誘拐は犯罪です
長いです。ええ長いです。それともこれくらいが標準ですかね?よくわかんないです。
それから「あと3~4話で終わる」と言ったな。
あれは、「嘘だッッ!!」
………ここはどこだろう…?息がしにくい…。何かで視界が覆われている…。手首が何か紐のようなもので吊り上げられるようにしっかりと固定されて動かない…。足には鎖のようなものが巻かれて確実に固定されていて、少し身じろぎするたびに小さくジャラ…。と音を立てる。………………怖い………。
今、何が起こっているのか全く分からないのが怖い。
何故、自分は仁王立ちするように拘束されているのか…。記憶をたどっても何も心当たりがない。確か………、伊吹君のいる病室で寝てしまって…、気づいたらこうなっていた。何故?どうして?なにが?どうなって?なんで?どうやって?
声を出そうとして、口の違和感に気づく。
口にガムテープが貼られていて、開くことすらままならなくなっていた。
息がしにくいのはこれが原因だった。
「ムーーーッ!ムガッ!ンーンー!」
とりあえず声を発してみる。
「ん?起きましたか」
聞き覚えのない男の声。
「ン!?」
「あー、はいはい。ちょっと待ちなさい………」
男が顔を覆っていた物を外す。
「ムッ!!?」
いきなり差し込んだ光に思わず目を閉じる。
と、同時に口のガムテープがはがされ、まばゆい光の中から声がした。
「おはようございます。『馬門宮 神宮』さん。気分はどうですか?」
「………………最悪じゃ…」
かなり怒り気味に、不愉快そうに返答した。
~病院~
「…娘と、3人の女の子が行方不明ですか…」
「………ええ…。神宮さん、静さん、昌子さん、マヤさんの行方がわからなかいのです」
宮野父の証言によってようやく事件の大まかな内容が掴めてきた仁真は難しそうな顔をして考え込む。
一応、付け加えだが、神宮が誘拐された事を宮野父はまだ知らない。
「どこに行ったのかご存知ありませんかね?」
「知っていたらすぐに私が告げるでしょう。もしくは電話が来るはずです。ここまで大騒ぎになっているのですから」
「ふむ………。一理あります…」
「それに…」
「それに?」
急に宮野が黙り込む。
「…宮野さん?」
宮野は長い間を置いてようやく話し出す。
「実は………………」
~~~~~~~
なんてことだろう…。
何故、宮野がそんな重大な事をすぐに告げなかったのは不思議だが、それよりも、
睡眠ガスが撒かれていたのをなぜ全員気づかない!?
急ぎ足で伊吹の病室に向かい、荒々しく扉を開ける。
「鑑定士!鑑定士はいるか!?」
仁真のいきなりの怒声に部屋にいた全員が驚き、行っていたすべての作業を停止し、一斉に仁真の方を向く。
「鑑定士は居るのかと聞いている!誰か答えろ!」
「あ、はっ、ハイ!私がそうです!」
20代中ごろの男性が手を挙げて立ち上がる。
「お前か?」
「はっ、ハイ!!」
仁真の圧力におされて少々半泣きになりかけていた。自分が何かミスを犯したのか、何かとんでもないことを知らないうちにしてしまっているのか、頭の中でぐるぐると思考を回転させながら。
「総動員で、ここの部屋の床、天井、壁、ベッドのシーツに至るまですべて徹底的に調べ上げろ!今すぐに!」
「はい!」
「分かったらさっさと行け!!」
「はいぃっ!!」
言われた若い鑑定士は物凄い勢いで飛び出して行った。
「…署長。まだ爆発した部屋が…」
近くにいたベテラン風な刑事が不満そうな顔で問う。
「あそこはもういい。どうせこっちの行方不明の事件が解決したら分かる」
「はぁ…」
