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狭間のトト  作者: 時雨煮
第二章
16/59

クリエイト

 《性能強化(エンハンス)》によって、一人乗りの高速艇を超える速度を出し始めた小型運搬艇(キャリア)は、数時間後には《七色鉱山(レインボウマイン)》までの距離を半分ほどにまで縮めていた。

 銀色の星からの光によって、周囲がほんのすこしだけ明るくなってきたところで、僕たちは遠くに青い星が見えてきたことに気がついた。

 運搬艇の速度を少し落として、シバ様が取り出した《星天図(ステラスコープ)》を確かめる。紙面の端の方に、じりじりと動く青い円があった。

「十中八九、こいつだろう。どうやって移動してきたのかは分からんが、このまま放っておくわけにはいかんな」

 どういうことだろうかと耳を傾ける。

「……ダンジョン同士が近づくと、マズかったりしますか」

「近づくほどダンジョンコアが互いに干渉し合って、不利益(ペナルティ)が発生する。普通はやらんのだが、こいつはそれを狙ってるのかもしれん」

「他にも理由が?」

「斥候を送らんと相手の状況は分からんが、所属している《氏族(クラン)》が「ヴァルハラ」だってことは分かる。何か企んでると考えといた方がいい」

「《氏族》、ですか」

 複数のダンジョンマスターの目的や利害が一致したときに、同盟の形で結成されるのが《氏族》であるらしい。《黄金都市(エル・ドラード)》と周辺のダンジョンのマスターたちは同じ《氏族》に所属していて、互いの「ダンジョン」に不足している物資を取引したり、やり過ぎない程度に「ダンジョン」を攻略したりしているのだ、とシバ様は語った。

「メロウの姐さんがリーダーでな。この辺には《氏族》に所属していないマスターもいるが、ウチの方針には従ってる」

「ヴァルハラは、違うんですね?」

「ああ。奴らはあちこちのダンジョンを荒らして回ってる連中だ。姐さんのお陰で、この辺じゃ大人しくしてる……いや、してた、だな」

 《星天図》をじっと睨みながら、シバ様は顎に手を当てて思案している。

「略奪が目的なら部隊を送りゃいい話だ。ダンジョンコアごとやってくるのは、別の意図があるのか?」

 ぶつぶつと呟いている内容は、正直なところ理解できない部分が多い。僕なりに《七色鉱山》が狙われる理由を考えてみたものの、大したことは思いつかなかった。

「ダンジョンを乗っ取られたりとかは、しないんですか?」

「支配権を奪う方法はある。ただ、すぐ近くにいる姐さんが黙ってないって知ってるはずだから、いきなりそこまでは無いだろうな」

 また唸り声を上げて考え込み始めたシバ様だったものの、すぐに肩をすくめて紙を丸め始めた。

「頭使うのは苦手だ。追い払っちまう方向で行こう」


 針路を青い星の方に変えて、運搬艇は《虚海(ラウム)》の遥か上を飛んでいく。

 シバ様からは《大梟(グレート・オウル)》に乗って《七色鉱山》に行くことを薦められたけれど、僕は同行を願い出た。ここまで来たのだから、最後まで見届けたかった。

 運搬艇がとりあえずの目的地に到着したのは、さらに数時間が経った後だった。


 僕に《星天図》を預けたシバ様は、何やら準備を始めていた。左手を前に差し出して、《虚海》のあちこちに視線を向ける。

「生成、《氷の防御柱(ピラー・オブ・アイス)》。アップグレードは射程(レンジ)三段階。設置予約(リザーブ)。生成、《雷の防御柱ピラー・オブ・ライトニング──」

 シバ様の言葉に合わせて、手元の紙の上にいくつもの三角形が描かれていく。それらは《七色鉱山》を示す銀色の円と、青い円の間を遮るように、幾重にも配置されていた。

 しばらくの間ためつすがめつした後、シバ様はふん、と満足そうに鼻を鳴らした。

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