プロローグ
「生きたい」と思えずに
毎日を生きていた"白井瀬 百合"
当たり前かのように明日が来る。
そんな毎日を壊そうとしたー…
あの日を栄えに、
彼女を取り巻く全てのモノを
大きく変えていく。
命の大切さ。
存在、全ての大切さを
この物語から
少しでも感じていただけたら
光栄です。
自分に起こる事 全てに
意味は存在するんです。
「私は ただ
生き長らえてしまったのね…」
夢から覚めると、
瞳から溢れだした涙が
頬をつたっていた。
目覚まし時計に目をやると、
予定時刻よりも少し早く
目が覚めたことに気づく。
"白井瀬 百合" は涙も拭かずに
少し考え込む。
「不思議…ほんの、さっきまで
見てた夢なのに…
もう 思い出せない……。」
漏れるように呟いた声を
静かな空間が飲み込んだ。
眩しい光がカーテンの隙間から
綺麗な線を描く。
百合はカーテンも開けず
部屋から出た。
洗面所に行き、
そっと鏡に写る自分と向き合う。
「酷い顔…」
色素の薄い長く伸びた髪を束ね、
蛇口をひねった。
冷たい水が、
涙で汚した顔を癒す。
そうだ!
っと思い出したかのように
部屋に戻り、百合は
スマートフォンに手を伸ばした。
夜中の内から、
一様鳴るであろうと想定していた
百合のスマホ。
ドライブモードの表示と共に
数件の着信やメールなどが
表示されていた。
「…………。」
流れるように一通り目を通し、
何事も無かったかのように
そっと伏せた。
"朝の仕度"が始まる。
規定の制服に着替え、
薄くメイクをあしらう。
全身鏡に写る自分の姿は
先程まで
泣いていたとは想像出来ない。
テーブルの上に置いてある袋に
手を伸ばし、
ロールパンを1つと、
ドライブモードに設定したままの
スマホを手に取ると
足早に玄関へ向かった。
「行って来ます。」
返事が返って来るはずもないが、
扉が閉まる前に声を掛けた。
消えるように放った百合の一言は
一人暮らしの
ワンルームマンションを
余計に寂しく思わせた。