納得がいかないような表情を浮かべるが、自分よりも立場は上なので、渋々承諾する。
「…ん?ガキどもはどうした?」
「え?ああ。今さっき、病院の屋上に行きましたよ」
「そうか。…なにか分かったら俺を呼べ」
「はい…」
そう言って仁真は病室を後にした。
~屋上~
「………………おかしい」
「なにがだ?」
「見てみろ。アレを…」
政が病院前に止まっているパトカーを指さす。
「ん?どれどれ?」
「あれだよあれ」
「どれだよ?」
「あれだって」
「爺かお前は?『アレ』じゃ分からねえだろ」
「俺が『アレ』だっつったら『アレ』なんだよ愚民がっ!」
「…お前いつからそんな言葉を吐くようになったんだ…?」
「んなこたあいいんだよ!あそこの地面を見てみろ…」
再びパトカーが止まっている地面を指さす。
「あそこの地面?警パトが止まってるだけだろ?ガキじゃあるまいしそのくらいではしゃぐなよ。それともあれか?親父に殴られて頭が幼稚k…
スイマセン!ごめんなさい!マジでごめんなさい!訂正するから!その『サトシ』って書かれたバットだけはしまって!惨劇なるから!雛〇沢とリンクしてしまうから!」
「ちっ…しょうがねえ…だったらこの『白金の腕〇』で俺の召喚じゅ…」
「どこのだっ!どこの学校からパクッてきやがった!?」
「パクッた?失敬な。『その腕のやつ買わせてくれ』って言ったら快く売り出してくれた通称、”凄くバカなお兄ちゃん”が居ただけだ」
「………………ごめん。取り敢えず謝るからもう帰っていい…?」
「それはできねえ相談だな」
背後から男の声。
「親父…来たのか…」
「ああ。お前らの様子を見に来た」
政の父―――宇尾間 仁真はゆっくりと二人に近寄る。
「宇尾間のオッサン。さっき言った言葉はどういうことだ?」
伊吹が不信感をあらわにする。
「どういうことも何も、そのまんまの意味さ。一応、お前らも『容疑者』っつー、括りなんだぞ」
「…あー、確かに…」
政が空を見上げて呟く。
「あ、すまん。間違えた。お前ら二人、『被疑者』だった」
「「・・・はあぁっ!?」」
二人が同時に素っ頓狂な声を張り上げる。
「だってコピッたろ。この書類」
仁真が手元にあるA4サイズの資料を懐から出す。
それを見て政が、ため息をつく。
「ばれたのか…」
「まあそうだろうな。先ほど森脇先生から電話があってな、『バカ二人が 善 意 で起こしたことなので、今回だけは大目に見てやってください。』だそうだ」
((… あ の く そ きょ う し ~ っ !))
一応、二人の中では、ばれたとき用のごまかすための対策は考えてあったのだ。人のあげ足をとるような無茶苦茶な言い訳だったが…。しかし、全て徒労に終わってしまった。先ばれほど一番言い訳が聞かない事はない。
「…確実に『停学』だな」
「…ああ。…つか、それすら通り越して『退学』とか…?」
「いや、良くて『退学』だろ?」
「…確かに………はぁ…」
二人がため息をついた時だった。
「なに言ってんだお前ら?」
「いや、退学とかさ、普通、ないからさ…」
「もうちょっとあのクラスでバカなことしたかったなぁ…って思うとさ…」
「退学どころか停学にもさせてもらえねえぞ?」
仁真のとてもあっさりとした返し。
「「………………ハイッ??」」
そんな、”仁真のとてもあっさりとした返し”に二人がピタッと硬直する。
「たかだかA4の資料をうん百枚刷った程度だ。全部確実に処理をすれば問題なんかにならん」
さらに、物凄いことをさらっと言う父親。…逆にそんなのでいいのだろうか。
「それから、森脇指導員が『こんなことをする奴らは俺が直々に指導してやらんと気がすまん』ってヤル気になってたからな。覚悟しといた方がいいぞお前ら」
