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異世界流浪譚 ~傭兵と共に~  作者: ガキ坊
一章 少年期編
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種族

 エルリッシュまでの道中、馬車の中ではターシャからの最後の講義が行われていた。しかしながら、講義とは言うものの実際は今までの総復習であり、問答形式で行われていた。


「じゃあ、次は大陸の名前なんだけど。まず現在の所大陸はいくつ発見されているか覚えている?」

「はい、確か……三つです」

「そう、その通りよ。じゃあそれぞれの大陸の名前と特徴を答えなさい」


 ターシャの問題に少し黙って思い出そうとする久斗。それを横でエレインが心配そうにそわそわとしていた。ここにエレインがいる理由は、久斗に会うためにわざわざ馬車を移ってきたからである。鬱陶しそうに見張りの仕事もあるだろうとターシャは指摘したが、それに対してエレインは胸を張って答えていた。


「前回と同じように見張りの仕事を変わってもらっただけでしてよ」

「はぁ」


 ターシャは呆れてものも言えないとばかりにため息をついていた。変わってもらったのは胸を張って答えた以上確かだであろうと推測できたが、前回とは違い元々エレインが見張りの仕事であったのを知っていたからである。

 久斗は無理をしてまで来てくれた彼女のことは心苦しかったが、極力無視して問題への解答を出していた。この時も同じように見ないようにして答える。


「えっと、一番大きな大陸が今、僕達もいるレイヨース大陸です。レイヨース大陸は温暖かつ湿潤な所がそれなりに多いですけれど、砂漠化しているところもあります。

 次に大きなのがコラムイ大陸。コラムイ大陸は、レイヨース大陸と交流があり、貿易も盛んです。魔法体系についてはむこうとこちらでは種類が違っていて、技術交換も頻繁にされていると聞いています。

 最後の大陸はオースリカ大陸です。オースリカ大陸はほかの大陸とは違い、貿易はされていません。というよりは発見されたのがつい最近で詳しいことは全然分かっていない大陸です」


 一つ一つ確かめるようにゆっくりと答えていく彼にターシャは機嫌良げに聞いていた。


「うん、正解。それじゃあ今度はここ、レイヨース大陸についてね。といってもそんなに難しくはないんだけど……。では、レイヨース大陸にいる人種について答えなさい」


 久斗は続けて出された問題に指折り数えながら答えていく。


「えっと。まず人間族、それと獣人族、さらに少数だけど木人(きじん)族。あとは()族と妖精族……だったと思います」


 指折りした数と覚えていた数は一致していたが、久斗は少し自信なさげに解答した。それに対して、ターシャは嬉しそうに頷いた。


「うん、ほぼ正解ね。一応補足しておくと、まだまだ少数民族が点在していわよ。教えたはずだからきちんと覚えておくようにね。でも主な種族は久斗君が言った通りよ。よし、じゃあそのまま続けて、各種族の特徴を答えなさい」


 特徴と言われて少し考え込んでしまうが、すぐに顔を上げて解答した。


「はい、ではまずは人間族なのですが、大陸の主要種族の一つで目に見えて目立つ特徴はありません。

 ただ、魔法に関しては全属性に対応していて、複数属性を持つ人は一番多いです。また他の種族と比べて身体能力は平均的ではありますが、成長の可能性は幅広いといわれています。実際多方面で活躍する偉人は多いです。

 それと性格的なものとして他の種族よりも欲望が強いといわれています」


 うんうんと笑顔で聞いていたターシャは久斗の答えに補足を付け加えた。


「そうね、人間族の可能性は素晴らしいものがあるし、それは英雄と呼ばれる人物は人間族が多い所からもわかるわね。ただし、本当に他の種族より欲深いからこそ他種族との摩擦も大きいわ。久斗君も実際はともかく、見た目は人間族だから他の種族の人に嫌な対応をされるかもしれないけれど我慢しなさいね。大概そういう(やから)性質(たち)が悪いのが揃っているから、ね」


