#8・真っ白な闇の中で
ーーい。おーい。聞こえてるかーい。
うるさいな。聞こえてるって。少し静かにしてくれよ。
ーーそんなこと言っても、君の方からここに来たんだから、お話くらいさせてよね。こう見えて僕だって暇なんだよ?
ーーずーっと独りじゃ、流石に飽きちゃうよ。
ここどこだ?真っ白なだけじゃん。何もねぇな。
ーーあくまで僕の話は無視するんだね……。ウサギって寂しいと死んじゃうんだよ?知ってた?
てめぇはウサギじゃねぇだろ。どっからどう見ても人間じゃねぇか。
ーーそうでした☆
で、ここどこ?あんまここにはいたくないんだよな。早く帰りてぇ。
ーーなんで?もっとお喋りしょうよー。ねーねー。
うっせ。殴るぞ。とっとと帰しやがれ。
ーーごめんなさい、お願いだからそんな顔で睨まないで……。
殴られたくなかったら家に帰せ。いい加減飽きてきた。
ーーいやいや、飽きるだなんてさ、君ここ二回目だからね?しかもまだ来る機会はあるだろうし、ゆっくり見学してってよ。
はぁ?
こんなへんぴな場所、来たことなんてないし、二度と来たくもねぇよ。てかお前誰だよ。
ーーあらあら?……そうか、忘れてるのか。しょうがないな、じゃヒントをあげよう。
ーー修学旅行って言えば分かるかな?
いちいち癇に障る奴だな。まわりくどいんだよ。さっさと言えって。
ーーそう怒んないでさ、もうちょっと付き合ってよ。
ーー次、バス旅行。
バ……ス……?
ーー最後のヒントだ。
ーー不死のバケモノ。君のことだよ。
……がっ、あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ‼︎
ーー思い出したかい。
ーーここに来た経緯も、元の世界で何があったかも、さっきまで何が起こっていたのかも。
ーーそうさ。君は死んでいるんだよ。もう三回ほどね。
何でだ……。何で忘れてるんだよ、こんな大事な事!
ーー僕が消したんだ。君の生活に支障をきたさないように。
ーーついでに言えば、今あることも蘇った時には全て忘れてるのさ。
ふざけんじゃねぇ!
そもそも、俺が死なないのだってお前が原因だろ!
ーーあぁ、そうさ。お気に召してくれたかい?その気になれば、もう二つくらい着けられるけど。
やっと事実を受け入れられるようになったんだ。
これ以上俺を弄ろうってのか?ぶっ殺すぞ。
ーーやめておいた方がいいよ。今ここを支配してるのはこの僕だ。君を消し去るなんて造作ない。
……くそッ。何が目的だ。まさか本当に暇つぶしって訳じゃないだろうな。
ーーかーんたん。向こうにいる間、僕の駒になってくれればいい。忠実な手下に、ね。
ーーあ、心配はいらないよ。それだけはなんとか記憶させておくようにするから。
随分都合よくできてんだな。なんだ?国でも作ろうってか?
ーーそんなくだらないことしないよ。ただ、少しやりたいことがあるんだ。
ーーよし、言いたいことは言ったし、そろそろお開きってことで!
ーーまたね〜。
あ、おい、待ーー
そして俺は、白い闇の中へ落ちていった。