「…は、ははは…よ、よかったのか?」
「さ、さあ…」
かなり引きつった笑いしか出てこなかったが、とりあえず目の前の危機は去ったようだ。
…だがこの事件の後、二人は今の時間が平穏に思えるほどの恐怖を味わうことになる。しかぁーし!今は関係ないのでスルーさせてもらおう。異論は認めん!!by作者
「んなことより見つけたのか?」
仁真がいきなり真剣な顔つきになる。
「ん?ああ。読み通りだったよ。しっかりタイヤの跡を消した”跡”が残ってたよ」
政が薄ら笑いで地面に向かって指をさす。
「ふむ…。しかし、消されているとなると厄介だな…」
「いや、ご丁寧にわざと一か所だけ後を残しやがった。わざとじゃなかったら、慌てていたのか、単なるマヌケだ。ま、ここまで手際よく4人を攫ったんだ。後者の線は薄いけどね」
「確かに…」
「ああ」
クククク…、と親子揃ってとても楽しそうに笑う。
伊吹はいつも思う。絶対にこの親子を敵に回してはいけないと。
政も、その親父も、職業柄(?)なのか異常なほど”勘”が良すぎるのだ。どこかの名探偵並に。
しかも大体決まって事件がらみ。というか、事件でしか発揮しない。
昔、政と仁真の前で『探偵でもやったら?』と聞いたこともあったが、
「「探偵の勘なんか任せられるかっ!!」」
いや、あんたらが言うな。ってあの時ツッコんでたら多分、二人にはっ倒されただろうな…と、伊吹は懐かしげに空を見上げ、名も知らない誘拐犯に合唱した。
「署長ーっ!どこですか?署長ーっ!」
階段から男の声がした。
「…おっと部下が呼んでるな…。政、車を一台、部下に手配させるから、お前の好きなように指示しろ。そうすれば多分この事件、すぐに片が付く」
「わかった。…けど、いいのか?そんなことして…」
「んなもんお決まりのアレだ」
「…ああ、あれね」
「「上にばれなきゃ問題ねぇっ!!」」
「…問題大アリだろ」
もちろん伊吹のツッコミは流された。
~某所~
「…本当に最悪じゃ…」
目の前の男を睨みつけるように神宮は吐き捨てる。
「そうでしたか…。それはすいませんね」
男がニヤッと微笑する。
「…ここはどこじゃ?パッと見、どこかの倉庫っぽいのじゃが…」
神宮は辺りを見渡してから推測し、判断した。
「まあ、正解ですよ。”馬門宮家のご息女”さん」
「…まだワシには、ちょいとその肩書は早すぎるんじゃがの…」
「いえいえ、ブランドものには誰しも食い付くものですよ」
「ブランド?はっ!笑わせる…。既に衰退の道を辿っている一族になど誰が食い付くものか」
「そんなことないですよ。現にこうしてあなたは誘拐されていますから…」
そう言った男の顔には商売用の笑いが仮面のように貼り付いていた。
「山下さん。客がお呼びです」
後ろの簡素な鉄扉が開き、神宮の目の前にいる男を呼ぶ。
「む、分かった。では神宮さん。また後で会いましょう」
”やました”と呼ばれた男はうやうやしく頭を下げ、その場から立ち去ろうと踵を返す。
「待て!貴様らの狙いはなんだっ!?攫われたのは私だけかっ!?」
「理性的ではないですね神宮さん。…私がそれを言うとお思いですか?」
「…っ!………」
「………まあ、少しだけなら教えてあげましょう…。…一名を除き、全員同じ場所に置かれている…かもしれません」
「…不確定な証言じゃな…」
「言ってくれたことだけでも感謝してほしいものですね。教育が成っていない。後で直々に私が再教育を行う必要がありそうです。…が、今はそんなことをしている場合じゃ無いんでね。お客を待たせるのはあ私の性分じゃあない。…ので、せいぜい楽しみにしていてください…」
