プロローグ 魔王の右腕
なんか、異世界物を書きたくなって、なんか適当に書いてみました。
プロローグはちょっと重たいストーリーです。
第一話からはちょっとギャグも混ぜて書きます。
まあ、ゆったりと読んでください。
死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。
はーっ。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
死ぬ。死ぬ。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。
死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。
本当に?本当に私は死にたくないのか?
死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。
なぜだ?なぜだ?なぜそう思う?
私の本音は死にたいと言っている。
死ぬ。死ぬ。死ぬ。
あぁ、そうか。
死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。
こんな糞人生から...抜け出すためには。
死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。
死ぬしかないのか。
死ぬ時の私は、己の本音を初めて、知った。
***
———魔王の右腕は頭が切れて強い。
これは、世界に存在している認識の相違のなかで、最も正すべきものだ。
私は現魔王であるマールム・アブソルートゥムの右腕として働いている。
私は当初、魔王の横でブレインとして働く予定だった。
そもそも魔王が、最強という認識が間違っている。
魔王はただ単純に傲慢なだけだ。
金を望み、力を欲し、地位を得ようとする。
それだけが、魔王を魔王たらしめる理由だ。
魔王はやがて欲望に溺れ、自分の望みすら叶えられなくなる。
意思と思考が乖離し、何をしようとしても、その通りに行動できなくなる。
いわば、病気のようなものだ。
病気と言えば仕方ない気もするが、極悪さと強さは憎悪に値する。
村の救済を装い救世主と名乗っておきながら、服従魔法を使用する。
勇敢に戦った勇者を臆病者に、最後まで仲間を守った人物を裏切り者に仕立て上げる。
一国を滅ぼす時、一人だけ救うと言い殺し合いをさせ、その最後の一人も残酷に殺す。
人間の感情を理解しているからこそ、タチが悪い。
私自身、魔族だから人間を殺すことや支配することに関して、なんとも思わない。
しかしそんな私でも、魔王の非道さには苛立ちを覚える。
それを補助するのが右腕という仮の役職だ。
だから右腕は他人に利用されやすいバカが任命される。
それは幹部どもが理不尽に魔王に殺されたくないからだ。
魔王のように極悪非道なことをやれなくては、右腕は殺される。
———私は、そんな役職についていた。
***
「おい、どうなってる!この飯は!」
泥酔したマールム魔王が、皿を壁に向かって投げつけながら、声を荒らげていた。
皿は見事に砕け散った。
高級品である。おそらく私の三か月分の給料より高い。
いや、待て。
私の給料は三か月分まとめて支給される予定だったが、先月も先々月も支給されていない。
つまり、私の給料はゼロだ。
……なるほど。
皿より私のほうが安いのか。
少し泣きたくなった。
「申し訳ございません。」
「お前に責任は取れぬ。料理人を呼んでこい!エルディア。」
私は一礼した。
「は。」
———あぁ。これは料理人が死ぬ。あいつはいい奴だったんだが。
死の宣告をしにゆくのは、気が乗らない。
魔王城では、食事の味付けを間違えただけで死刑になる。
塩を入れすぎても死刑。砂糖を入れすぎても死刑。魔王の機嫌が悪ければ、完璧な料理でも死刑だ。
もはや料理人にできることは、料理を作らないことくらいである。
まあ、それをやったらやったで、職務放棄として死刑になるだろう。
詰んでいる。
キッチンの入り口に立ち、大声で呼んだ。
「魔王様の料理を作ったのは誰だ!?」
「は、はい。私でございます。」
ドワーフの料理人が手を挙げた。
気のいい男だった。
以前、私が研究に没頭して三日間食事を忘れていた時、黙ってパンを差し入れてくれたことがある。
あのパンは美味しかった。
できれば、今後も食べたかった。
「魔王様がお呼びだ。」
「...はい。」
おどおどとしたような目。
額に滝のように滲み出てくる汗。
突然、震え始める腕と足。
そんな料理人の姿を見つめながら思った。
———ああ、哀れだ。
「魔王様、お連れいたしました。」
「エルディア。下がって良い。」
「は。」
「料理人、名を述べることを許す。」
「は、はい。私はル、ルシオンと言います。」
