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狭間のトト  作者: 時雨煮
追補編
58/59

パワーレベリング

「《膂力強化(オーガ・ストレングス)》、《耐久強化(ウルスス・タフネス)》」

 攻略を始める前にかけておきましょう、とアンジェが発動させた魔法の光が、僕の全身を包み込む。

 これまで見たことの無い魔法だったけれど、その効果はなんとなく理解できる。肉体を強化するであろう魔法の光が薄れていったところで、僕は手足を動かしてみた。

「どうでしょう? これで多少は無理が利くのではないかと思うのですけど」

「……いえ。駄目そうです」

 首を横に振る。彼女の魔法は間違いなく発動しているし、実際にその効果を体感できている。怪訝そうにしているアンジェに対して説明しつつ、もう一度状態を確かめる。

「僕の《魔力特化》のせいで、身体能力じゃなくて魔力が強化されてる感じで」

「そう、ですか……」

 体感では三割増し、といったところだろうか。しかし、魔法が使えない僕にとっては宝の持ち腐れだ。

 少しは援護できるかとわずかでも期待したために、駄目だと分かると落差が大きい。

 ……けれども、まあ、仕方が無い。気を取り直して耳を立てる。

魔物(モンスター)との戦闘はお任せします」

「ええ。トトさんは私が守りましょう。戦闘になったら、壁際で身を守っていてください」

 アンジェは力強く頷き、右手で胸を叩いて応えた。


 その宣言通り──

 遠征隊のリーダーを務めているだけあって、彼女の強さは相当なものだった。

 切れ味の良さそうな曲刀(シミター)を振り回し、立ち塞がる《鉄団子虫(アイアンローラー)》や《大顎蟻(シザーアント)》を切り捨てていく。魔法で強化しているとはいえ、基礎能力も相当高いのだろう。

 援護のために用意していた投石器(スリング)の出番はほとんどなく、僕たちは最短経路で第一層、第二層を突破した。

「第四層への階段がすんなり見つかればいいのだけれど」

「見つけにくい場所にあるって話ですよね」

 小声で会話しながら、曲がりくねった洞窟を進む。僕の耳で魔物の接近を警戒しつつ、分岐点ごとに地図を見て、違いがあれば書き込んでいく。

 死角となっている暗がりに隠された通路があるかもしれず、僕たちの歩みは遅くなる。必然的に魔物との戦闘は増え、アンジェの魔力は少しずつ削られていた。

「僕の魔力を譲れればいいのに……」

「何?」

 呟きを聞いて振り返った彼女に、何でもないと手を振って地図に目を向ける。

 アンジェの魔力が尽きる前にどうにか第四層への階段を発見できたのは、それから四時間ほど経った頃だった。


 ──十分後。《七色鉱山(レインボウマイン)》居住区、食堂の片隅。

 シバ様専用のテーブル席で、アンジェは肩を落とし、俯いている。その表情は長い金髪に隠れて見えないけれど、相当に悔しいことだろう。暖かいお茶の入ったコップを両手で持ってはいるものの、中身が減っている様子は無い。

 そんな彼女には目もくれず、何かの骨付き肉を喰い千切っている狗人(ノール)のダンジョンマスターに向けて、僕は口を開いた。

「大人気ないですよね」

「まあ、そう言うな。今回ばかりは譲れなかったんだ」

 階段の途中で十分に休憩をとり、万全の状態で第四層へ足を踏み入れた僕たちを待っていたのは、いきなりの落とし穴だった。

 二人揃って滑りに滑り、大きな泉に放り込まれた後は、時間の問題で。

「《転移豹(ディスプレーサ)》なんて、初めて見ました」

 あれは確か、第七層あたりに棲息している魔物のはずだ。残像を残してあちこちに移動する獣を相手にアンジェは善戦したけれど、さすがに僕を守り切ることはできなかった。

 《身代わりの帯布(プロテクト・スリーヴ)》はあっけなく破れて消滅し、僕たちはこの食堂に強制転移させられたのだ。

 

「俺としては、今回の成果には満足してるんだ。別の試練を考えてやらんでもないぞ」

「本当ですか!」

 その言葉を聞いて、アンジェががばりと顔を上げた。

 彼女は驚いているけれど、シバ様がいきなり心変わりしたわけじゃない。この人は試練を始める前から「今回は」と言っていたのだし。

「だが、すぐには無理だ。最低でも一年は待ってもらわんとな」

「大丈夫です。ここに至るまで二十年かかりました。次こそは成功して見せます!」

 幾分か元気を取り戻したアンジェの語る年数について気になったものの、それは後で詳しく尋ねてみるとして。

「ところでシバ様、成果って何ですか?」

「トト君のレベルが上がった。ペアでの探索なら少しは経験の足しになると思ってたが、レベルアップまでするとはな」

「はあ」

 レベルアップと言われても、どうもぴんと来ない。耳を傾けつつ、恐る恐る発言する。

「あんまり強くなった気がしないんですけど」

「体感ではそうだろうな。レベルアップは肉体的、精神的な強化とは違う。ダンジョンにおける活躍の対価として、この世界に対する影響力が高まるんだ」

 ますますぴんと来ない説明を聞いて、僕の耳は傾いていくばかりだった。

名前: Thoth / 種族: Rapania / レベル: 3

体力: 7.5(12.0) / 膂力: 12.0 / 耐久: 12.0

魔力: 115.0(135.0) / 精神: 18.0 / 抵抗: 12.0

気力: 18.0(18.0) / 手先: 22.5 / 敏捷: 22.5

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