作者は中二病
~とある港~
「………………」
「………………」
「………………なあ、政」
「…なんだ?」
「…これは…、どゆこと?」
伊吹は目の前に広がる景色を眺めながら聞く。
ちなみに三人は病院から一番近くの港に行ったのだが、着いた先は、
「港は港でも『漁港』だよな、ここ」
「そうだけど?」
「………なんで来たんだ?」
「今回の誘拐事件には裏の組織が関わっていそうだと、そう俺の勘が告げていたんだ」
「…で?」
「事件の定番と言ったら港。それも誘拐なら海外に奴隷的な形で売り飛ばせばそこそこな報酬になる。だから海外に行くために飛行機は絶対に無い。ならば残るのは港しかないからな」
「…で、その結果は?」
「………………………………外した。ごめん」
・・・
「”お前は既に死んでい…”」
「やめってえええええええええええええええ!北斗〇拳だけは勘弁してくれええええええええええええ!」
「黙れっ!もう13時になるんだよ!誘拐されてから既に1時間は経つんだよ!『俺が絶対なんとかするぜ、コノヤロー!バカヤロー!(笑)』とか自身満々に言うから来てみた結果がこれだよ!」
「そんなこと言っても変わらない♪変えられない♪そんな俺、分かんない♪」
「帰れ!偽キ〇ービーは忍者の里に帰れ!」
「まま、伊吹さん。誘拐犯の居場所もわからないんですからこうなるのも仕方ないですよ」
黒岩がやむなく助け船を出す。
「しかしだよ、黒岩さん。このままだとまた無駄に時間をつぶすことになる…。マヤの期限は今日の17時まで。とてもじゃないけど…」
「そこなんだよワト〇ン君!」
「なんだ?今度はシャーロック・ホー〇ズの真似か?」
政を睨みつけるように見るが、お構いなしに続ける。
「何故、マヤにあんなに借金が課せられたんだ?」
「………確か、金融会社から電話がかかってきたとは言っていた。詳しいことは直接本人に確認しないとわからないな…」
「それにだ、なぜ4人を誘拐したんだ?しかも女子だけ。俺と伊吹も誘拐しようと思えばできたはず。だがしなかった。おかしくないか?」
「………………………確かに…。なぜ俺たちを残して行ったんだ?」
言われてみればそうだ。誘拐犯は満身創痍の伊吹を無視して健康な女子高生4人を連れ去った。しかも神宮だけを誘拐したと言ってきているのだ。
「…いまいち判らねえのは、なんで神宮さんだけ公開したんだ?」
「…一番マスコミとかが食い付きそうな人材だったんじゃね?」
「それは無い。現にマスコミとかに情報をリークしていないみたいだからな」
「でもさ、普通は騒ぎを起こして情報を入れやすくするとか、騒ぎに便乗して逃げ出すとかするものじゃないのか?」
「それもそうなんだが、結局は誘拐だ。騒ぎったってたかが知れてる」
「じゃあ警察の方から…」
「残念ながら警察の方は公開捜査をするつもりは無いそうです」
隣にいた黒岩が無線機で何かを聞きながら政より先に答える。
「どうやら馬門宮家の現頭領が公にすることを嫌がっているそうです」
それが”馬門宮家”の意地なのかプライドなのかは判りませんが…。と最後に付け足した。
「………だそうだ」
「じゃあ何で神宮だけを…?」
「それが判れば苦労しねえよ」
確かに。
「…とりあえず一旦病院に戻ろうか」
政が笑顔で提案する。
「はあ…そんな時間はねえって………ん?電話か?」
伊吹はズボンのポケットで振動している携帯を取り出して液晶画面を見る。
「…知らない番号だな…間違いか?」
振動を繰り返すスライド式の携帯の電源を押して通話を切る。
がしかし、すぐにまた同じ番号から電話がかかってくる。
「………ちっ。めんどいなぁ…」
面倒くさそうに子尾をしかめてから、やむなく通話ボタンを押し、電話にでる。
「はいもしもし?」
『おー、伊吹?なんか刺されたって聞いたけど大丈夫そうだね〜。あれだけ血が出てたのに死なないとは流石だね〜。今度私の術式相手にでもなるか?つか、成れ』
聞き覚えのある無駄に腹立つ声。そして理不尽な要求。当てはまる人物が脳裏をよぎる。
「…馬門宮先生………?」
『おお正解正解。割といい耳してるね、いぶっちゃん』
電話越しにカラカラと笑い声を立てる。
「…今どこにいるんですか?」
『学校だけど?』
「…神宮さんが攫われたことは…?」
『知ってるよ』
「…助けに行かないんですか…?」
『ヤダ。たるい。めんどい。給料分しか働かん』
「あんたそれでいいのかよ!娘が攫われたんだぞ!給料云々の問題じゃねえだろっ!なんとも思わないのかよあんたはっ!!」
あまりの能天気さに伊吹が怒鳴り声を上げる。
『…へぇ…ガキにしちゃあ言うじゃない…』
怒鳴り声に全く動じず、感心するようにケタケタと笑う。
『まあ、そこまで言うんだからそれなりの何かは掴んでんでしょ』
「っ…!」
『あれ?違うのかい?まさか場所すら掴んでないのかい?まあ、当たり前か。相手はぶっちゃけテロリストみたいなもんだしな』
「…確かに何も分かってませんよ…。場所も、勢力も、組織も…。でも、何もしないでいるより、少しでも手がかりを探さないとそこまでたどり着く訳無いんですよ…」
『かっかっかっかっ!おもしろいことを言うねえ…。確かに小さな手がかりを辿って行けば0.0000000000001%くらい当たるかもしれないからね。ま、どのくらい時間がかかるかわかんないけど』
