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壊れかけの絆  作者: リン
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能力#9 【能力遮断】 後編

 相原の表情が変わった。次の言葉を待つように、じっと加納を見ている。

「相原さん。人間には三種類の人材がいます。貴女のように、いるだけで宝となる【人財】。滅多に出会うことはないでしょう。そして、岡田さんや瀬戸さんのような、ただそこにいるだけの【人在】。世の中の大半は、流れに翻弄されるこの【人在】が大半です」

 加納は一旦、そこで言葉を切った。相原は黙って聞いている。

「最後は、いることが罪である【人罪】。貴女は信じたくないかも知れませんが、世の中には常人には信じられないような悪行を犯す者もいるんです。江藤さんや……」

 加納が言葉に詰まる。相原は、何かを祈るようにして、加納を見つめている。加納は微笑むと、「貴方に出会えて良かった」と小さく呟いた。相原にその言葉が届いたのかはわからないが、加納は続けた。

「相原さん。もう一度言います。私が貴女についた嘘は一つだけです。私は、誰の能力も奪っていません」

「だって……!」

「お喋りは、終わりだ」

 突然、加納の雰囲気が変わった。相原が「まさか」と呟く。

「あの程度で意識を失うとは。お陰で余計なヤツに捕まったな」

「加納さん。貴方の言葉の意味が、わかった気がします……」

 相原の涙は止まらない。小刻みに揺れる身体は、そのまま消えてしまいそうにさえ見える。

「ふん。人材がどうのって話か。若いヤツは下らん言葉に酔うもんだ」

 相原は首を横に振った。そして、加納がその場を去ろうとするのを見て、はっきりと言い放った。

「加納さん。貴方の能力の副作用は、意識がない時には発動できないことです」

 加納の姿は、消えた。

「ちゃんと……相談して欲しかった。何でもかんでも背負い込んで、自分で解決する……それが大人なんですか? 甘えたり、頼ったり、弱さを見せちゃダメなんですか!? 加納さん!」

 相原は、誰もいない空間に問いかける。震える声が木霊する。

「私が脱落させたヒトは、最後はみんな笑顔だった。ちゃんと信頼関係を築くことができたはずなんです。もしも、最後に向き合っていたのが貴方だったなら……!」

 それ以上は言葉にならず、相原の嗚咽だけが薄暗い静寂の中を駆け抜けていった。


 真野はじっと掲示板を見つめていた。その表示がふいに変わった。苦虫を噛み潰したような表情で熊谷を促すと、熊谷も掲示板に視線を向けた。


 掲示板

 参加者 6/19

 脱落者 平松光良 大須賀英輔 江藤祐一 岡田朋子 瀬戸志穂 斉藤敦子 日比野陽介

      吉村功 朝比奈京子 稲垣翔 響静香 神谷樹 加納隆吾


 熊谷は小さく震えている。真野は少し迷う素振りを見せた後、呟くように言った。

「考えたくはないが……」

 熊谷が「真野さん!」と叫ぶようにして、真野の言葉を遮った。

「色々な可能性を考えることは、確かに大切です。でも、そればかりでは、大切なことを見落としてしまうんじゃないですか」

 真野は困ったような仕草を見せたが、言葉を選ぶようにして続けた。

「それが、俺の役目だ。疑うことが必要な時もある。信じるのが熊谷さんの役目だ。一緒にいれば、大切なことを見落とすこともきっとないだろう」

 熊谷は複雑な表情をしていたが、言葉は返さなかった。

「このゲームからは、基本的に一人では脱落できないはずだ。例外的に、死亡での脱落はあったが、そうでなければ、誰かが近くにいなければならないんだ」

 真野の言葉が終わるのを待っていたかのように、掲示板の表示が続け様に変わった。


 掲示板

 参加者 4/19

 脱落者 平松光良 大須賀英輔 江藤祐一 岡田朋子 瀬戸志穂 斉藤敦子 日比野陽介

      吉村功 朝比奈京子 稲垣翔 響静香 神谷樹 加納隆吾 相原夕貴 堀田美鈴


 真野と熊谷は、驚いたように声を上げた。

「相原さんまで……!」

「俺達以外で残っているのは……成瀬さんと19人目しかいない」

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