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壊れかけの絆  作者: リン
12/20

能力#5 【自然干渉】

 応接室から出た朝比奈は、吉村に声をかけた。朝比奈は相変わらず派手な印象だが、吉村の方も相変わらず目立った特徴が見られない。教室内には他の参加者の姿はない。

「予定通り能力を得られたわ。あとは、ゲームの終了条件を満たせば良いのね」

「朝比奈さん、もう、俺達二人でいいんじゃないですか。あの相原ってコも脱落させちゃったらどうです」

 吉村の提案に対し、朝比奈は掲示板を見ながら「そうね」と歪んだ笑みを浮かべた。


 掲示板

 参加者 12/19

 脱落者 平松光良 大須賀英輔 江藤祐一 岡田朋子 瀬戸志穂 斉藤敦子 日比野陽介


 扉が開く音に反応して、二人の視線がそちらを向く。入って来たのは相原ではなく、真野と加納、そして熊谷の三人だった。

「朝比奈さん達は二人か。相原さんは?」

 真野の問いに答える素振りは見えない。朝比奈と吉村が何かを相談していたかと思うと、吉村が手をかざした。その瞬間、教室内が眩い光で満たされた。真野と熊谷が目を押さえて蹲った。朝比奈は事前に目を覆っていたようだ。

「アンタらに恨みはないが、ここで脱落してもらおうか。能力者がいるなら申し出るんだ。そうすれば、命は助けてやる。言っておくが、俺に逆らおうなんて考えるなよ。今は光だったが、火だろうが雷だろうが、俺は何でも操るぞ」

 吉村の言葉に真野が舌打ちする。加納が前に出て、言葉を返す。

「随分勝手な言い分ですが、本気ですか? 本気だと言うのなら、私が相手になりますが」

「アンタも能力者か。いいぜ。どんな能力だろうと、俺に勝てるはずがないってのを思い知らせてやるさ」

 吉村に退く気はなさそうだ。真野と熊谷が心配そうに声をかけると、加納は振り返って「ここは私が」と笑顔で答えた。

「さて。丸焼きがいいか? それとも溺れたいか? どんな死に方がお望みだい」

「お好きにどうぞ。何をしようと、私には無意味です」

 からかうように言う吉村に対し、加納は余裕を持って答えている。その態度に、吉村の表情が変わる。

「これを見てもその表情を崩さずにいられるか、楽しみだな!」

 吉村が加納に向けて手をかざす。その直後、吉村の手から加納に向かって一直線に火柱が走った。

 真野と熊谷の叫び、そして悲鳴が響き渡った。悲鳴を上げているのは吉村だ。

「ちょっと! 貴方、何をしているのよ!」

 朝比奈が驚いた様子で吉村に言う。吉村の手は燃え上がっている。加納は何ともないが、余裕の表情は崩れ、呆気に取られているようだ。

 やがて吉村の手元から煙が上がり、炎が消えると、水が溢れ出した。

「くそっ! 何をしやがった! アンタ、能力を反射でもするってのか!?」

 真野と熊谷が驚いたように加納を見た。加納は、何も答えずに吉村を見据えた。

「だとすれば、もう勝ち目はないでしょう。考えを改めるべきではありませんか」

「調子に……乗るなよっ!」

 吉村が再び手をかざす。今度はその手が熊谷に向けられている。加納が慌てて間へ飛び込み、その直後、耳障りな音と共に、血飛沫が上がった。熊谷と朝比奈、そして、吉村の悲鳴が重なる。

「今のは、かまいたちか? アイツ、能力を全然扱えてないじゃないか」

 真野が呟く。吉村の手首から先は斬れて床に落ち、血の海に沈んでいる。

「手が、手が、俺の手が!」

「加納さんは反射などしていないわ。貴方、どうして自分に当たらないように出さないのよ!」

「手、手からしか出せないんですよぉ!」

 確かに、光も火柱も、かざした手から放たれていた。かまいたちは視認できないとはいえ、手から放たれたのならば、斬り刻まれたことも納得できる。

「ここまで使えないなんて……」

「この能力は朝比奈さんの指示で……!」

「能力のことではないわ。貴方が、よ」

 朝比奈は見下したように言い捨て、少し思案した後に言い放った。

「吉村さん! 貴方の能力の副作用は、手からしか発動できないことよ!」

 吉村が何かを言う間もなく、その姿は消えた。掲示板の表示が変化する。


 掲示板

 参加者 11/19

 脱落者 平松光良 大須賀英輔 江藤祐一 岡田朋子 瀬戸志穂 斉藤敦子 日比野陽介 吉村功


「加減をしたとしても、あまり役に立ちそうにない能力ね」

「良かったのですか? 私達の前で指摘などして」

 加納の言葉に、朝比奈はしまったという反応を見せた。しかし、すぐに態度を戻すと、はっきりと言葉を紡いだ。

「結構よ。もし今ここで私を指摘すれば、その方が同じ状況に陥るだけ。賢明な貴方ならそれもわかっているでしょう。それに……ふふ」

 朝比奈は真野に近付くと、言葉を続けた。

「私達は協力する仲間じゃないかしら。相手を脱落させるようなことはしないでしょう?」

「当然だろう? 今更何を言ってるんだ、朝比奈さんは」

 真野は不思議そうに返事をした。加納が慌てて言う。

「真野さん!? 彼女は吉村さんと共に、たった今、私達を脱落させようとしていたんですよ?」

「加納さん、何を言ってるんですか。危害を加えようとしていたのは吉村さんで、朝比奈さんがそんなことをするはずがないですよ」

 今度は熊谷が不思議そうに言った。加納は訳がわからないという様子だったが、朝比奈に向き直り、言った。

「随分と厄介な能力を得たようですね。しかし、いざとなれば、私は貴方を脱落させます」

 加納はそこで言葉を切ると、真野と熊谷を促し、教室を出て行った。

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