表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狭間のトト  作者: 時雨煮
第二章
15/59

《星天図》

 《大梟(グレート・オウル)》の背から運搬艇(キャリア)の上に飛び移った狗頭のダンジョンマスターは、ハッチを開けて中へと入ってきた。

 僕から動く星の話を聞いて、低い唸り声を上げる。

(ドラゴン)にでも襲撃されたか? いや、そうとも限らんな……」

 シバ様が助手(ナビ)席の前に手をかざすと、そこに大きな紙面が現れた。紙の上には格子状に線が引かれていて、色とりどりの小さな円があちこちに描かれている。

 いったい何の図面だろうかと考えていると、紙面が僕の方へと寄せられた。

「近くにある星の位置を知ることができる《星天図(ステラスコープ)》だ。ここが《黄金都市(エル・ドラード)》で、こっちが俺の《七色鉱山(レインボウマイン)》」

 恐らく、ダンジョンマスターの目にはもっと詳しい情報が見えているんだろう。金色と銀色の円を順番に示した後、シバ様はその間の空白地帯を指し示す。

「今いるのがこの辺り。トト君が見た星は、向かって左の方から近づいてきたんだな?」

「はい。青い星でした。あっちの方に現れて」

 僕が指し示した方角を見ながら手元の紙をぐるりと回して、シバ様は顎に手を当てた。

「……それらしい星は見当たらないな。まだ《星天図》の範囲外か」

「ほ、本当ですよ」

「わかってるさ。嘘つくためにわざわざここまで飛んでは来んだろ」

 僕を安心させようとしているのか、笑顔らしき表情を見せてくるけれど、口の端から鋭い牙が見えている。


 少しだけ思案した後、シバ様は《星天図》を丸めて消し去ると、僕に場所を替わるように促した。

「どうするんですか?」

「ひとまず急いで戻るとしよう。何にしても、先手を打っといた方がいいだろうしな」

 操縦席に立ち、制御球に右手を置くと、シバ様は左手を胸の辺りまで上げて、そこにある「何か」を見下ろした。

「──《性能強化(エンハンス)》、発動。五倍、十時間」

 何をしたのか聞く間もなく、動力機関の立てる音が大きくなる。小刻みに揺れ始めた運搬艇の中で、凶悪な笑みを浮かべる狗人(ノール)がひとり。

「よし。久々に飛ばしてみるか」

「えっ」

 しっかり掴まってろよ、という声が耳に届くよりも前に、想定以上の加速によって僕の身体は背後の壁に衝突した。

《奇跡:性能強化》

 ダンジョンマスターのみ使用可能。

 対象となった物品の能力を一時的に強化する。消費マナは持続時間と強化係数を元に算出される。


小型運搬艇

 定員2名。巡航時速10ノティカ(15km)

 細長い機体の前部に操縦室、中央に仮眠室、後部に動力機関と格納庫が配されている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