そう言って山下はその場を後にした。
~病院~
「…そうか…。やはり市販のものを使っていたか…」
「ええ…。鑑定の結果、『アモバン』と呼ばれる超短時間用型睡眠導入剤に含まれる『ゾピクロン』と言う薬物を使用した睡眠ガスではないかと結論に達しました」
先ほどの若い鑑定士が仁真に報告をする。
「市販のものを数個買って粉末にし、そこの空調から流し込んだ。…そんなところか」
「はい。近くの薬局でも確認が取れています。…『アモバン』は摂取量10ミリグラム以下なら副作用もかなり軽いですし、とにかく安価で入手しやすい。また、すぐに眠らせるには効果的ですからね。病院で使われてもなんらおかしくありません。署長が言わなければ放っておくとこでした…」
「それより、買ったやつの人相は?」
「ちゃんと聴いてあります。30~40代で、背丈が160~180。中肉中背の黒いワイシャツ、青のジーパンを穿いた不愛想な男だそうです」
「…買った後は…?」
「近くの車に乗って去りました。白い車で、ナンバープレート『(ピー)』の『(ピーピー)』です」
「………うん。ごめん。俺の耳が悪かったみたい。ちょ、もう一回言ってくんね?」
「?…はい。わかりました。えーと、『(ピー)』の『(ピーピー)』です」
「………悪い。もう一回」
「だから、『(ピー)』の『(ピーピー)』です!」
「………………………………」
「………………………………」
「分かるわきゃねえだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「ちょっ!?署長!?なにどこかの御大将みたくなってんですか!?つかこのツッコミ、ター〇エーガンダム見た人しかわからないでしょ!つかなんでター〇エー!?」
「スパロボZの『破〇編』で『月〇蝶』が搭載されて無かったんだよおぉぉっ!!」
「自重してください署長!つか、なんでそんなに指をバキボキ鳴らしてんですか!?」
「ある人がムカつくから」
「誰が!?」
「作者」
「作者逃げてえええええええええええええ!超逃げてええええええええええええ!!」
「作者…。ガンダムがそんなに好きかああああああっ!!」
”大好きだあああああああああああああ!!特に『新機動戦記』あたりがああああああああああああああ!!”
俺はファーストが好きだああああああああああああああ!!それ以外は認めんっ!!
「黙れ!ガンダムを全て楽しめてこそ真のガンダムファンだろうがあああ!!」
”確かにそうだああああああ!けど、許容範囲を超えた奴は無理だあああああああああああああ!”
ファーストが(ry
「うおおおおおおおおおお!」
”おおおおおおおおおおお!”
ほおおおおおおおおおお!
「………………………もー、無理。ツッコミ切れません………。あ…、宮野さん。」
「ん?どうした?」
「ええ。あの三人何とかなりませんかね…?」
「うーん…。あ、そうだ!おーーい、幸枝ーーー!新しい木偶が…」
「どこ?木偶どこ!?」
「うおっ!?奥さん来るのはやっ!?」
「…『木偶』とか『練習相手』とかに過敏に反応するんだ………。あー、幸枝。あそこの三人が新し…」
「よっしゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
うわっ!なんだおま…ぎゃあああああああああああああああああああああ!!
”なっ、ナレータあああああ!って!宮野 幸枝さん!?どうしてここn…ぷぎゃあああああああああああああ!!”
