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プロローグ

新連載はじめました、よろしくお願いします!

 私はラトヴィア伯という大貴族の家に産まれた。


 所有する荘園の数は全国で三十箇所を超える。もしかしたら財政難にあえぐ王国よりも豊かかもしれない。


 それだけを見れば、なんて恵まれてる女なんだと思うだろう。


 でも、そんなに上手い話はないのだ。


 私は父親である、年老いたラトヴィア伯の愛人が産んだ子供だった。

 ラトヴィア伯の子供としては通算十五人目。娘では八人目。


 すでに産まれた時には兄と姉が権力を確立しており、私は母親の身分が低いので政略結婚にもほとんど使い道がない。


 マジでいらない子だったのだ。


 というか、状況証拠なんかより、もっと明白な隠しようのない証拠がある。



 私の名前、「ああああ」なんです。



 なんだ、それ! 姉はミランダとかナタリアとかアリシアとかそんな名前だぞ! なんで私だけ、「ああああ」なんだよ!


 ちなみに、私のいる国では、人名は表音文字のうち「カタカナ」というほうを使う。なぜか「ひらがな」で名づけられてる時点でおかしいのだ。せめて「アアアア」にしてほしかった。本当に人間扱いされてないに等しかった。


 幼い頃から兄や姉にもいじめられた。


「おい、あああああ」

「お兄様、『あ』が一個多いです」

「どうでもいいだろ」

 とか。


「ねえ、『あああ』、あなた、庶民みたいな顔立ちね。とてもラトヴィア伯の娘とは思えないわ」

「お姉様、『あ』が一つ足りません」

「どうでもいいわ。まったく、あなたはなんで産まれてきたのかしら」

 などと、言われた。


 そんなこと言われてもこの世に生を得てしまったんだから、しょうがない。しかも、母親も私が幼い時に病死してしまい、親の愛もない状態だ。


 私を厄介払いしたいというのは一族の総意だったので、私は十歳から、学院で勉強することになった。寄宿舎暮らしなので家族に会わずにすむ。


 この学院は、かつて魔王討伐にも参加した伝説的な女賢者であるカサデリア様が開いている。勉強する環境に関しては完璧だった。


 ここの生徒達は私の境遇に同情してくれたのか、「あっちゃん」ともっぱら呼んでくれた。ありがとう。これなら、本名もわからないよね。


 そんな私は、名称学というマニアックな学問を専攻することにした。動機はもちろん自分の名前が「ああああ」だったからだ。コンプレックスは人生を決定付けてしまうのだ。


 そして、入学して七年後。私が十七歳の時のこと。

 卒業式の日を私は迎えた。

 学院長である女賢者カサデリア様が名前を呼んでいく。


 カサデリア様は魔王との戦いの時に竜の加護を受けたらしく、六十歳ぐらいのはずなのに、まだ現役時の二十歳ぐらいの容姿を保っている。


「では、出席番号順に呼ぶので、元気よく返事するように。一番、ああああ」

 在校生で笑う奴がいた。くそっ! 笑うな! こっちは百万回笑われてるのだ!

 そうだよ! 出席番号万年一番だよ! 二番手になったことないよ!


 卒業式の後、私はカサデリア様の部屋に呼ばれた。

「卒業おめでとう、ああああ」

「ありがとうございます。ぶっちゃけ、あまりありがたくないんですけど。これで、伯爵領に帰らないと行けませんから……」

「実はそのことでお前を呼んだのだ」


 少しカサデリア様は言いにくそうに口よどんだ。

「伯爵から手紙が届いてな、もうお前を義絶したからラトヴィア伯爵領には帰ってこなくていいと……。門より中に入ったら射殺すると……」

「帰りたくないと思ってたら、帰る場所すら失った!」


「ちなみに学院長である私への手紙だけで、お前への手紙は何もなかった」

「直接の連絡もなし!?」


 おいおいおい! どうなるんだ、私の人生!


