一時の休息
視界の端に、《収穫者の樹上小屋》の完成までの残り時間が表示される。
運搬艇の真下で成長を始めた木は、見る間にその幹を伸ばし、枝を広げていく。反対側からその様子を見下ろしていたベリルが、僕の方を振り返った。
「のう、このままでは不味くないかの。随分と迫ってきて……お主、大丈夫か?」
「だ、駄目かも」
膝をついて頭を押さえていた僕に気付いて、近づいてこようとした彼女の足元が、下からの衝撃で大きく揺れた。運搬艇を避難させなければならないのに、複数の《生成》が僕の思考を妨げる。
頭痛で動けない僕と、尻餅をついたベリルが対処する間もなく、大樹は成長を続けていく。運搬艇のあちこちに枝が絡みついていくのを、僕は黙って見ていることしかできなかった。
数十分が過ぎ、ようやく頭痛が治まった僕は立ち上がる。両側の扉はどちらも枝に塞がれていて開かず、仕方なく天井のハッチを開いて外に出る。
「もう少し、場所を考えるべきじゃったの」
「並列で生成するのも止めとくよ」
反省会を開催しつつ太い幹の間を抜けて外に出てみると、巨木の太い枝の上に、尖った屋根の小屋が出来上がっていた。
僕とベリルは枝を伝って小屋に入る。六角形の部屋の中には、木製のテーブルと小さな椅子が二脚、簡素な寝台が置かれていた。
反対側の二面に大きく開いた窓から、外の様子を見下ろしてみる。《虚海》の上に、茶色の土地がゆっくりと広がっていくのを眺めながら、ベリルがふわ、とあくびをした。
「こんな大物を即席で作ったんじゃから、いくら特化しておるとはいえ、さすがに魔力も尽きておろう」
「うーん、まだ行けそうな感じだけど」
「そうは言っても、いくつも平行して生成するのは支障があるのじゃろ。この辺りで一休みせぬか?」
確かにその通りだった。同時生成についてはまた改めて確かめるとして、大人しく休憩した方が良さそうだ。
「はい、これ。ベッドはどうぞ」
《収納鞄》から予備の毛布を取り出してベリルに手渡すと、彼女は意外そうに僕を見た。
「お主、このような気遣いもできるのじゃな」
「思ったより評価が低いことにびっくりだけど。お腹すいたら起こしてくれていいから」
それだけ言って木の床の上に寝転がる。少し離れた場所で、ベリルも横になったらしい物音が聞こえた。
「で、ではの」
「うん、おやすみ」
目を閉じる。けれど、僕はまだ寝られそうにない。
しばらく待って、少女の寝息が聞こえてきてからも、少しだけ我慢した上で。自分自身へと意識を向けて、能力値を確認する。
予想していた以上に、魔力と他の能力には差があった。あれこれと確かめている間にも、魔力は順調に回復しつつある。
ベリルの様子から考えて、新米ダンジョンマスターの魔力はここまで多くないんだろう。口元がにやけて、声が漏れそうになるのを堪えながら、僕は考える。
この力を、一体どう使うべきだろうか。僕はもう大丈夫だとナラカに伝えたい。
シバ様が知ったら、なんて言うだろう? ベリルが起きる前に、何かびっくりするような物を作れないだろうか。
とりとめのない思考は、いつの間にか僕が眠りについてしまうまで続いた。
名前: Thoth / 種族: Rapania / レベル: 3
体力: 12.0(12.0) / 膂力: 12.0 / 耐久: 12.0
魔力: 4152.0(11070.0) / 精神: 18.0 / 抵抗: 12.0
気力: 18.0(18.0) / 手先: 22.5 / 敏捷: 22.5
《権能:末那識》
超越視覚。マナ操作。コアクリスタルとの魔力共有。
《権能:秘本操作》
混沌にかたちを与えるもの。
《権能:車輪操作》
秩序にゆらぎを与えるもの。
《先天特性:「魔力」特化》
魔力に+400%(5倍)、その他の能力に-50%(半減)の補正。成長速度半減。
※能力補正に関する他の特性や装備効果にも影響する。
《後天特性:全能力超強化》
全能力に+900%(10倍)の補正。
※《「魔力」特化》の影響により、すべての補正を魔力に対して適用。
※9.0(Base)×3(レベル)×5(魔力特化)×(1+9×9(全能力超強化))=11070.0
《後天特性:長命》
《技能:機械整備》
技術系スキル。運搬艇や各種装置の整備に有利な補正。




