神の祝福
チート、前振り回です。
ランカスター領は、四方を山に囲まれた盆地にある。
人口は、500人ぐらいで、平野部と山岳部に分かれて暮らしている。
平野部では農業が盛んで、山岳部では牧畜と鉱山での採掘などがおもだった産業である。
今日は、ランカスター領にたった一つだけある教会に家族揃って訪れていた。
教会は、華美な装飾みられなかったが荘厳な雰囲気のある建物だった。
家族の者は、礼服に身を包み厳粛な面持ちで祈りを捧げていた。
「父上、今日は何があるのですか?」
俺は、一人手持無沙汰だったので祈っている父上に尋ねていた。
「ああ、今日はダグラスが祝福を頂く日なんだよ。」
父上は、俺の頭を撫でながら言った。
どうやら、この世界では5歳になったとき教会で祝福と言う神様の加護をもらえるようだ。
加護を受けたものは、聖痕と呼ばれる紋章が体に刻み込まれるらしい。
そう言って、父上は右手の甲に刻まれた聖痕を見せてくれた。
そうこうしていると、司祭様による儀式が始まったみたいだ。
ダグラス兄上は、司祭様に呼ばれ祭壇の前まで歩いき祈りの姿勢をとった。
司祭様は、神を讃える祝詞を詠唱し。
「大いなる六柱の神々よ。 ダグラスに祝福を授けたまえ。」
最後に誓願が唱えられた次の瞬間、神様が降臨された。
「我は、火を司る者なり。」
燃え盛るような赤い髪、赤銅色の体に無骨な鎧を纏った、まさしく圧倒的な存在感を放つ荒ぶる戦神であった。
「我がいとし子に、我が力もて祝福を与えん。」
火の神<マーズ>の金色の瞳から赤い聖光がはなたれ、ダグラス兄上を包んでいった。
「我がいとし子よ。 汝に幸多からんことを。」
一瞬、ダグラス兄上に優しげな眼差しをおくった。
その時、俺は神様が本当にいるんだなーなんて呆気にとられて見ていると、ふと神様と目線があった。
神様の顔が悪戯っぽく輝くと、ウインクしてきた。
火の神<マーズ>は、顕れた時と同じように唐突に消えてしまった。
最後に、神様の思念が脳裏に響いた。
「また会おう。」
俺は、度肝を抜かれっぱなしで唖然としていた。