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狭間のトト  作者: 時雨煮
第二章
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タワー・ディフェンス

 相手に気付かれないように、シバ様は小型運搬艇(キャリア)を上昇させ、照明を消して静止させた。

 それからしばらくの間、《星天図(ステラスコープ)》のあちこちを指し示しながら、近くの「ダンジョン」について解説していたシバ様が、手を止めて青い星の方を見る。

「来るか。暇潰しも終わりだな」

 速度を上げてまっすぐこちらに近づいてくる青い星の下を、双眼鏡で確かめる。

 星の光を反射して、真下の《虚海(ラウム)》が青く輝いていた。そこに揺らめいているのは灰色の混沌ではなく、透明な水の領域であることに気づいたのは、しばらく経ってからだった。

「水が、動いてる?」

「どんな仕掛けなのかは分からんが……やはり、ダンジョンを捨てて逃げてきたってわけじゃ無さそうだな」

 青い水の上に浮かび、飛沫を上げながら近づいてくるのは、巨大な「船」だった。《黄金都市(エル・ドラード)》の大型運搬艇より、何倍も大きなそれを見て、シバ様は忌々しげに目を細めた。

大型船舶(ヒュージ・シップ)タイプのユニークダンジョン。《紺碧戦艦バルコ・デル・アズール》、か」

 《戦艦》の上から、いくつもの小さな影が飛び立っていく。それらは運搬艇のはるか下を、《七色鉱山(レインボウマイン)》に向かって飛んでいる。

「通り過ぎちゃいますよ」

「どうせ偵察隊だ。放っといて本体を叩く」

 (はね)を震わせ、編隊を組んで飛び去っていく虫人(インセクタ)たちには構わず、シバ様は《戦艦》の観察を続けていた。

 《戦艦》の上には、小さな建物が並び立っていて、幾つもの煙突が黒煙や蒸気を吹き上げている。

 水の上を進む歪な鉄塊と、その上で輝く青い星はさらに近づいてきて、小型運搬艇の周りも明るくなってきていた。

「ここまで引き付ければ大丈夫だろう。そろそろ始めるか」

 右手を前に差し出して指を鳴らし、シバ様は高らかに告げる。

「サブダンジョン《列塔回廊(ピラー・コリドール)》、領域確定」

 《虚海》の一部が、淡く輝き始めた。光っているのは広い長方形の領域で、《戦艦》の周囲も範囲内に収まっている。

「一番から四番まで即時顕現(リリース)

 《戦艦》の進行方向に、四本の白い柱が競り上がってくる。柱は人の背丈の三倍ほどの高さまで伸びると、周囲に冷気を放ち始めた。

 水面が冷気に触れ、見る間に白く凍り付いていく。

「七番から十番、即時顕現」

 《戦艦》の左右にも二本ずつ、白い柱が現れる。正面の氷に乗り上げて、軋む音を立てながら《戦艦》は動きを止めた。

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