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自分のしたいことをすればいい。

自分のしたいことをすればいい。どんな結果になろうとも。満足が出来るなら。




「はあ……………………」

大きなため息をつく。



松下マヤは何もない家の中で仰向けになって嘆いていた。


なぜ自分はあんな男の言うことを信じてしまったのだろうか。と。


なんの権力も持たない単なる一般人が100万もの借金をどうにか出来るわけがない。

そんな簡単な事は当の既に悟った筈だった。

なのにあいつの勢いに負けてしまった自分がいる。

結局、彼女の言っていた『偽善者』なんだ。上野 伊吹も宇尾間 政も。


(…「助けたい。」なんて誰でも言える。そう。あの校長だってそうだったわ。

『相談に乗るよ』って言った後、部屋に連れて行かれて、全部話したら『君を助けたい。だから協力してくれ。』なんて…どこがよ!!実際はただの私の体目当てのエロオヤジじゃない!!


………そうよ。そうだわ。男なんてみんなそうよ!!結局は女の体目当てなんだ!!

だからあいつらもあの男と同じなんだ!!どうせ私の体目当てで助けたんだ!!

そうだ!絶対そうに決まってる!!じゃなきゃ借金まみれの私なんか助ける訳無い!!

所詮、男はみんな中身はオオカミ。人の皮を被ったオオカミなのよ!!

あははははははは!!アハハッ!!私は騙されない!!あんな低俗共に私は騙されない!!ざまあ見やがれ!!)


「あは…あはは…あはははははははははははははははははははははははははははははははっ!!」


気づけばマヤは笑っていた。

それが何の笑いなのか…自嘲を通り越し、侮蔑に聞こえる笑い声。

周りからみたら狂っている人に見えただろう。しかし、今は家の中。

どれだけ笑おうが、泣こうが誰も気づかない。気づく訳ない。


そう。誰も気づく訳がないのだ。自分がどれだけ苦しんでいるのかなんて。


「あはははは…ははは…ハハ………………………………」

目から熱いものが流れる。それはこめかみを伝って床に落ちた。


―――涙。


「分かってたことじゃない…。そんなこと………分かっていたじゃない…」

そう。誰も気づく訳ない。なんてこと。


この世界はとても合理的なんだ。

力のある人が頂点に。力がない人は落とされる。

とても分かりやすくて合理的。いや、『完璧』な構図。


頂点に立った人は巨万の富と名声を得る。


じゃあ、落とされた人は?


死。


「そうね…私みたいな落ちぶれたニンゲンは死ねばいいんだわ。そうよ。それがいい」

既に涙は引いた。心も落ち着いた。




「…………………死のう…。でも、ただ死ぬだけじゃつまらない。そうだ。最期に見てあげよう。あいつらに。あの偽善者に…。目の前で私が死んだらどんな顔をするのかしら…悲しい顔?嬉しい顔?悔しい顔?どんな顔をするのか見物ね。」

そしてマヤは起き上がり、家を出て学校に向かう。


死ぬために。



~学校の正面玄関~


既に1時間目は始まっている。だから校門は施錠されている。

だが、その校門の入り口には森脇指導教員がいる。

遅刻した生徒を入れるためである。


「…ん?君は…松下 マヤか?」

もの珍しそうな顔で森脇は鍵を開ける。


「初めての遅刻だな。」

「すいません。寝坊してしまいました。」

明るく笑顔でふるまう。


「伊吹のように自転車で突っ込んでくるような奴だったら生活指導もんだったが…いいだろう。今度からは寝坊しないように注意しろ」

「はい。気を付けます。」

笑顔でそう言って校門をくぐり抜け生徒玄関に向かおうと、


「松下」

呼び止められた。


「はい。なんでしょう」

「お前…何かあったのか?」

森脇の口調が急に変わる。


「あはは。やだなぁ先生。いつも通りですよ」

薄っぺらい張り付いた笑顔で答える。


「………そうか。すまんな呼び止めてしまって。早く行きなさい。1時間目が終わってしまう。」

「はい。先生」

マヤは森脇に背を向けて玄関に走って行った。


「…危なかった。もう少しでばれるところだった。あの教師、変なとこ勘が鋭いから」

感情など無い。死人のような顔つきで靴を履き変え教室に向かう。


「死ぬ」と決めたらこんなにも簡単に嘘が憑けるのか。改めて感心する。


学校に来る途中で既にシナリオは考えた。今日、一日を何事もなく過ごし、放課後、屋上から飛び降りる。

どうせ彼らのことだから、感づいて私を追ってくる。屋上に来た瞬間に飛び降りる。話し合う余地は作らせない。


ただ飛ぶだけの簡単な作業。


それで私の勝ち。

お父さんにもお母さんにも会える。

よく考えてみたら一石二鳥じゃないか。

「さあて。じゃあ、あのマヌケ面共を拝みに行きますか。どうせ今日でサヨウナラだけど」


そう言ってマヤは今日で最期となる教室の後ろ側にあるドアからいつもと変わらないように、悟られないように入室した。


「すいません。遅れました」




読んで頂きありがとうございます。


珍しく哲学的な話が出ました。

………それほど哲学的でも無いですが…どちらかと言うと社会的?

まあ、どっちでもいいか(投げやり)


さて、これからどうなることやら………この作品で初めて死人が出るかも知れません。

ホント、どうなることやら。


とくに何も考えてませんので、これにてサヨウナラ〜。

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