 そう言われても、久斗はそこまで深い問題とは思わずに楽観的に考えて頷いていた。あまり真剣に捉えていない様子にターシャは危機感を抱いた。


――本当に分かってるのかしら? 大体そういう奴って皆が思っている以上に悪質だからこっちできちんと遮断しておかないとね。エレインにも無理矢理協力させましょっと。


 そのように考え、エレインも巻き込んで、久斗保護の構想を練るが、その思いは一欠片も出さずに次を促す。


「ん、じゃあ次の種族は?」

「はい、次の獣人族ですが、こちらも人間族同様、大陸の主要種族の一つとされています。

 一番目を引く特徴は各種動物の身体的特徴を引き継いだかのような姿です。身体能力もその見た目の動物に準じたところがありますし、その能力は全種族の中でも比較的高めと言われています。

 それと、それぞれ身体的特徴が同じ人たちが集まって部族と呼ばれる集団を作っています。

 性格的なところとしてはどちらかといえば好戦的ではありますが、部族の中には争いを嫌う部族もあります」

 

 自分の種族についてきちんと答えられていたことが、思いの外嬉しく感じターシャの表情は満足げであった。


「その通り。ちなみに主要な部族としては猫人族、犬人族、虎人族、鳥人族などがあるわ。あたしは見ての通り猫人族になるわね」


 そう言いながら、ターシャは自慢げに猫耳をピコピコと動かしていた。久斗はその猫耳が少し触りたかったのだが、ターシャから次を催促されたことで断念していた。


「じゃあ、次は……木人族ね」

「木人族、えっと……。木人族は名前の通り見た目が木、つまりは植物の人種です。

 特徴はその生態で、特に人間族や獣人族と大きく違うところは暮らし方です。木人族は動物を食べたりせずに、土から栄養を摂取します。体格は他の種族よりも大きい人が多く、最高で四メートルもの高さになる人もいます。

 性格は他の種族と比べても非常に温厚で、自分達から争いを仕掛けることはないと言われています」


 久斗の説明を途中まで聞いていたターシャは補足説明をすると同時にさらに一つ問いかけを加えた。


「木人族は他の種族と食べ物が違うために取り合ったりすることがないから争いもないんでしょうね。ただし、ある条件下においては他の種族に攻撃することがあるわ。何かわかる?」


 ターシャからの更なる問いに少し考えてから返答する久斗。


「……それは森林破壊とか自然破壊といったことをしたらですか?」


 その久斗の答えに残念な気持ちで首を横に振るターシャ。久斗もそれほど自信があって答えたわけではないので間違い自体は気にしなかったが、ターシャの期待に応えられなかったのは残念であった。そしてその気持ちを押し隠して、一体どういう条件だろうと首を傾げた。それを見たエレインは横から助言するように久斗に語りかけた。


「木人族は他の種族と争わないだけで、きちんとした生活を送っていますし意思も知性も存在していますわ。だからこそ人としての尊厳は勿論ありますし、仲間、ひいては自分たちの生活共同体に害を及ぼす存在に対しては果敢に攻撃していきますわ」


 余計なことをとばかりにエレインを睨みつけたターシャであったが、視線を受けた当人は久斗に説明できたことで満足し、ふふんと鼻を鳴らしていた。それを見て舌打ちをしたターシャはエレインを意識の外に放り出し久斗への説明に戻る。


「あいつの言うとおりね。人間族や獣人族も生活共同体が攻撃されたらやり返すのが普通よね。それと同じことは木人族にも言えるってこと。ただ、さっきも久斗君自身が言っていたように自分達から無用な争いを仕掛けることはないわ。でも……」

「木人族は自分達の領域から出てきませんから滅多に会う事はないと思いますわ。ですが、逆に私達が領域には行くことはあり得ますわ。その時に相手の価値観をきちんと読み取って、その辺りに気をつけなければいけませんわ。まぁ久斗君なら大丈夫でしょうが」


 最後の台詞を取られたターシャはこめかみをピクピクさせながら手であっち行けと指示していた。エレインのほうも、その態度にこめかみをヒクつかせて早く終われとクチパクで言う。それに対して……といつものじゃれあいを展開していく二人。

 そんな光景はまるで目に入らずに、まるで無視しているかのようにじゃれ合いを放置する久斗。彼はエレインの言葉を心に留めておこうと必死に反芻していた。暫くしてターシャは無音のじゃれあいから、ふと我に返るとエレインをほったらかして次の種族についてを促した。