「わかった。名は体を表すとはその通りだ。その糞のような名前に(※魔王様、個人の意見です。)ふさわしい飯だ。それは死に値する。」
「そ、そんな。私はこの料理に誇りを...」
———そんなことは言わぬ方が良いものを。
魔王の鋭い眼光が飛んだ。
「何か言ったか。」
「い、いぇ。」
私は心の中で手を合わせた。
安らかに成仏してくれ。
私が瞬きをした瞬間。
魔王の手が動くと同時に、料理人の体が二つに裂かれた。
「よく喋る無能は、死ね。」
命を何だと思っている。
「即座に片付けを。」
「は。」
カーペットの掃除が大変だから容易く殺すのはやめて欲しいものだ。
***
元々私は、知能に長けている魔人族だった。
それで研究員として魔王城に連行された。
そのまま研究成果を少しも残さないまま、『お前は右腕に任命された』という通知を受けた。
私はその時、気づかなかった。任命を告げた幹部が、不敵な笑みを浮かべていたことに。
その時は喜んだものだったが、今となっては、断ればよかった。
魔王城で働く日々は、そんな具合だった。
朝は魔王の機嫌を確認し、昼は幹部の嫌がらせを処理し、夜は魔王が壊した備品の修理を手配する。
時折、魔族の反乱を鎮圧する。
たまに他国の侵略を指揮する。
合間に魔王の愚痴を聞く。
……私は何の仕事をしているのだろう。
ただの研究好きな魔族だったのだが。
———先の一件のすぐ後。
「エルディア様。」
魔王城内部に伸びる広い廊下で、幹部の一人に話しかけられた。
「なんでしょう。」
「西国にて怪しい動きが増えているようです。」
「具体的にどのような動きがあるのですか。」
「魔族を例年より多く奴隷としたり、勇者の出発式を頻繁に行っているようです。魔王様へご報告を。」
「……あなたが報告すればよいのでは?」
「私は現在、別の重要な任務を抱えておりまして」
「その任務とは?」
「エルディア様に報告をお願いすることです。」
———なっ、こいつ。上が悪ければ、下も悪いではないか。
「わかりました。報告に行って参ります。」
右腕という名ばかりの職のため、いまだに幹部には敬語を使っている。
西国か。
西国といえば、勇者の活動が活発と聞く。
気をつけなければな。
魔王城の最深部にある、魔王との謁見所に向かった。
扉の前に立つ、見慣れないリザードマンの衛兵が立っていた。
「ご苦労」
「...」
一礼を交わし、大きな扉の前で一呼吸を置いてから言った。
「魔王様。今宜しいでしょうか。」
「ああ、入れ。」
「失礼致します。」
「どうした?エルディア。」
「ご報告がございます。」
「なんだ。それは良いことか悪いことか。先に述べろ。」
「悪いことです。」
「わかった。言う事を許可する。」
「ありがとうございます。最近、西国の動きが怪しいようです。」
「どのようにだ。」
「魔族の奴隷の増加、勇者の出発式の増加などが挙げられています。」
「ふむ。勇者関連もあるのか。」
「はい。」
「具体的に調べ上げよ。内容によっては西国を滅ぼすことになりかねん。情報に誤りを加えるな。」
———どうせ滅ぼしてもいいだろう、くらいに思っているだろうに。
「は。失礼致します。」
「下がれ。」
魔王の元から離れようとしたとき、つい前までは扉の前にいたはずのリザードマンが、私の目の前にいた。
「なんでしょう?」
「悪いな。」
「は?」
衛兵の手が動いた。
「がっ......!」
———なんだ。急に、胸のほうが、痛..い。
いや、痛いなんてものでは....
理解が..できな....い。
「...心.....臓を...」
衛兵のリザードマンの腕が、私の心臓を貫いていた。
「な..にも.....のだ...貴様っ!」
「はぁあ。哀れだね、魔族といえど。」
「あ゛ぁ!?」
「俺の名前は、セレス・レグラス・ヴェイン。先の話に出た、西国の勇者だ。」
私の胸から腕を外し、私は膝をついた。
見上げた衛兵は、リザードマンの姿をした衛兵ではなかった。
金髪に、翡翠色の瞳。立っていたのは、紛れもない西国の勇者だった。
心臓を貫かれた痛みは、耐えることができそうもない。
私は...死ぬのか。
死ぬ。死ぬ。死ぬ。
死にたくない。死にたくな....。
いや、死んだほうがいいか。
この人生を捨てることができるなら...死んだほうがいい...
「勇者あああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
薄れゆく意識の中、最後に聞こえたのは魔王の雄叫びであった。
———ざまぁみろ。
.....死ぬときに..思った感情が...喜びで...良かったぁ。
***
「おぎゃあ、おぎゃあ!」
変に優しさを感じる温かい手に包まれていた。
———なんだ、この手は。
私は知っていた。
こんな温かみを持つ生物など...
——人間だ。




