いないらしい。


「まずはスウィート赤ポテトなのです!」


「スウィート赤ポテト!?」


「そうなのです。この赤ポテトを裏ごしすると、さらになめらかな食感になるはずなのです。そこに砂糖などを加えて、表面にバターを塗ったりしてこんがり焼いてあげると、きっととんでもない逸品が生まれるはずなのです!」


 フランさんは早速料理にとりかかった。

 はっきり言ってその動きは恐ろしく速い。


「このフラン、実は調理技能(B)を持っているのです! 開店費用を集めればレストランを開けるレベルなのです!」


 たしかに料理クラブの人たちもじっと、フランさんを見守ってる。


「部長、とくに冴えてますね」「今日の部長なら、大会優勝も夢じゃないですね」「そうね、【スパイスの魔術師】にも勝てるかもしれない」


 大会とか、【スパイスの魔術師】とかまったく何かわからない設定が飛び出してきた。


 そして、しばらくすると――


「お待たせなのでーす! これぞ、フランの創作料理、スウィート赤ポテトなのでーす!」


 お皿に載っていたのは一見、ボートのような形状をしたお菓子だった。


「これがスウィート赤ポテト……」

「形、ずいぶん変わってる……。エリー、びっくり……」


 もともと甘い赤ポテトをさらにスウィートにするってどういうことなのかと思うが、とにかく食べてみようか。


 先端部を少しフォークで切って、そのまま突き刺して、口に運ぶ。


「こ、これはポテトクリームとでも言うようなものが口の中に広がる! しかもこれまでなかった香ばしさもある! 表面はカリっとした食感でこれも面白い!」


 重層的な味の奔流に私は溺れそうになる。


「フフフ、どうですか! これがフランの実力なのでーす!」


 いやあ……これはいいものを食べさせてもらった……。


 試食した部員達も「こ、これはすごい!」「口の中で甘さのパレードが行われる!」などと大げさなことを言っていた。


 そんな中、エリーちゃんはフランさんの前に立つと、

「フラン部長、ありがとう。エリーもすごくおいしかった」

 そう、ちゃんとお礼を言った。


 人見知りっぽいところがエリーというニックネームになったことで少し改善できている気がする。


「いえいえ、この料理は大半を赤ポテトのポテンシャルに頼ったのでーす。このフラン、その力に乗っかっただけなのですよ。実験農場クラブの部長さん、素晴らしい野菜を育ててくれてありがとうです。我々料理人は食材があるからこそ、おいしい料理を作れるのです」


 なんか、フランさんもいいことを言った。

 そして、フランさんが手をエリーちゃんに差し出す。


 ぎゅっと、その手をエリーちゃんも握る。


「これからもいい野菜作ってくださいね!」

「うん、わかった。エリー、不惜身命の精神で努力する」


 この時、実験農場クラブと料理クラブの間に友情が生まれた。


次回、スウィート赤ポテトを売ります。

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