幕間 - 猪突猛進號にて -
一隻の高速偵察艇が、《虚海》すれすれの高度で、緑色の星の下へとまっすぐに飛んでいる。
僅かな照明だけが灯された薄暗い操縦室の中、猪人の隊長が大口を開けて欠伸をしたところで、望遠鏡を覗いていた部下のひとりが声を上げた。
「親方ァ、見えてきましたぜ!」
「おう。向うさんに気付かれちゃいないな?」
「特に目立った動きはねえっす」
「よーし、速度落とせ。ゆっくり接近するぞ」
目的地は新しく出来たばかりのダンジョンである。相手の出方が分からない以上、行動は慎重にならざるを得ない。
「こういう任務は向いてねえと思うんだがよ。何でわざわざ俺らを指名したんだろうな?」
「いやァ、シバ様の考えることはわかんねえっす」
「ま、そうよな」
隊長は首を振って立ち上がり、部下に代わって望遠鏡を覗き込んだ。《虚海》の上に広がる大地の上に、草木が生い茂っている。
高い建物は見当たらないが、中心部にはひときわ大きな巨木がそびえ立っていた。
「ありゃあ、《猛獣牧場》と同じ系統に見えるな。お前ら、地上部分でも気を抜くなよ?」
「へい、親方!」
艦長とか船長とは呼ばれないんだよな、と少しばかり残念に思いつつ、サンゲンは座席にどかりと腰を下ろした。
高速偵察艇【猪突猛進號】
長い衝角と二対四枚の浮揚翼を持つ、黒色の甲虫を模した形状の偵察用運搬艇。定員十二名。




