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異世界流浪譚 ~傭兵と共に~  作者: ガキ坊
二章 諸国巡遊編
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決着

「お、お兄ちゃん。かは」


 リンは苦しげに久斗を呼ぶと、少量の血を吐いてしまう。それを見た団員達が次々にリンの名前を呼び、近寄ろうとする。


「動クナ。ソレ以上近付ケバコノ娘ノ命ハナイト思エ」


 しかし、魔物は団員達が今以上に近付くのを止め、動きを縛る。それに対し、団員達は舌打ちをしつつも魔物の言うことに従った。その中で久斗は決断に迷っていた。


──万が一、失敗をしたらリンちゃんの命が危ない。かといって今のままじゃ……。


「久斗君」


 久斗が判断に苦しんでいると、ターシャが小声で話し掛けた。


「その顔はまだ方策があるってことよね? でもそれをしないってことはリンちゃんかあたし達に危険があるってことよね?」


 久斗はこくりと頷くことはしなかった。しかし、ターシャはそのまま言葉を続ける。


「もし、ね。久斗君が何か方策があるというならやってみればいいと思うわ。それでリンちゃんやあたし達が久斗君のことを恨んだりはしないから。今のままだとどっちみちあいつに全滅させられるわ。それなら出来ることをしましょ」


 ターシャはそう言うと肩を叩いて久斗から離れた。魔物は久斗とターシャの会話を聞いていたが、余興と捉えて手出しをしようとは思っていなかった。


「話ハ終ワッタカ。デハ今スグ武器ヲ捨テロ。ソノ後ニタップリト可愛ガッテヤル」


 魔物が言うのを切っ掛けに久斗は苦渋の決断をする。そして、手にしていた刀を鞘に納刀してから手前に置いた。それをリンが悲しそうに見詰め、顔を伏せる。その目の端には涙が浮かんでいた。

 その久斗の行動を見て、他の団員達も同調するように手前に武器を置いていく。それぞれの顔には仕方なしと諦めの表情が浮かんでいた。そうして全員が武器を手前に置いたのを見た魔物は好色な笑みを浮かべて命令する。


「デハソコノ娘トソコノ娘。コッチヘコイ」


 魔物は少し離れた所に舞い降りると、エレインとアルムを指差し自分の所へと来るように言う。それに二人は嫌悪し、動こうとはしなかった。二人がいつまでも来ないことに魔物は苛立ちを乗せた声で再度命令する。


「早クコイ。アノ娘ガ死ンデモイイノカ」

「そのようなこと言いますが、全員どうせ殺すのでしょう?」


 アルムが気丈に言い返すと、魔物はニヤリと笑い宣言する。


「男ハナ。ソコニイル小僧ト男ハ必ズ殺ス。ダガ女ハ別ダ。我ノ妾トシテ飼ッテヤロウ」

「なっ! そんなこと認められると思っているのですか!?」

「認メラレル? 我ハ強イ。ソレダケデ天ガ我ノ行イヲ認メルダロウ」


 魔物の言い分に絶句してしまうアルム。そこに魔物がもういいだろうと手招きする。


「サァ、理解出来タナラコッチヘ来ルガヨイ。我モ現界シテノ初メテダ。優シクシテヤロウ」


 魔物はそう言うと、意識をアルム、そしてエレインへと注ぎだす。久斗は歯噛みしながら二人が嫌々ながらも魔物に近付くのを見ているだけであった。リンは姉貴分である二人が自分のせいで魔物の所に歩いていっているという現実に項垂れてしまう。

 

「ガハハ、サァモット近クニ寄ルンダ。タップリト可愛ガッテヤル」


 しかし、二人は魔物と久斗達との間で立ち止まる。魔物は首を傾げるが、すぐに再度呼びかけた。


「ドウシタ。我ニ可愛ガラレルノハ名誉アルコトダゾ。クックック」


 魔物の意識が完全に二人に移ったところで久斗は行動にでた。密かに指で編んでいた送還陣を用い、フォクシを送還する。そしてすぐに召喚陣を指を動かして描きあげる。その召喚陣は久斗が指先から熱線を出して描いていて、リンの足元に描きあげられていた。蛇は自身に向かって来ない魔法であったために無頓着で描き終えるまでずっと見逃していた。


