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異世界流浪譚 ~傭兵と共に~  作者: ガキ坊
一章 少年期編
35/69

模擬戦

 子供たちは作戦準備室に集まった後、椅子を車座に並べてから座り、お互いに自己紹介を始めた。ターシャ達大人組はそれを壁際から見守っていた。

 

「じゃあ、まずはお互いに初顔の者もいるんだし、何ができるかとかそういったことも含めて自己紹介していこうか」

「おう、いいね。やろうやろう」


 ウォカの提案にすぐさまルーアが賛同する。他の子供達も積極的賛成はしなかったが、反論も行わなかった。そして提案者であるウォカが立ち上がり先陣を切った。


「それじゃ、俺からいかせてもらうぜ。俺の名前はウォカ・アマトル。年齢は十四歳。戦士志望で得意武器は大剣だ。魔法についてはほとんど使えなくて、生活魔法と補助魔法が辛うじてってところだ。皆よろしく頼む。……こんなもんかな。んじゃ、次ルーアよろしく」


 ウォカが座るのと同時にルーアは立ち上がり、自己紹介を始める。


「俺の名前はルーア・モンタヴァだ。年齢はウォカと同じく十四歳で、一応相棒でもある。重戦士志望で、普段は盾などを使って攻撃を受ける役割をしている。魔法についてはウォカ同様に俺も生活魔法が精一杯だ。あ、ちなみに属性は土な。それとウォカは空だ。皆よろしく頼む」

 

 ルーアが座ると、次はコニーが威勢よく立って挨拶を始めた。


「それじゃ次はあたしね。あたしはコニー・アルボットよ、みんなよろしくね。志望は斥候で普段は短剣や投石器を使っているわ。魔法は補助魔法くらいなら何とか使えるって状態。属性は水だからあまり役に立たないこともあるけど……。でも罠とかならお任せよ」


 コニーがそう言うとガリアが立ち上がり、彼女に釘を刺した。


「もう、先輩はそんなことばっかり言って、実際は罠にいつも引っ掛かっているじゃないですか。もう少し落ち着きというものを持って下さい」


 そのガリアの言葉に、コニーは顔を赤くして怒鳴り返した。


「ううう、うるさい!! あんたはいっつもそうやってあたしを馬鹿にして」

「本当のことじゃないですか。それに今度は実戦なんですから『失敗したーてへ』では済まないのですよ」

「ふーんっだ。もういいわ。次はあんたの番よ」


 拗ねたコニーは椅子に座り込みガリアとは明後日の方向を向いた。その様子にため息を吐いたガリアは気を取り直して自己紹介をし始めた。


「はぁ、お見苦しいところを見せてしまってすいません。僕はガリア・ルーカスといいます。先輩……コニー先輩の相方を務めています。志望は戦士で、武器は両刃斧を使っています。あ、ちなみにコニー先輩はウォカ先輩方と同じく十四歳で僕は一つ下の十三歳です。どうぞよろしくお願いします」


 ガリアの挨拶にウォカが質問する。


「おーい、魔法はどうなんだ? まぁ戦士を志望してるんならあまり使えなさそうだけど」

「はい。ウォカ先輩の言う通りでして、魔法は土の生活魔法がそこそこ使えるくらいです」

「土か、被ったな」


 ルーアはそう言いながら同じ属性使いがいたことに嬉しさを感じていた。ガリアのほうも同じ属性ということで不思議な共感を得ていた。そんな二人を余所にコニーが久斗を指さして進める。


「ほら、次はそこのあんたたちよ」


 久斗とリンは互いに顔を見合わせ、そして久斗が立ち上がろうとしたところでリンがすっと立ちあがっていた。


「リン・ソルファ。九歳。志望はないけど今は槍を使ってる。魔法は土と闇。……終わり」


 淡々と無表情のまま、簡潔に述べていくリンに残りの子供たちは唖然としていた。周りにいたターシャ達はまたかと苦笑いをしていたが、リンは全く動じていなかった。久斗もターシャ達同様にリンの行動に苦笑いをしていたが、残っているのが自分だけだと気付き、立ち上がった。その時、スッとターシャが久斗に近づき耳打ちする。


「久斗君、魔法の属性なんだけどとりあえず火と無、それも召喚魔法にしておきなさい。理由は後で説明するから今はそれで誤魔化しておいて」


 それだけ言うとターシャは戻っていった。耳打ちの様子にウォカが憎しみの目を向け、ガリアとコニーは驚いた表情をしていた。それら周りの反応に、久斗は慌てて自己紹介を始めた。


