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壊れかけの絆  作者: リン
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能力#2 【心理読取】 後編

 副作用の指摘に失敗した大須賀は、ゲームから脱落した。

「相原さん。俺はアンタのことは信用している。けど、あまりにも無防備過ぎる。悪いが、俺はここから別行動にさせてもらう」

 真野が言った。相原は何かを言おうとして、やめた。

「俺は熊谷さんを守る。自分の能力もそのために使えるものを考える。できれば、加納さん、稲垣さん、二人の協力が欲しい。勝手な頼みになるが、どうだろう」

「私が役に立てるのであれば、何よりです」

 加納が答え、稲垣が黙って頷く。

「熊谷さん……ごめんなさい。何か私のせいで危険になっちゃったかも知れないですね。でも私は、みんなで無事に元通りの生活に戻れたらいいって本当に思ってるんです」

 相原が熊谷に言う。熊谷も真っ直ぐ相原を見て、答える。

「うん、見てればわかるよ。私も何かをつい言ったりやったりして失敗することあるから。ただ、私の能力が相原さんの言った通りなのかは、確かめられないでしょ。仮に能力がわかっても、副作用がわかる訳じゃないしね。だから、あまり気にしないで」

「うん、ありがとうございます。きっと、真野さんも、私がいつか取り返しのつかないような失敗をしたら……ってことを考えてるんですよね。私は私なりに、みんなで無事にゲーム終了できる方法を探していきます。残るヒトは、良かったら協力して下さい」

 相原が周囲の顔を見渡す。それぞれ思案に暮れているようだったが、ふと、成瀬が立ち上がった。そのまま出口へ向かうのを見て、相原は表情を曇らせた。成瀬は扉を開けると振り返り、言った。

「私は少しやりたいことがあるから行くけれど、お互いに協力が必要な時には混ぜてくれる?」

 相原は顔を輝かせ、「はい!」と一際大きな返事をした。その様子を見て、真野達も教室を出て行った。相原は少し考え込んで、皆に言った。

「あの、私、ちょっと思いついたことがあるので、少し出て来ようと思うんです。あ、もちろん、みんなのためにできることを考えているんです」

 相原を見る顔ぶれは、決して良い表情ではないが、誰も口を挟まない。

「それで、残って意見をまとめたり、戻ったヒトの情報を整理したりするヒトも必要だと思うんですけど、朝比奈さん、お願いできませんか?」

「良い人選ね。皆さんも異存はないかしら」

 誰も口を挟む者はいない。相原は「お願いします」と残し、一人で教室を出た。


 真野達は四人で、見取り図を基に地形の確認をしていた。

「真野さん、聞いてもいいですか」

 真野は加納に顔を向け、続きを促した。

「私は、恐らくですが、熊谷さんの能力と副作用に気付いています。それをわかった上で誘って下さっていますか?」

 真野は少し迷っているようだったが、少し笑みをこぼして答えた。

「俺じゃ加納さんには隠し事はできそうにありません。副作用まで気付いているとは思いませんでしたが、たとえ気付いても加納さんは能力を奪ったりしない、そう思って誘いました。貴方の力は大きいですから」

「ですから、それは買いかぶりです。もう一つ聞きたいのですが、私と稲垣さんにだけ声をかけられたのはなぜです?」

「それは単純に、俺が信用できると思うヒトを選んだだけです」

 今度は間を置かずに答えた。稲垣は熊谷に問いかけた。

「アンタは? 真野のことは信用しているようだが、俺達のことを信用できるのか?」

 熊谷は答えない。言葉を選んでいるように見える。見かねたように、加納が割って入った。

「稲垣さん。熊谷さんは心理を読み取れるはずですから、私達がどんなつもりなのか、ちゃんとわかっているでしょう」

「すみません、よろしくお願いします」

 熊谷が頭を下げると、稲垣は照れたように顔を背け、「おう」と小さく返した。

「分かれた方が早いだろう。俺は向こうを見て来る」

 稲垣は返事も待たず、一人で走って行った。


 相原は、日比野と斉藤を見つけ、声をかけた。

「探しましたよ。少しお邪魔していいですか?」

「わ、私達はそんなんじゃ」

 斉藤の反応を気にすることもなく、日比野が「どうぞ」と答えた。

「質問とお願いがあって来ました。率直に聞きますけど、お二人はゲーム脱落しようとしてますよね?」

「うん。アンタも気付いてたのか」

 斉藤は驚いているが、日比野は笑って答えている。

「そこでお願いなんですが、お二人の能力を私にくれませんか」

「ふーん……そうきたか。悪いけど、俺はゲームに興味がないし、誰かに肩入れする気もないな」

「私も同じ。他を当たってみたら?」

「ただとは言いません。私にできることなら何でもします」

 日比野の表情が険しくなった。

「おい。そういうことを軽々しく言うな。アンタにできることなら自分でできるさ。わざわざしてもらう気はない」

「身体はどうですか? 女の身体を好きにできるとしたら」

「ちょっと! 何を言い出すの?」

 斉藤が割って入るが、日比野も相原も、互いから視線をはずさない。

「面白いじゃん。脱いでみろよ。今ここで」

 斉藤は日比野を嗜めるが、日比野の様子を見ておとなしくなった。相原は一瞬俯いたが、すぐに視線を戻し、言った。

「好きなように脱がせて下さい。何なら破っても構いません。抵抗しませんから」

「俺は何もしねぇよ。見てるだけだ。自分でやってみろ」

 相原が再び俯く。徐々に頬が朱に染まっていく。

「……お願いします。脱がせて……下さい」

 相原は震える声でぼそっと言った。

「いい加減にしろよ。する訳ねぇだろう。色香だけで何でもする男ばかりだと思うなよ。大体、それじゃ斉藤はどうするんだ。アンタの身体なんか望む訳ないってのに」

「……一生懸命なのは見ててわかるけど、ね。貴女、そういうことにも慣れていない風じゃない。もうちょっと、自分らしい方法を探した方がいいんじゃないの?」

 二人の言葉を受けて、相原は涙を零した。泣きながら尚も懇願する相原を落ち着かせ、日比野と斉藤はその場を後にした。

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