「……サモンサーヴァント、フォクシ!!」


 呼び出すのと同時にフォクシは召喚陣から飛び出し、リンの肩辺りにある蛇の首に噛みついた。蛇は堪らず、咬みついていた口を放し、さらにはリンの拘束をはずして地面で暴れまわる。


「ナンダ?」


 魔物は突然の出来事に驚きの表情を浮かべる。その隙を逃さずにエレインは魔物の足元に向かって魔法を放つ。


「我願うは総てを阻む壁、その真炎により通るものを燃やし尽くせし、フレイムウォール!!」


 魔物の足元から炎の柱が天に向かって吹き上がる。それは、魔物を囲むような形で数本吹き上がり魔物を閉じ込めた。


「この!」


 また、ジャマンが手前に置いていた剣を素早くてに取り、フォクシを巻き込んで暴れている蛇を切りつける。蛇は切りつけられる度に激しく暴れていた。フォクシはずっと首元に噛みついていたため、体を何度も地面に叩きつけられていく。


「これで終わりだ!」


 ジャマンが蛇の動きを読み取り頭を剣で叩き切る。蛇は頭部を縦に半分にされてからも暫くはビクンビクンとその体を跳ねさせていたが、時間が経つにつれて動きは大人しくなっていった。


「フォクシ、大丈夫?」

「ケン」


 ターシャが駆け寄り、フォクシの容態を確認する。フォクシは毛皮を土や自身の血で汚しながらもターシャの問いに一鳴きして答えていた。打ち身などはありそうであったが、特に命に関わる自体ではなそうだったのでターシャはホッと胸を撫で降ろす。

 同じ頃、リンの所に久斗が駆け寄っていた。


「リンちゃん、大丈夫!?」


 リンは肩から胸にかけて牙による傷がびっしりとついていた。またその部分の服は牙によってびりびりになっており、素肌が露わになっていた。久斗はそれに気付くと顔を赤くしながらもリンの傷を確認していく。


「おにい、ちゃん。あり、が、とう」


 苦しそうに謝辞を述べるリンに久斗は頭をぶんぶん振り、逆にリンに謝罪した。


「僕のほうこそごめん。まさかこんなことになるなんて、せめて蛇に気付いていればよかったのに……」


 そう言い終わると、リンをゆっくりと地面に横たえ治療魔術の詠唱に入る。


「我願うは……」


 必死の形相で詠唱を始める久斗。その姿を朧気な視界で見ていたリンは改めて久斗への想いを強くする。そして、すぐに詠唱が終わると、久斗はそのままリンに向けて治療魔術を唱えた。


「彼の者を癒し給え、オールグリーン」


 唱え終わると同時に、地面に魔法陣が浮かびあがりそこから若葉色の光が溢れリンを包み込む。それはあたかも植物がリンを優しく包み込むかのような光景であった。そして、数秒の後に光はゆっくりと薄れていき最後は溶けるようにして消えていった。


「お兄ちゃん、あたし……」

「リンちゃん。良かったぁ」


 むくりと上半身を起こしたリンに久斗は抱き付いた。リンは一瞬目を白黒させていたが、すぐに状況を理解すると耳まで真っ赤にしながら慌てたように久斗の背を叩いた。


「お、お兄ちゃん、ちょっと恥ずかしいよ」


 それでも久斗はぎゅうっとリンを抱きしめていた。久斗の抱きしめる力が強くなったことでリンはされるがままに久斗の背中を撫でていた。そしてゆっくりと久斗が放すとにっこりと微笑みかける。


「お兄ちゃん、ありがとう」

「うん、良かったよ、本当に」


 二人はしばし見つめ合っていたが、まだ魔物を倒している訳ではないことを思い出し噴き上げている火柱の方を警戒しながら振り向く。そして、火柱の前で厳しい目でそれを見ている二人の元へと向かう。