「あ、あのヒサト・アンドウです。一応戦士志望ですけど、今は弓を主に使っています。えっと、あと魔法は火属性と召喚魔法が使えます」


 「召喚魔法」というところでガリアとコニーの目が大きく見開かれた。そしてすぐに羨望の眼差しを向けてきていたが、久斗は気付かないふりをして、自己紹介を続けた。


「あの、召喚魔法はフォクシって名前の狐を既に呼んでいて今は使えません。あと火属性は生活魔法全般と初級、それに中級が少し使えます」


 続けられた言葉にガリアとコニーは口をあんぐりと開け、驚きすぎて呆れてしまっていた。ウォカとルーアはそれを見て、何度も頷いていた。そうして久斗が座るとまだ驚いている二人を放置してウォカが次の提案をした。


「じゃあ、今度は班の構成を決めようじゃないか。と言っても得意武器を考えたらもうこれはほぼ決まってるけどな」

「そうだな。前衛は俺らとガリア、中衛はコニーにリン、後衛がヒサトだな。年齢的にもヒサト達が後ろに回ってくれているのは心情的に嬉しいな」


 ルーアの言葉に驚きから復帰してきたコニーが賛同した。


「そうね、まぁ精々前衛のあんた達を困らせないように動くわよ。ってかガリアさっさと正気に戻れ」


 コニーに頭を(はた)かれたガリアはハッとして周りを見回すと何事もなかったかのように頷いていた。それにコニーがさらに(はた)く。


「あんた、聞いてなかったでしょうが! あんたは前衛なんだからきちんと動きなさいよ」

「あ、うん。頑張るよ?」


 首をかしげながら答えるガリアにコニーはもう一度叩いていた。ガリアのほうは叩かれたことは全然気にせずに謝るだけであった。そんな二人を尻目にウォカ、ルーアを中心にどういった形で進んでいくかなどが検討されていった。


 その様子を見ていたエレインはぼそっと横にいたターシャに呟いていた。


(わたくし)たちもあのような時がありましたわね。とても懐かしく思いますわ」


 それにターシャ、ジェシカも呟きを返していた。


「そうね、あたしもちょっと懐かしさを感じていたわ」

「あなた達二人はあのガリアとコニーの役だったからあまり苦労してなかっただけよ。あたしとかエリックがどれだけ大変だったか……」


 ターシャとエレインはジェシカの呟きに縮こまった。それを見ていたアルムは呆れたように一人ごちた。


「これが彼の『風の旅団』の次期主力達ですか……。なんというか駄目駄目ですね」


 その独り言は他の三人のワイワイした声に掻き消されていった。




「よし、じゃあ今回の探索はこれでいこう。そんじゃ俺は……」


 ウォカの声にルーアが待ったをかける。


「ウォカ、大事なことが一つだけ決まっていないよ」

「あん? 何を忘れているってんだ」


 ルーアの言葉に本気で首を捻るウォカにガリア、コニー、果てにはリンまでもが肩を竦める。久斗はウォカと同じで首を捻っていたため、ターシャ達に呆れられていた。


「ウォカ、まだ決まってないのはね、班長だよ。班長」

「あ、あー。そういやまだ決めてなかったか」

「そうだよ。まぁこの話し合いを見ればだれが適任かは一目瞭然だけどね」


 ルーアはそう言ってウォカを見つめる。他の四人もルーア同様にウォカを見つめていた。その視線に嫌な予感を覚えたウォカはルーアに聞いてみた。


「あのさ、班長ってもしかして俺?」

「もしかしなくても君以外にだれがいるっていうのだい。この話し合いでも舵取りしてくれてたのは君じゃないか」

「ぐ」


 言葉に詰まるウォカにコニーが追い打ちを掛ける。


「ほらほら観念しなさい。まさか女のあたしや子供のヒサトに押し付けるとか無理でしょ。あんたがやるのが適任なのよ」


 その言葉にウォカは項垂(うなだ)れていた。そして顔を上げた時にはヤケクソ気味に叫んでいた。


「わーったよ。やってやるよ。でも指揮は下手くそだからな、文句言うなよ」


 その後ろ向きな発言は無視して拍手をする子供たち。そうして班長も決まり、子供たちは迷宮探索への準備に取り掛かった。



 