「そのわずかでもたどり着けるというのなら…やるんですよ…。絶対に諦めちゃいけないんですよ…。あの時、約束を…したから…!!」
伊吹の胸に熱い感情がこみ上げてくる。
自分の決めた”我”を最後まで通す。それが伊吹の最大の原動力であり、同時に彼の強み。
だからこそ彼は政が印刷した資料の半数を一人で調べ上げた。
もちろんこれは誰も気づいていないし、伊吹自身も気づかずにやってのけていた。
それが彼。『上野 伊吹』というただの16歳の男子高校生なのだ。
『まあ、せいぜい頑張れいぶっちゃん。…そうだな、そんな熱い思いのあるいぶっちゃんに一つだけヒントを上げるよ。”SB-751”』
「”SB-751”…?」
聞き覚えのない単語に気を取られる伊吹。
『んじゃ』
「先生それは…っ!?」
プツッ…
それだけ言うと馬門宮教師は電話を一方的に切った。
「………………………なんなんだよ”SB-751”って…」
「さあな」
隣で聞いていた政も首をかしげる。
「私もさっぱりです…」
黒岩も訳が分からないといった顔つきで肩をすくめる。
「なんかの番号かな…」
「さあ…。つか、事件と関係あるのかな…」
「………いや、あの状態で関係無いことは言わない………と思う…」
「いや、わからんぞ。なんつったってあの傍若無人で慢心で理不尽な教師だ。もしかしたら関係ないかもしれないしな」
政が端的に特徴というかほぼ悪口をズバズバと言う。
「…確かに…」
さすがにフォローしようかな?と思ったが、あの笑った顔を思い浮かべた瞬間、諦めた。
単純にフォローする気にもなれなかっただけだが。
「しかし、ほんとになんな…っと、電話か…」
黒岩が胸ポケットから携帯電話を取り出し、その場を離れる。
「…伊吹、そういや言っていなかったが、今朝から学校にマコッちゃん来てないぞ…」
政が耳打ちするように伊吹に言い聞かせる。
「………………それが?」
…やはりまだ昨日のことを根に持っているようだ。
でなければここまで不機嫌な返事は返さないだろう。
「…お前まだ根に持っていたのかよ…いい加減許してやったらどうなんだ?」
「…政には関係ねえだろ」
「関係ないなら俺は言わないさ。けど伊吹。余りに自己中すぎると友達を減らすぞ?」
「…自己中はあっちの方だろ…」
「いや、お前もだろ。ただでさえマヤの事情に首ツッコんで、おまけに刺されて病院沙汰になる。はた迷惑もいいとこだよ」
「……………………………」
伊吹が政を睨みつける。
「一旦落ち着いて冷静になろう。なっ?」
「…お前はいつから俺の保護者になったんだよ…」
「保護者っつーよりも、なんかもっと別のもんだと思うぜ」
「………ちっ…」
伊吹は不服そうに政から目線を逸らす。
「…はい…はい…わかりました…。政さん、仁真さんから電話です」
「あ?俺?」
何の用事だろうか。
自分も一応携帯電話くらい持っているのに何故、わざわざ黒岩の携帯にかけたのか。
一抹の不信感を持ちつつ電話に出る。
「もしもし?親父?」
『政か?いいか、これからいうことを一字一句聞き逃さずよく聞け…』
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伊吹はわかっていた。
自分がどれだけ傲慢なことを言っているのか。
どれだけ身勝手な行動をしているのか。
どれだけ自分が素直では無いことも。
あの時、真琴が言っていたことは事実だった。
自分にはマヤを助ける程の財力もなければ、権力もない。ただの一般的な普通の高校生に過ぎない。
だから強がって見せた。自分には出来るはずだと。助けられるはずだと。
でも実際は、政に助けてもらって、周りのみんなにも助けてもらって、挙句の果てには警察沙汰、病院沙汰。それを教師に助けてもらっている。
足手まといにもほどがある。
まさか自分がここまで無能なんて思ってもみなかった。
正直、自分自身に腹が立つ。
………………このまま政達とともに行動していいのだろうか…
足手まといで無能な自分が一緒に居たら迷惑なのではないのだろうか…
………………自分はこの事件に関わって良かったのか?
「マヤを助けたい」その思いだけでここまで来たのだが、自分にマヤを助けていい資格など無い。
そもそも自分が病院などに運ばれなければこのような事態に発展しなかったのかもしれない。
………………やはり外されるべき人間は外されなければいけない。
………………………今更何を言っているのだろう。
勝手に取り付けた約束だろうと、約束は約束。それを自ら破るなど自分自身が納得しない。
…ならばやることは一つ。
ポケットから携帯を取り出して電話をかける。
「…もしもし…マコッちゃん?」
『…あら…?意外とかけてくるのが遅かったわね。偽善者さん』
電話の向こうで斉藤 真琴はとてもおかしそうにやんわりと微笑んだ。
……………………この小説の方向性どこに行った!?
いや、確かに作者はバトル系好きですよ!同時にコメディも好きですよ!
ジャンプは毎週ちゃんと読んで………………………そういえば最近、なんだかんだで読んでないじゃん…
しかし、もうここまで来たら突っ走るしかねえ!
と、熱血漫画を最近読んでその影響力に汚染された作者でした。