「なっ!なんだこいつは!?連邦のモビルスーツはばけもn…うぎゃあああああああああああああ!!」
「………宮野さん、ナレーターと作者は誰が代わるんですか…?」
「…あ、考えてなかった…」
「署長!!大変です!!」
(サッ)ドアをけ破る勢いで一人の刑事が入ってくる。
「復活早っ!?」
「(サッ)どうした!?何があった!?」
「署長も!?」
そんな若手の鑑定士のツッコミなど無視して話は進む。
「実は、例の『(ピー)』の『(ピーピー)』の車なんですが…、『黒ヒョウ』というメンバーの車らしいです!」
「『黒ヒョウ』か…。厄介だな…」
「…仁真さん。『黒ヒョウ』ってなんなんですか…?」
宮野が真剣そうな眼差しで問いかける。
「ああ…、私設の武装組織で、裏の仕事を多くこなしている厄介な相手だ…。トップの名は『山下 礼次。密輸はもとより、薬売、窃盗、殺人、人身売買、銃の密売ect…と、なんでもこなす組織…通称、『黒ヒョウ』」
「…まさか!娘もそいつらに…!?」
「………こういう事態になった以上、黙っているわけにもいかないな…。宮野さん。その通りです。娘さんは多分、その組織に連れ去られた可能性があります」
「そん…なっ…」
宮野がガクッ、とうなだれた。
「そんな…昌子…が…」
「け…、刑事さん!娘は…娘は助かるんですか!?」
すぐ近くで聞いていた宮野母が血相を変えて食って掛かる。
「…現状ではわかりません」
仁真は全く動じずに返す。
「そんなっ!助けるのがあなた達警察の役目でしょう!?」
「要求が何も来ていないんですよ。昌子さんに関することは」
「じゃあ…」
「…今はまだわかりません。もしかしたら後から何か要求が来るのかもしれません」
「後っていつですか!?」
「それもわかりません」
「何か一つぐらいわからないんですか!?」
今にも殴りかかりそうな勢いで仁真に迫る。しかし、仁真は冷静に対処する。
「私たちの知っている情報はこれ以上ありません」
「でっ、でもっ!!」
「…幸枝…もういい…」
うなだれていた宮野父がゆっくりと立ち上がる。
「あっ…あなた…」
「私は…昌子が帰ってきてくれるならそれでいい…どんな形であろうと…」
「あなた…」
「………この人の言うことに嘘はない…。今は分からないことだらけなんだ…。だから、こういう時は、運が悪かったと諦めるしかない…もう、どうすることもできない…」
「………そんなっ…あなた最低よ…子供の心配をできない親にならないってあの時約束したでしょ!!」
「俺だって諦めたくなんかない!けど、どうすればいい!?知識もない!才能もない!運動神経だっていいわけじゃない!喧嘩なんてしたこともない!痛いのは嫌だ!死ぬのだって怖い!………………教えてくれ幸枝…こういうとき俺はどうすればいい?どうしたら昌子を救ってやれるんだ…?」
「…………………………」
「………ごめんな…幸枝…こんなふがいない俺を許してくれ…何もできない俺を…」
「…うっ………うわあああああああああああああああああああああ!」
必死でなくことを堪えていたのだろう。幸枝はその場で泣き崩れてしまった。
「………………幸枝………………」
絶望し、どうすればいいのかわからない。なにをしたら自分の娘は生きて帰ってくるのだろうか…。
大切な大事な娘。でも、それが奪われてしまった。そんな時、どうすればいいのだろうか…。
…祈るしかない。…無事に帰ってきてくれるように………。
仁は、とても悔しそうにただ、娘が無事でいてくれるように祈るしかなかった。
「………………が、今回は相手が悪かった…」
仁真がぼそりと何かを呟く。誰にも聞こえないように。
「………………………え?」
何かを言ったことに気づき、宮野父が顔を上げた時、仁真は手に無線機を持ち、大きく息を吸って…
「…総員戦闘配備イィィ!!おっぱじめるぞゴラあぁぁあああっ!!俺たちに喧嘩売ったことを後悔させてやんぞおらあああぁぁ!!」
そう叫んだ。
『おっしゃああああああああああああああああああああああああああああああ!』
無線機を通して伝わった熱意が、無線機を通さずして返ってくる。警察としては疑いたくなるような光景に唖然とする宮野夫妻。
しかし、これが宇尾間 仁真を筆頭とする彼らなりの気合の入れかたなのだ。…方向性は少し間違ってはいるが…。
しかし、これこそが彼らとしての”本気”なのだろう。
そしてそれは、その熱意は、息子にまで遺伝した。