 そして子供たちはお互いの連携を確認するために修練場へと足を運んでいた。


「それじゃあ仮想敵として、あの案山子を……」


 その時、遠く離れて見守っていたターシャ達の中からジェシカとエレインが子供たちに近づいていった。そしてある事を提案した。


「ウォカ、仮想敵に案山子では駄目よ」

「折角の機会ですから私たちがあなた方の相手を務めて差し上げますわ」


 望外の提案に喜ぶ子供たちの中でウォカは恐る恐る確認をする。


「あの、それってエレインさんとジェシカさんがお相手して下さるということで?」


 それに対し、エレインはその豊満な胸を張って自信満々に答えた。


「その通りでしてよ。あなた達の拙い連携ではいくら束になって掛かって来られても平気ですわ」


 そのエレインの言葉に苦笑しながらジェシカも答えた。


「エレインが言うほどではないけど、まぁあなたたちくらいなら幾らでも捌いてみせるわよ。だから安心して掛かっていらっしゃい」


エレイン、そしてジェシカの言い分にムカっときたウォカが全員に集合をかける。


「作戦会議!」


 ウォカのすぐ傍に集まった子供たち。全員集まったのを確認するとおもむろにウォカが意気込みを語りだした。


「あそこまで言われたらぎゃふんと言わせてやらないと気が済まない。それに俺らとあの人らは年齢差はそこまであるわけじゃない。絶対目に物見せてくれる」


 カッカしているウォカにルーアが水を刺した。


「どうやって?」

「それはだな……。あー、そのー」


 ウォカの様子にコニーが助け船を出した。


「あの二人ってどっちかというといつも後衛に回ってたわよね。だったら防御回りとかどちらかというと苦手なんじゃないかな?」


 その言葉に久斗は襲撃された時のことを思い出し肯定する。


「そういえば、ここに来る途中で襲われた時にはエレインさんとジェシカ姉さんは魔法で応戦していたよ」


 久斗の発言にルーアが考え込む。そして自分で出した結論を皆に伝えた。


「それが本当ならこちらは魔法が完成する前に突っ込んで一気呵成に近接戦をでけりをつけるしかないな」

「なら、あたしも短剣で行ったほうがいいわね」


 コニーが腰に下げた短剣を指で弾きながら提案する。それにルーアは頷き、次いでウォカを見て尋ねた。


「ウォカって空の補助魔法が使えるだろ。それを始まったら全員に掛けることができないか?」


 ウォカは少し考えた後、難しい顔をして答えた。


「出来なくはないけど、相手の詠唱も考えたらやっぱり一人、出来て二人だと思うぞ」

「それで構わないさ。じゃあお前自身とコニーに頼む」

「任せろ!!」


 胸をドンと叩くウォカを見て全員が笑う。そしてルーアはウォカに問いかけた。


「もう頭は冷えたか?」


 その問いに、ウォカは恥ずかしさから頭を掻きながら頷き返した。


「あぁ、すまんかった。もう大丈夫だ」


 その答えに満足そうにニヤっと笑うとルーアは黙り込んだ。代わりにウォカが仕切りだす。


「んじゃ、ルーアの決めた手筈で行こう。ヒサトとリンは前衛がつくまで牽制を頼む。流石に突っ込むのは無理だろうしな」


 ヒサトとリンが頷くのを見て、ウォカは最終確認に乗り出すのであった。




 子供達の話し合いが終わったのを見計らってエレインとジェシカが声をかけた。


「もういいのかしら?」

「お粗末な会議になっていないことを願いますわ」


 挑発を繰り返す二人に子供たちはやる気を漲らせながら配置に着いた。エレイン達はその様子に挑発をやめ、数十メートル離れたところでそれぞれの獲物を持って身構えた。

 緊迫した雰囲気が漂う中、ターシャが開始の合図を行った。


「始めえええ」


 開始の合図と共に飛び出したのはコニー、そしてガリアであった。ウォカは空の補助魔法であるスピードアップを唱え、ルーアは回りこむように地面を駈けていた。久斗は弓で、リンは魔法を使って牽制しようとしていた。