「あ、リンちゃん無事だったですね。上手く行ってよかったです」

「久斗様に助けてもらうなんて・・・何て羨ま、いえいえとっても羨ましいですわ」

「エレイン、本音が隠せていないですね……」


 暢気に話しあう二人に久斗はどうなっているのかを尋ねる。


「あの魔物はどうなっていますか?」


 二人はその尋ねに今までの緩んだ雰囲気を引き締め答える。


「とりあえず、あの炎の壁からは出てきておりません。ただ、悲鳴も何もありませんので効果がどれほどのものなのかは不明ですわ……」

「エレインの言う通り、あの魔物は最初に放ったエレイン達の魔術に耐えていますし、あの魔法で足止め出来ているとは考えづらいですね」


 久斗達が魔物を警戒しながら話をしていると、そこにジャマンとターシャ、フォクシもやってきた。


「これで一度仕切り直しだけど……」

「ああ、あの魔物がどうして大人しくしているかだな」


 二人はそう言うと久斗達同様に魔物の方に厳しい目を向ける。そうして暫く警戒していると、火柱が徐々に下がっていき、最後には掻き消える。そこには火柱に包まれる前と同じ魔物の姿があった。


「ウヌ、モウ終ワリカ」


 魔物は閉じていた目を開け、(おもむろ)に話し出した。


「我ヲココマデ虚仮ニスル者共ニ暫シノ時間ヲ与エタノダガ……。フム、デハソロソロ皆殺シニスルトシヨウ」


 魔物の怒りも何も感じられない声に久斗の背筋にゾクリと悪寒が走る。そして、警戒を呼び掛けた。


「気を付けてください。今まで以上の攻撃が」


 来ます、と言い終わる前に魔物は動きだした。ルーアに攻撃した時と同様に高速で久斗達に近付き、腕を振り上げる。


「散開!!」


 ジャマンが号令を出すが、その号令を聞く前から久斗達はそれぞればらばらに散らばる。そして、久斗達がいた場所の中心からドゴォンと爆発音が響く。地面を穿つ姿勢のまま魔物は舌打ちをする。


「コレデ死ンデオケバヨイモノヲ。サッサト死ヌガヨイ」


 ゆっくりと身を起こし、辺りを見回す。そして、すぐに久斗に目をつけ厳かに言い渡す。


「マズハ貴様カラダ。我ノ尾ヲ切リ捨ステタ罪ヲ償ウガ良イ」


 そう言うと、四足で滑るように久斗に近付いていく。それに気付いたターシャ達が援護しようとその背に攻撃を加えようと動く。

 久斗はあえて魔物から逃げずに相対した。そして近付いてきた魔物が剛腕を振るってくるが、それを紙一重で避けていく。そこにターシャ達が追いつき、その背後から攻撃を加えるも、硬質の翼に遮られ攻撃が魔物に届くことはなかった。それ故に、魔物はジャマン達を一切気にすることなく久斗を執拗に攻撃していく。