~病院の駐車場~
「…宇尾間 政さんですね」
黒いスーツを着込んだ20代位の若い男が礼儀正しく丁寧に頭を下げる。
「私は、仁真の部下の黒岩と言います。よろしくお願いします」
あまり他人との関わりに大した抵抗のない二人だったが、黒岩に対して多分初めてとなる”不愉快さ”を感じた。
「…宇尾間 政だ…」
「…上野 伊吹です」
二人は黒岩の丁寧さに不信感を抱きつつも、一応挨拶は返し、促されるように黒いミニバンの後部座席に乗り込む。
「仁真さんからはそこら辺をドライブして来いと聞いています。どこまで行きますか?」
「そうだな………ここから一番近い港にでも行ってくれ」
「わかりました」
快く返事をし、車のエンジンをかけて発進させる。
「………………」
「………………」
「………………」
病院を出る。
「署長からはいろいろと話を聞いております。なんでも借金を背負った女の子を救うとか」
「………………ああ…」
「………………ハイ…」
左折。
「………あまりそう固くならないでください。こちらまで気が滅入ってしまいます」
「………………ああ…」
「………………はい…」
信号で止まる。
「………………」(…なかなか会話が続かないな…。どうしよう…)
「………………」
「………………」
車をまた発進させる。
「………………」
「…黒岩さん」
急に政が声をかけた。
「はい。なんでしょう」
「あんた…。何者だ?」
政が訝しげな目つきで問う。
「…署長の部下ですが…」
「いや、違う」
「…そう思う理由を聞きたいのですね…」
「簡単なことだ。あなたからはタバコの臭いがしなかった。私たちを出迎えた時もタバコを吸っている様子は見られなかった」
「…嫌いなので吸っていないだけなのですが…」
「だとしても、その年季の入ったスーツから臭いが全くしないのはおかしいね」
「………」
「スーツや洋服、どんな着るものにだってその服独特の臭いはするもんだ。その人の体臭、職業上付いてしまう臭い、クリーニングした服だって例外じゃあない。でもあなたからは微かなバラの臭いがする。自分でつけたとしても、親父の現場にそういう香水はタブーだ。親父の部下ならそれを知らない訳がない」
「…香水一つでそこまで読むとは…さすが仁真さんの息子ですね」
ふふっ…、と微笑みながらポケットに手を入れる。
「…何がおかしいんだ…?」
政が不審そうに黒岩に問うと、黒岩はポケットの中から小さい霧吹きを取り出す。
「仁真さんから渡されました。これを付けて丁寧にあいさつすれば信用されないと」
「…なんでそんなことを?」
「半分は自分の息子と勝負するため、もう半分は面白そうだからって言ってましたね。仁真さんらしいって言えば仁真さんらしいですが、やられる側にもなって欲しいものです。…とりあえず信用してください。じゃないとちょっとここに居ずらいです」
「…分かったよ」
政が諦めたように差し出された香水を受け取る。
「はぁ…親父のヤロー…こんな時にでも遊ぶとか馬鹿じゃねえの?」
「ホントですよ。…でも私も政さんの実力が知りたかったんで良かったんじゃないですか?」
「ケッ、親父に負けたことが少々腹立たしいが…まあいっか。後で仕返しすれば。…黒岩さん、とりあえず無線に常時繋いでおいてくれ。すぐに情報が入るだろうし…」
「はい」
そして、黒岩が無線をつないだ瞬間だった。
『…総員戦闘配備イィィ!!おっぱじめるぞゴラあぁぁあああっ!!俺たちに喧嘩売ったことを後悔させてやんぞおらあああぁぁ!!』
と、地響きのような怒鳴り声に伊吹(空気)はびっくりして耳を塞ぐが、政と黒岩は、
「「おっしゃああああああああああああああああああああああああああああああ!」」
つって、テンションMAXになっちゃいました。
「お二人さん!しーーーっかりと掴まってなぁ!行先は”ここから一番近い港”!信号がない限りノンストップで行くんで四露死苦ぅ!」
「上等じゃああああ!!言ったからにはワレ減速したらどタマぶち抜くぞコラァ!!」
「ちょっ!お前ら!どこかの暴走族じゃねーんだから!つかキャラ変わり過ぎいぃっ!?」
伊吹が言い終わらないうちに黒岩がアクセルを思いっきり踏み込んだ。
それまで時速40キロ程度で走っていた車が、100キロ近くまでスピードを上げる。それと同時に車についていたサイレンがけたたましく鳴り響く。
「黙っとれ。舌ぁ噛むぞ」
「ほうかんたはほけえ!」(訳※もう噛んだわボケェ!)