「じゃ、じゃあ、次の種族にいきましょうか」


 久斗は何事もなかったかのようにすぐに返事をする。


「はい、次は鬼族ですか? 妖精族ですか?」

「鬼族でいいわ」


 久斗は鬼族、鬼族と何度か呟いた後でゆっくりと話しだした。


「鬼族は、こちらも木人族と同じく名前の通り、鬼の容姿を持つ種族です。

 その特徴ですが、男性と女性で容姿が大きく異なる点です。男性は肌も赤銅色になり、体格も二メートルから三メートルになりますが、女性は人間族とほぼ同じで、体格についても二メートルを超える人はいません。ただ、男女ともに共通しているのは額には角が生えていることです。この角ですが、数が多いほど優秀な鬼族と言われています。実際に角の数が多いほうが力も体格も大きいことが多いそうです。

 性格は他の種族と比べて好戦的ではありますが、木人族同様自分達の領域から滅多に出ることはなく、積極的に関わらない限り被害は出ないと聞いています」


 ターシャは聞いている間満面の笑みを浮かべていたが、最後に訂正を加えた。


「大体あってるけれど……、鬼族の性格については詳しいことは実は分かっていない部分が多いらしいのよ。だからあまり好戦的と決めてつけてはダメよ。それとゴブリンやオーガといった、魔物に分類される種と間違うとその怒りようは半端ではないから気を付けておきなさい」


 ターシャの指摘に少し驚く久斗だったが、交流があまりないからこその情報不足という横からのエレインによる説明で納得した。それに満足げなエレインにまたもやターシャは忌々しいやつと呟き、鋭い目つきで睨みつけていた。しかし、それも一瞬のことで、すぐに表情を元に戻して久斗に次を示す。


「うん、じゃあ最後の妖精族ね」


 久斗はターシャの誘導に頷きを返し説明を始めた。


「妖精族は木人族や鬼族とは逆に人間族より小さめな体格をしています。大人でしかも大きい人でも一メートル五十センチ位までしか身長は伸びません。

 特徴としては背中に二枚二対の羽があり、魔力を用いて空を飛ぶことが出来ます。その生態上魔法に関しての才覚は優れていると聞きます。

 ですが、性格は良く言えば無邪気、悪く言えば悪戯好きとでも言えるほどのもので、他の種族に対して洒落では済まされないちょっかいを掛けてくると聞いています」

「ん、よろしい。よく覚えていたわね。でも妖精族の悪戯は本当に洒落にならないものがたくさんあるから、見かけたらかなり警戒するようにね」


 きちんと最後まで覚えていたことに対して褒めながらも、過去に悪戯で死に掛けた経験があったターシャは苦虫を噛み潰したかのような顔になっていた。久斗は珍しく突っ込みがないなと思い隣のエレインを見ると、ターシャと同様の表情だったので首を傾げるのであった。

 そして、二人は同時に嫌な記憶を払うかのように頭をぶんぶんと振っていた。お互いの動作が重なったことで睨み合いを始める二人であったが、すぐにそれぞれ反対にそっぽを向いた。

 そして、主要な種族が終わったことで、ターシャは一旦講義の終了を通達する。


「じゃあ種族についてはここらへんで終わりましょう。勿論他にも様々な種族がいるのだから、そのうちまた勉強してもらうわよ。それに今喋ってもらった種族だってまだまだ覚えることはたくさんあるのだから、これからもビシバシいくわよ」

「はい!」

「じゃあ、今はとりあえず休憩に……」


 ターシャが休憩を伝えようとした時に、馬車の外から声が掛かった。


「おーい、そろそろエルリッシュに着くぞー」


 その言葉に馬車の中にほっとした空気が流れた。自分たちがいる場所が未だ魔物の生息圏であり、危険であるのは分かってはいたのだが、安全な都市が見えたことに皆一様に安心したのであった。

 久斗は今までで一番大きな街と聞いていたので既にわくわくしており、落ち着きをなくしていた。

 ほどなくして無事に到着し、街に入るための簡単な手続きを行う。そうして馬車は古都エルリッシュの中へと入っていった。

読んで下さりありがとうございます。


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