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狭間のトト  作者: 時雨煮
第四章
33/59

接触

err.log


3904.08.13 08:00:02

 【メッセージID:24003は宛先不正のため送信に失敗しました。8時間後に再試行します。】

 伏せられたカードをめくろうとした手を止めて、ベリルは視線だけを僕の方に向けた。

「のう、トトよ。先程から片眼鏡(モノクル)を使って、何をしておるのじゃ」

「ちょっと、実験をね」

「ふむ?」

 納得いかないといった表情で、彼女はカードを続けて二枚めくった。《(ワンド)の七》と、《(カップ)の六》。

「む、違ったか」

 カードが伏せられ、今度はカロッテが器用にカードを選択する。《杯の六》に、《(ソード)の三》。首を捻っているけれど、単なる記憶違いだろう。

「ほれ、お主の番じゃ」

 ベリルに促されて、タイミングよく左目に見えていた《剣の六》と、ふたりが揃えそこなった《杯の六》をめくって手元に重ねる。

 続けてもう一組揃えてリードを広げたところで、ベリルが足をばたばたさせ始めた。

「《未来視(フォアサイト)》でカードを見ておる、というわけではないのじゃな?」

「僕の行動次第で変化する未来は見られないんだから、それは無理だよね」

「そこから疑わしいんじゃがのう」

 このゲームが終わった後、どうやってベリルを怒らせないようにネタを明かそうかと考えていると、しばらく振りの痛みと共に、頭の中にメッセージが聞こえてきた。


【警告。《星光農園(スターライトファーム)》表層に侵入者あり。】


 僕は慌てて立ち上がり、窓の方へと移動する。外を見てみても、まだ特に変わった様子は見当たらない。

「また虫でも湧いたのかの?」

「いや、侵入者だって」

 目視で分からないなら仕方ない。椅子に座りなおして、《農夫人形(パペット・ファーマー)》の視界で侵入者を探しながら、索敵の指示を出していく。

「まだちゃんと出来てないのに、大丈夫かな……」

「そう心配せずともよい。まだ猶予期間中であろう? いざとなれば特権で排除できるはずじゃ」

 ベリルは僕の顔を見て軽く笑う。

「畑が荒らされたりしないといいんだけど」

「何は無くとも、侵入者が何者かを確かめるのが先決じゃの」

 僕は頷いて、《人形》たちへの指示を続けていく。しばらくして、《人形》の一体が黒い運搬艇(キャリア)を発見した。果樹園の区画から外周側、地面の下に隠れるように接近した運搬艇は、上部から梯子をかけて侵入してきたようだった。

 続いて、果樹園の中にいた《人形》の動きが変化した。自分の思い通りにならない視界に若干酔いながら、もう一度視点を切り替える。

 柵を越えて果樹園へと入ってくる猪人(オーク)の一団を見つけて、《人形》は草むらに隠れて様子を窺っている。指示を出しているリーダーらしき猪人はずんぐりとした体格で、僕は慌てて立ち上がった。

「親方!?」

「なんなのじゃ。いきなり大声を出しおって」

「親方が来てるんだ。シバ様のところで世話になった人でさ」

「いや、まてまて、また知らん名前を言いよって」

「ええとね」

 詳しく説明しようとした僕を片手で遮って、ベリルは少しだけ考える素振りを見せた。

「──そういうことであれば、お主が直接出向いた方が良さそうじゃの。急いで行ってくるがよい」

 上着を羽織って小屋を飛び出し、橋を渡って駆け足で果樹園の方へと向かう。《人形》が壊されても大した損害ではないけれど、親方たちが大怪我するのはちょっと困る。


「親方ァ、先に行ってくだせェ!」

「馬鹿野郎、大声出すんじゃねえ! 今助けるから待ってろ!」

 僕が果樹園に到着したときには、現場はちょっとした騒ぎになっていた。十人ほど居た猪人の集団のうち、三人が網に包まれ宙吊りになっていて、三人が落とし穴に落ちている。

 どちらも《虚海(ラウム)》の影響で現れる害獣対策として試しに設置しておいた罠で、効果は期待していなかったのだけれど。

 網を引っ張り上げている堅いロープを切断しようと悪戦苦闘している親方たちにゆっくり近づいて、恐る恐る声をかける。

「あ、あの、親方」

「ん?」

 振り向いた親方が僕の姿を認め、その口がぽかんと開かれる。ちょうど切り離されたロープが手からすっぽ抜けて、背後で「ぐええ」という声が重なった。大惨事だ。

「誰かと思ったら、トト坊じゃねえか。何だってこんな所に?」

「いえその、僕がここのダンジョン──」

 皆まで言い終わる前に、僕は親方に服を引っ張られて転がされる。

 何事かと立ち上がってみれば、鍬を持ったニンジン色の巨漢が、僕の背後から姿を見せたところだった。

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