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狭間のトト  作者: 時雨煮
第一章
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《星天》を眺める

 六時の鐘で目を覚まし、どうにかこうにか《緑苔(グリーン・モス)》を狩って、一日分の食料を手に入れる。余力があれば、少し離れた広場まで行って赤や黄色の苔玉と交換したり、工房で運搬艇(キャリア)の整備を手伝ったりする。

 ナラカに誘われなければ、毎日がその繰り返しだ。父さんの運搬艇は、また家の裏で物置に逆戻りしている。


 レースの参加賞として手に入れた、二人分の《魔力回復薬(マジック・ポーション)》は《収納鞄(バッグ)》に放り込んだままだ。あれから何日も経っているけれど、《収納鞄》の中身は整理できていない。

 何とはなしに、外周部は港の桟橋まで足を伸ばしてみると、大型運搬艇の姿は見当たらなかった。どうやら、遠征隊はみんな出払っているらしい。ナラカからは何も聞いていないけれど、きっと今頃、彼女もどこかの「ダンジョン」を攻略しているのだろう。

「鉱山はあっちの方だっけ……」

 シバ様が管理している《七色鉱山》の上には、《黄金都市(エル・ドラード)》ほどではないにしろ、明るい銀色の星がある。大体の方角は把握していたので、すぐにそれとわかる輝きを見つけることができた。

 もう行けないとなると未練が募るばかりで、僕はいつの間にかポケットの中の《先見の片眼鏡フォアサイト・モノクル》を握りしめていた。


 片眼鏡を左目に。魔力を込めて、銀色の星を見つめても、その輝きは変わらない。

 僕が何をしようが、そこにある光は変わることはないのだろう。耳が萎れて、笑いが漏れる。

「はは」

 悔しくて、片眼鏡にどんどん魔力を流し込んでいく。一日、二日。ありったけの魔力を費やして五日先を見ても、何の変化もない。


 《収納鞄》に片手を突っ込んで、使いどころのない《魔力回復薬》を取り出した。栓を抜いて、その刺激臭に一瞬だけ躊躇する。およそ飲用に向かない鮮やかな青色とその臭いを無視して、一気に飲み干す。苦味もまた、舌を刺激する。魔力の代わりに体力(ライフ)とか気力(スタミナ)とかを消費しそうな味だ。

 咳き込みそうになるのを堪えて、両目を瞑る。半分ほど回復した魔力をさらに流し込んで、右目は閉じたまま、ゆっくりと左目を開いていく。


 一面の、白。


 七日先の未来は、何故か見ることができなかった。

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