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狭間のトト  作者: 時雨煮
第四章
36/59

《氏族》アガルタ

 改めて、ベリルの「能力値」を確かめながら、僕はゆっくりと歩いていく。


 大樹を囲む水路の近く。

 カロッテの肩に乗って《星天(ステラ)》を見上げていたベリルは、僕が近づいてきたのに気付いて振り返った。

「……お主も乗らぬか?」

「遠慮しとくよ」

 また上を向いた彼女につられて、僕も《星天》に視線を向けた。真上に輝く緑色の星は、この場所に現れたときよりも少し、明るくなっているように思える。

 《黄金都市(エル・ドラード)》や《七色鉱山(レインボウマイン)》の星はどっちの方だっただろうかと見回していると、ベリルの呟きが聞こえてきた。

「アガルタは、わっちのマスター……いや、前のマスター、エルネが作った《氏族(クラン)》だったのじゃ」

「うん」

 なんとなく、そうなんだろうなと考えてはいた。

「何十人ものダンジョンマスターたちと同盟を組んで、長い時間をかけてマナを貯めての。星に至り、星を越えるダンジョンを作り上げるのを目標にしておったのじゃ」

「それは、また、壮大だなぁ」

「じゃがの」

 ベリルの左目が僕に向けられる。彼女が言いたいことはわかる。アガルタという名前の《氏族》が存在していないということは、その目標は達成されなかったのだろう。

「みな、《星喰い(イーター)》共にやられてしまったのであろうな。わっちだけが、エルネが最後に使った《奇跡》の力で眠りについて、助かってしまったらしい」

「《星喰い》、って?」

「わっちも詳しくは知らぬ。ただ、奴らはあちこちのダンジョンを喰い荒らしおっての」

 僕はそれを聞いて、昔、父親から聞いた「(ドラゴン)」の話を思い出した。


 「竜」は《虚海(ラウム)》を泳ぎ、その口ですべてを喰らって混沌に還す力を持っている、と聞いたことがある。それは、ベリルの言う《星喰い》と同じものを指しているんじゃないだろうか。

 混沌から形あるものを創り出す力を与えるダンジョンコアとは、まったく正反対の存在に思える。

「何かを生成するには魔力やマナが必要なのに、奴らはただ喰って腹を満たせばよいのじゃから、不公平であろう?」

「でも、倒せないわけじゃないんだよね」

 ベリルは頷いたものの、その表情は厳しかった。

「容易ではないがの。奴らはダンジョンを喰うことで再生するし、それぞれ姿かたちも戦い方も異なるのじゃ」

 ダンジョンコア同士が近づきすぎると、互いに干渉し合って本来の力を出すことができない。そのため、複数のダンジョンマスターが協力して戦うのは困難だった。《星喰い》一体を倒し切るまでに、何人ものマスターが犠牲になったらしい。

「わっちも事の顛末を最後まで見届けてはおらぬ。クランの生き残りが居てくれればと思ったのじゃがの」

「生き残ってたとしても、千年前じゃなあ」

「千年、とな?」

 ベリルは訝しげに僕を見下ろした。これは確かに説明が必要だろう。

「ステータスを見たんだ。ベリルが受けた《奇跡》の名前は《千年の眠り》。あと三百時間はレベルが上がらないだとか、すべての能力が半減するとか、いろいろ説明があるけれど、問題はそこじゃなくて」

「その名の通り、わっちは千年も眠っておったということじゃな」

 たとえ《星喰い》の襲撃を耐え抜いた《氏族》のメンバーが居たとして、果たして今日まで生きていたりするんだろうか?

名前: Beryl / 種族: Commonia / レベル: 1

体力: 9.0(9.0) / 膂力: 9.0 / 耐久: 9.0

魔力: 14.0(14.0) / 精神: 11.0 / 抵抗: 12.0

気力: 8.0(8.0) / 手先: 11.0 / 敏捷: 10.0


《後天特性:緑柱石(グリーンベリル)

 コアクリスタル。破壊されない限り、宿主が死ぬことは無い。マナが枯渇すると消滅する。


《後天特性:植物成長》

 コアクリスタルの固有能力。宿主の気力と引き換えに、周囲の植物の成長を促進させる。

 クリスタルを隠している間は能力が遮断される。


《後天特性:魔力共有》

 コアクリスタルの固有能力。契約したマスターと魔力を共有する。


《技能:植物操作コントロール・プラント

 植物を自在に動かすことができる。意志を持つものには抵抗される可能性あり。


《奇跡:千年の眠り》※効果適用中

 対象を虚空領域に退避させ、1000年間の休眠状態にする。

 休眠状態からの復帰位置は無作為(ランダム)に決定される。

 復帰後はレベル1となり、一定期間、全ての能力が半減し、レベルアップ不能となる。(残り約300時間)

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