「黒岩さんよぉ!もしかして昔、族やっとったかぁ?」
「おい!はさ!なんへおはえおおはかへんになってんはよ!?」(訳※政!なんでお前大阪弁になってんだよ!?)
「高校時代にちょいとやんちゃしただけでさぁ政のアニキィ!アニキこそ、その口調は一日で付くもんじゃねえだろ!?」(伊吹スルー)
「これは半分親父譲りだ!昔はよくチンピラの現場に行かされてたからなぁ!それと伊吹!これは大阪弁やない!強いて言うなら”任侠弁”じゃああああああっ!」
「知らねーよ!なんだよ任侠弁て!?聞いたことねーよ!つかお前よく今まで死なずに済んだな!」(痛みが引いた)
「漢にゃあ通さなきゃならねえ”仁義”っつーもんがな…」
「言わなくていい!ああ調子狂うなあっ!もうっ!」
ハイスピードでサイレンを鳴らしながら一般道を駆け抜ける黒のミニバンは、はたから見たら暴走車に見えなかった(もちろんスピード違反だが、政いわく「ばれなきゃいい」)そうな…。でも、ちゃんと赤信号では止まっていました。
良い子の皆はちゃんと交通ルールは守りましょう。
~某所~
「…山下さん…。なぜあの女だけを隔離したんですか?」
部屋の外で待機していた、雑魚が山下に問いかける。
「ああ。あいつは腐っても『巫女』だからな。全員まとめて置いておくと、何をしでかすか分かったもんじゃない。だからあいつだけ別にしたのさ」
「へえ~。さすが山下さん。頭の良いお方だ」
「………ああ…」
(媚を売れば上にでも行けると思っているのか?この雑魚は…)
山下はこの裏の世界に入り込んでから分かったことがある。
信用してはいけない。相手の弱みに付け込む。嘘は当然。使え無い奴は切り捨てる。雑魚は必須。他人を利用する。金を弱い奴から巻き上げる………。こうして自分はここまでのし上がってきた。
サラリーマンなどという平凡で変化のない愚鈍な世界を切り捨て、生きるか死ぬかのリアルな非凡の世界に飛び込み、見事に成功したのだ。他者には真似できないような偉大な成功を。
裏世界の絶対的な地位を築き上げ、日本各地を回ってきた。そして今、自分は全国的に名を轟かせている。
―――『黒ヒョウ』―――
そう呼ばれ始めたのはいつだっただろうか…。悪い気はしない。むしろ最高である。まるで自分に畏怖が込められているようで陶酔しそうだ。
…しかし、警察は思っていたより全員無能だった。ちょっとボロを出したように見せかけるだけでまんまと食らいつく。それがフェイクとも知らずに。
ちょろいものだ。そして、あまりにも滑稽。楽しくて楽しくて仕方がなかった。だからこそ止められない。快楽に近いものだと感じることもあった。―――が、それよりももっと充実した快楽。それは―――
「おい、お前」
「はい?」
ガッ!
山下は目の前にいる”雑魚”の後頭部を殴りつける。
「ギャッ!?」
殴られた勢いでそいつは転倒する
「媚売りゃあ上にでも行けると思ったかカスが」
―――そう”理不尽な暴力”。これほど毒素が強く壊れそうになるくらい楽しい最高の”薬物”はそうそう無い。
「媚、売る、くらい、なら、からだ、でも、売って、少しは、稼げ、カスが」
ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!