 それに対し、ジェシカは両手に短剣を持ちコニーとガリアを待ち構え、エレインは攻撃魔法の詠唱に入る。


 一番初めに魔法が発動したのはウォカのスピードアップであった。それによりコニーの速さは加速され、一気にジェシカに詰め寄る。


「なかなかやるじゃない。でもこっちに気をとられていると……」


 その言葉にハッとしてエレインのほうに顔を向ける。それと同時にエレインの詠唱が完成し、コニーにフレイムアロー(弱)が射かけられた。


「……の矢で燃やしつくさん、フレイムアロー!」

「ええ、早い!」

 

 コニーは一瞬驚いたが、すぐにその矢を進路上から横にずれてかわす。


「ふう、あのくらいなら……」

「まだまだ甘い」

「あ、え、きゃあ」


 しかし、その隙を吐かれジェシカの蹴りをまともに浴びてしまっていた。


「コニー!! この」


 そうして地面を転がるコニーと入れ替わりに、ガリアがジェシカに攻撃を加える。


「そんな大振りは危ないわよ」

「うわ」

 

 しかし斧を大きく振りかぶって放った斬撃はジェシカの短剣に上手に受け流されてしまう。そうして勢いがついていたぶん、体勢を崩していたところに、追撃を加えようとしたジェシカであったが、それは久斗の援護によって阻まれた。


「あらら、久斗も上手に援護するわね」


 久斗をちらりと見ながら改めてガリアと対峙するジェシカ。その横ではエレインがルーアに向かって二度目のフレイムアローを射かけていた。


「これでお終いでして。フレイムアロー!!」


 その炎の矢はルーアの持つ大盾に命中するが完全に防がれていた。しかし、爆発の威力でルーアは盾ごと引っくり返ってしまう。エレインがそれを見やっているところに今度はリンのアーススパイクが仕掛けられた。


「……我願うは鋭鋒たる土、無限の土の力を今呼び寄せん、アーススパイク!」


 しかし、エレインは土が隆起したように見えた瞬間に飛びのいたため、その土鉾が足を貫くことはなかった。


「お返ししますわ」

「きゃあ」


 逆にリンはエレインが再三放ったフレイムアローが至近に着弾、爆発したことで吹き飛ばされていた。


「これで残りは君と久斗、それにウォカだけだね」


 ジェシカの余裕たっぷりな表情にガリア、そして自分に補助魔法をかけていたウォカがいきり立ち、順に襲いかかっていく。


「これなら」

「そんな単調な太刀筋じゃすぐにやられちゃうぞ」


 ガリアが斧を振り回す中、ウォカが大剣で斬りつけようとする。


「その隙、もらったあ!」

「あげません」

 

 しかし、それらの太刀筋をジェシカは読み切り、全ていなしてコニー同様に二人とも蹴り飛ばした。


「ぐは」

「ぐえ」


 そして、遠くで弓を構える久斗を見やる。


「これで残りは久斗様だけですわね。どう致しますか?」


 ジェシカの横に移動したエレインがそう問いかけると、久斗は弓を置き両手を挙げて降参した。


「お、流石に久斗は素直だね」

「久斗様なら当たり前ですわ。それにしても、五分も持ちませんでしたわよ」

「なんというか、攻撃がしょぼすぎね。これは迷宮に行く前にしごかないと危険だわ」


 そう二人が話しあっている横で、子供達も集まっていた。


「なんていうか惨敗だな」

「もう少し行けると思ったんだけどなぁ。というかさ、あの人たち絶対スピードアップとか掛けてたんじゃないの」

「そうだぜ絶対ずるしてるぜ」

「まぁでも我々の欠点を敢えて狙ってきた節は多少あるよな」


 ルーアの一言に愚痴っていた二人、ウォカとコニーは押し黙る。ガリアはそうそうと、ルーアに同意し、反省点を述べた。


「僕は攻撃大振りだって言われた。そしてすぐに捌かれちゃったよ」

「俺も似たようなもんだ。エレインさんは何も言ってないけど、あの攻撃の仕方は俺の弱点を突いていたと思う」


 二人の言い分に愚痴を言っていたウォカとコニーも何が悪かったのかを考えだした。そうして、その場は反省会へと変わり、子供たちはお互いの連携も含めて反省点を炙り出していった。その後、横で見ていたターシャ、アルム、更にはエレイン達も加わってダメ出しが行われ、幾つもの改善点が見つけられていった。

 そして、その日はターシャ達に指導を願い出て、個人の技量、班の連携が磨かれることとなった。

読んで下さりありがとうございます。


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