 できることなら、実家の荘園のどっかに小さな家でも建ててもらって余生を過ごすつもりだったんですけど。

 それで村の人からは高貴な人とちょっとばかしの敬意を払ってもらえればそれで満足だったんですけど。


「気の毒なのはわかる。ひとまず、しばらくは名称学准教授のポストをやろう。お前は名称学はそれなりにマスターしていただろう?」


「はい、改名を法的に行える地位にあります」


 名前というのは親から授かった大切なものという意識があるため、この世界では好き勝手に変えられないのだ。

 その他、改名して戸籍からはずれて税を逃れようとする奴がいるとか、行政的な問題もある。


 なので、改名を行う時は、レベル15以上の名称学者の許可を得てでないとできない。わたしの場合はレベル17だ。


「それなら、准教授ぐらいならやれんことはない経歴だな。ステータスを教えてくれ」


「はい、ステータスオープン」


 こう言うと、この世界ではステータスが顔の上ぐらいに表示されることになる。見せたい相手にもそのステータスは見える。


=====

ああああ

年齢:17歳

名称学者 レベル17

 体力:14

攻撃力: 5

防御力: 6

 魔力: 7

素早さ: 7

 知力:17

魔法・特殊能力・資格:名称変更・名称判断・書物速読

=====


 冒険者ではないのでステータス全般は低いけれど、そこは職業柄あまり気にする必要はない。


「うむ、まあ、基礎を教えるぐらいなら問題なかろう」

 カサデリア様も納得してくれた。

 なお、レベル17というのは、なかなか優秀な成績だ。学問はしっかりとやったのだ。


「というか、ああああ、お前、自分の名前も改名したらいいんじゃないのか?」


「本当だ!」


 その発想が抜けていた。なぜかというと、親の許可なく名前を変えたら厄介なことになるのは明らかだったし、改名したいと言い出すだけでも厄介なことになると思っていたからだ。

 それこそ、親の名前に文句を言うとはけしからん、義絶するとか言われると思っていた。いちゃもんつけて追放する気満々だと考えていたのだ。


 結局、理由もなく、ナチュラルに義絶されてたけどね!


「しかし、改名していいと言われると、それはそれで難しいですね……」

 いきなりベアトリーチェとかエカチェリーナとかにしたら名前負けというか、元の名前を知ってる人から、「ああああ」が急にかっこいい名前にしたぞと絶対に思う。


 私、名前のせいで無茶苦茶有名だからな。クラスに「ああああ」がいたら目立つし、学年の奴、全員一度は話題に出したことあるだろ。


「ならば、アアアアとかにするか?」

「いや、カサデリア様。それは表記変わっただけですよ。なんか悲鳴みたいだし……」


 しばらく悩んでいい案が出た。


「じゃあ、あまり発音が変わらないレベルで『アーアー』にしてみます」


 これなら元の名前から近いし、ギリギリで名前っぽくもある気がするし、いいんじゃないか?


 ステータスバーの横に「名前をああああからアーアーに変更します。本当によろしいですか? はい いいえ」という文字が表示される。


「はい」を選択する。


 すると「ステータス内容に変更がありました、ご確認ください」という表示が出る。


 名前もステータスだからな。そりゃ、それ自体を変えたのだから絶対に変更もあるよな。


=====

アーアー

年齢:17歳

名称学者・大賢者 レベル99

 体力:587

攻撃力:352

防御力:460

 魔力:790

素早さ:813

 知力:905

魔法・特殊能力・資格:名称変更・名称判断・書物速読・回復(SS)・大風(S)・火炎(SS)・水(S)・氷雪(S)・大地(SSS)・魔法耐性(S)・語学(S)・歴史学(S)・記憶力(S)

=====


 あれ……?

 あれ……!?


 なんか、異常に強くなってるぞ!

本日は複数回更新の予定です。よろしくお願いします!

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