「フン」


 久斗のすぐ傍を剛腕がすり抜けていく。久斗はなんとか刀で切りかかろうとするが、すぐに別の腕が襲い掛かってくるために反撃の糸口を掴めずにいた。


「はぁはぁ」

「ドウシタ。息ガ上ガッテイルゾ」


 見下したように言う魔物をキッと見上げて久斗は言う。


「まだまだ。僕は必ず貴様を倒す」

「フム、現実ヲ見極メラレナイ小僧ガホザクカ。諦メテ冥府ヘト旅立ツガヨイ」


 罵り合いをしている間もずっと剛腕が振るわれていく。その軌道が直線で単調なものであるため、避けるのは何とか間に合うが、手数の多さに次第に久斗は押されていっていた。


「お兄ちゃん! この」

「久斗様、援護をかけますわ」


 リンとエレインが久斗の苦戦、そしてターシャ達が手をこまねいているのを見て叫ぶ。そして、次々に魔法を唱え援護していく。


「……炎の礫よ、エクスプロージョン!!」

「……闇に閉ざせ、ダークネス!!」


 爆発で腕の軌道を逸らし、闇の帳で視界を奪う。しかし魔物はそれらを一切気にせずに久斗を狙う。


「グウウ。ガアアア!」


 魔物は視界が閉ざされたために単発の拳打から乱打へと切り替えて面による攻撃を仕掛ける。

 久斗はギリギリの所でそれらを後方に移動することで避ける。それに合わせるかのように魔物も前進しながら乱打する。息もつけない攻防の最中、久斗はある一瞬に賭けに出る。


「そこだぁ!」


 神速の早さで振るわれた刀は高速で繰り出される拳の一つへと吸い込まれるように近付き、そのまま腕を切り飛ばした。


「グ、ガアアアアアアアア!!」


 魔物はたまらず悲鳴を上げて、乱打を止める。また、魔物の後ろで攻撃を防がれながらも攻撃を加えていたターシャ、アルム、ジャマンは互いに頷くと、久斗が切り飛ばした腕へと駆けていった。


「グウウ、小僧! 尾ダケデハナク我ノ腕マデ切リ飛バスダト。下等生物ノ分際デ……。殺ス殺スコロスコロス!!」


 血走った目を久斗に向け、憎悪を込めて咆え猛る。そして先程と同じようにして乱打を繰り返す。その速度は怒りによって早くなっていたが、久斗は冷静に後方に下がり拳が振るわれる軌道を見極めていく。

 久斗が必死になって魔物の乱打を避けている場所から少し離れたところでジャマンとターシャは魔物の腕を探していた。


「尻尾の時みたいに勝手に動かれたら困るわ」

「分かっている。早く見つけて処分しないとな。いつまでも団長殿にあの魔物の相手を任せるわけにはいかん」


 ジャマンはそう言うとターシャは苦笑する。ジャマンの久斗ばかりに任せてしまう自分が許せない気持ちが痛いほど分かったからである。そうして時間もかけずに腕を見つける。


「じゃあ、とりあえずは細切れにしておこうかしら?」

「ああ、そうしよう」


 二人は早口に決めると、ジャマンが剣を構え、何度も切り刻んでいった。そして、再生不可能と判断すると二人はすぐに踵を返し、久斗の元へと駆けていった。





「そこだあ!」


 久斗は振るわれてくる腕に再度刀を振るう。そして、二本目の腕が吹き飛ぶ。


「グアアアアアアア」


 魔物の絶叫が響き渡る。魔物は怒りに我を忘れ、ぶんぶんと残った腕を振り回す。しかし、その稚拙な行動に隙を見出した久斗は刀を構えて突撃を敢行する。


「これで、終わりだぁ!!」


 まず、ぶんぶん振りまわす腕の片方を切り落とし、返す刀でもう片方も切り落とす。そうして全ての腕を斬り飛ばされたところで、魔物は命乞いを始めた。


「グウ、我ノ負ケヲ認メヨウ。ドウダ、我ト手ヲ組マヌカ? 貴様ト我ガイレバ全テガ欲シイモノノママニ手ニ入ロウゾ」


 しかし、久斗は魔物の言葉に耳を貸すことはなかった。


「お前の戯言に付き合うつもりはない。滅せよ!」


 言い切ると同時に魔物の首元まで跳躍し、刀を振り抜く。弧を描くように振るわれた刀は過たずに魔物の首を切り落とす。魔物の頭がごろりと落ちると、頭部のなくなった首から血が噴水のように噴き出し、その体も足を支える力が無くなりゆっくりと崩れ落ちていき、最後は豪快な音を立てて倒れ込んだ。


「ハァハァ」


 切り伏せた久斗は魔物が豪快な音を立てて倒れたのと同時に無事に着地すると、よろよろと数歩魔物から後退する。そして、今までの激戦の緊張が解け、その場にへたり込んでしまうのであった。

あかん…。全く戦闘シーンが上手に書けませんでした。稚拙な形で投稿することになってしまい申し訳ありません。

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