「あぐっ!げふ!おごっ!があっ!ぐえっ!」
殴るたびに短く悲鳴を上げ、5発殴ったところで床に崩れる。
「何寝転がってんだドカス。さっさと…立てやぁっ!」
足を振り上げて靴で腕を思いっきり踏みつける。
ごきぃ・・・
骨が折れる嫌な音。
肘と手首の間がありえない方向に曲がる。
「ひぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
悶絶して踏まれた腕を押さえて転がりまわる。
「あー、うっせえ。そんなに痛いなら楽にしてやるよ」
山下はそう言って懐から黒い塊を取り出して、とても当たり前のように標準を合わせ、至極当然のように引鉄を引いた。
たあぁーーーーん…
「…ほら。楽になった」
黒い塊から放たれた弾丸は寝転がっている”雑魚”の頭蓋を軽々と貫通し、コンクリートの床に穴をあける。
「山下さんっ!どうし…なんだこれはっ!?」
銃声を聞きつけてまた”雑魚”がやって来た。
「ああ。こいつが俺の命を狙ったんでな、軽くねじ伏せて殺しておいたのさ。悪りぃけど処理しといてくれ。お客が俺を待ってるみたいなんでな。遅れるのは俺の性に合わん」
「わかりました…。片づけておきます」
「ああ。頼んだ」
こうしてまた一人”雑魚”が減った。が、所詮”雑魚”は”雑魚”。いくらでも湧いてくる。そう…。いくらでも…
「くくく…。あはははは…。あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
一人誰もいない長い廊下で山下の笑いがこだました。
それはとても楽しく、凄く嬉しく、既に狂っていた。
〜病院〜
「………………」
「…あの署長?」
「………………………」
「署長?」
「………………………………」
「署長っ!」
「…んっ?なんだ?」
「先程から何を考えているんですか?」
「あ、ああ………。これだよ」
バサッ、とA4サイズの資料を机に置く。
「…これは…?」
「俺のガキがかき集めた名字に『松下』とある金銭関係の詐欺被害者、過去10年ぶんのデータだ」
「こんなに………?」
そう言って若い鑑定士は一枚の資料を手に取り眺める。
紙の端から端までびっしりと被害者の家族構成、年齢、住所が書かれていた。
「ものすごい数じゃないですか!?こんなに!!なんのために?」
「それがな…、松下 マヤって娘が多額の借金をいきなり背負わされたらしく、この中から見つけようとしていたらしい。これはその中のほんの一部なんだ。まだあと家に大体50枚。学校に約150枚位あるらしい」
「……………はっ…??」
手に取った資料が手からするり、と落ちる。
「しかもクラスの全員を巻き込んだらしい。全く…何考えていやがんだか………」
「いやいやいや!それよりヤバくないですか!?これ確か個人情報ガッツリ入ってますよね!?」
「まあ、ばれなきゃ大丈夫だから」
「そういう問題ですか!?」
「…まあ………そんなことは置いといてだな…」
「置いとかないでください!!」
もうダ〜メだこれ…。と思っている時だった。
「この資料を見て気づいていろいろと調べたんだが、…実は伊吹のクラスに『松下 マヤ』って言う人物は居ないんだ」
「………えっ!?」
若い鑑定士が困惑した表情を見せる。
「え?で、でも、彼らはその子の………」
「1週間前、イギリスのアルプス山脈の中腹で起きた、でけえ旅客機墜落事故。あれで乗客全員死んでいる。その乗客リストに『松下 マヤ』の家族も一緒に載っていた。親戚の遺族に今朝、確認が取れた」
「なっ………!?」
どういうことなのだろうか。
4日前の入学式には居たので(伊吹から聴取)彼女はたった3日で日本に帰ってきていることとなる。だが、事故があってから3日間では日本に帰ることなど”物理的に不可能”なのだ。もし仮に事故で死なずに済み、怪我がなく生きていたとして、事故現場ですぐに救助されたとして、検査などをして何も問題もなく空港にまで移動し、日本に帰る。そこからまたここの学校まで移動する。一番これが最短なのかもしれないが、たった3日でできる訳がない。
では彼らが会っていた、調べていた、関わっていた『松下 マヤ』は一体何者なのか。
「…どうするんですか署長」
「………取り敢えず、政たちには内緒にしとけな。もし言ったら…」
「…わかってます」
病院で発覚したこの事実はほんの数人だけに伝えられた。もちろん伊吹たちには伝えられなかった。
すいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいません!!!
予定はへし折れるものです。折れないように気をつけていたんですが、割とすぐにへし折れました。ほんとにスイマセン!
こんなバカ作者をどうかこれからもよろしくお願いします。