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メイさんと自己紹介をし合う

「それじゃあ、またいつか」

「ああ、帰って来ても居場所がないようにしてやるよ」


 そこまでは流石に難しいと思うけどなあ。


「まあ……頑張ってね」

「……後は、妹をよろしく頼む」

「うん。それは……自分から死に向かわない限りは、ね」

「……そうだな」


 間借りしていた家の掃除も軽くしてから。

 そんな会話を経て、その家の前で別れた。

 都市の外れからだと、昨晩起きた不穏な出来事の影響は察する事も出来ないけれど。

 どうせメイ達にはどうしようも出来ない事だからと、その高く聳えるダンジョンに背中を向けて、都市を後にする事にした。


*


 南の国境近辺まで、歩きならざっと30日以上は掛かるらしい。

 都市からの整備された街道も、その都市の食糧事情を支える田園風景も10日近くは普通にずっと続くとか。


「馬車とか竜車とかは使わないんですね?」

「まあ、エロクーも居るし。それに私は重いし」

「ワタシも荷物は担いでいても、車を牽くのは流石にしたくない。

 ああいうのは、それしか能のない奴がやる事だ」


 ……乗客を快適に乗せるのにも技術が必要だとか聞いた事あるけど。


「まあ、お金はあるけど、歩くのも好きだから。ディッツェは嫌?」

「ガラドンが歩くの嫌いって言ったら、そりゃあもうガラドンじゃありませんから」

「そうなんだ」


 軽そうで華奢な見た目だけれど、まあ、だからこそ、どこまでもいつまでも歩く事には疲れないイメージもある。


「それより、メイさんの事聞きたいですね」

「まあ、答えたくない事じゃなきゃ答えるけど」

「メイさんって、西の出身ですよね? 私は都市から東に行った山脈の出身ですけど、西の街よりも先にあるダンジョンよりも更に先の西って、閉ざされている印象が強くて」




 んー……。まあ、否定は全く出来ないね。私は、西のダンジョンから距離でいうと15日くらい歩いたところの山脈の出身。

 本当に閉ざされてるって訳でもなくて、少しずつ村とかも他の場所にあって、更に西の方に行くと街もダンジョンも別にあるよ。そっちとは交流もしてるし。

 でも、だからと行ってその更に西のあるダンジョンから、真っ直ぐ私の働いていたダンジョンに行く事はないね。そもそも道もないし。

 要するに、西のダンジョンと私の生まれ故郷には山脈がとにかく連なっていて、距離で言うなら本当に歩いて15日くらいなんだけど、きちんと道を選ぶなら30日あっても足りないくらい。

 だから……本当にね、あんまり……うん、もし来たとしても面白いところがないし、ミノタウロスしか居ないから、ミノタウロス以外が来たら白い目で見られるし、だからといってミノタウロスが来たらここに移住するようにとにかく丸め込もうとするし。

 そんな、本当に古いままの田舎。

 私も西のダンジョンで実際にフロアボスになる前の半年で、かなり偏見が解けたもの。

 例えば別の種族で番っても、問題が起きる事がないなんてその時まで知らなかったし。

 だから、うん、一度くらいは親に顔を見せに帰っても良いかなって思うんだけど、あの場所でまた生きていこうとは思わないなあ。

 それにどうせ、あの場所じゃ元から異端だったからね。

 ……先祖返り、ね。

 見ての通り、大きさとしてはミノタウロスとしては普通かそれ以下。

 でも水に入ったら容赦なく沈んじゃうくらいに、普通よりとても重くて、だからパワーも高くて、ついでに僧侶の素質もある。

 言っちゃえばそれだけなんだけどね。

 私の性格がこうなのは、その先祖返りかどうかは知らない。先祖返りする可能性もかなり低くて先祖以外に話はあんまり伝わってないし、その先祖は驚く程穏やかだったみたいだし。

 ただ、一応ね。そんな私の故郷だけど、誇れるところもなくはなくて。

 薬を作る事に長けているの。

 と言っても、今の時代、薬なんて使わずとも大半が僧侶の魔法や祈祷で大体どうにかなっちゃうんだけど、少しだけ、どうにかならないものもあるのに対して色々と作れる。

 体内の魔力を回復したりだとか、特殊な毒とかを治したりだとか、私が持っているこの薬も、その一つ。

 うん、正直麻薬にかなり近いと思う。でも、反動が酷いだけで麻薬みたいに依存性がある訳でもないし。

 ダンジョンで働いていた時に、この薬の頼りになった時も結構あった。

 ただ、難点もあってね。作る為の素材はそんな珍しくないものばっかりなんだけど、効果が人によってかなりまちまちで。反動だけ来るならまだ良い方で、意識が飛んで、本当に敵味方の区別もつかない狂戦士さながらになるだとかもあって。

 だから、まあ使ってみたいなら、そのうち保険の効くダンジョン内で試してみれば良いんじゃないかな。狂戦士になったらさっさと殺してあげるから。

 え、私自身? 疎まれてた時に、度胸試しでやったの。……より疎まれる事になったけどね。




 じゃあ、私からも。

 私の生まれ育った村は、ガラドンばっかりだけど、別に一色に染まっている程でもなくて。ミノタウロスとか他の草食寄りの獣人も居たり、ヒューマンやエルフやドワーフとかでも、血の気の少ない人は結構居たりしました。

 まあガラドンそのものが歩くの大好きで、都市まで歩いて行こうと思えば行っちゃうくらいだし。

 そのワーライオンも今思えば血の気の少ない人だったと思うんだけど、私が初めて見た肉食の獣人で、鬣も立派で。本当に、本当に、見た時は胸に突き刺さっちゃって。

 ……はい、その話は後にします。話そうと思えばもっともっと話せるんだけど。

 それで、ええと。

 多分、メイさんの故郷ほどは価値観とか凝り固まっていなかったかなあって思うけれど、でも五十歩百歩だとも思います。

 ……実は私は3人兄妹どころじゃなくって、大兄ちゃんは一番上だけど、私と中兄ちゃんの間だったり、私よりも下にも沢山居て……どれだけかって言うと、20人はまず居る。もしかしたら今も新しく生まれてるかも……。

 その理由は大兄ちゃんで。

 メイさんと同じく先祖返りだって分かったから、私の親のその周りは、もしかしたら先祖返りがまた生まれるかもしれないから沢山産め産めってなって……。

 そして大兄ちゃんは、あれでいて真面目なところが多いから、沢山子供が出来た分働いて働いて。でも、ある時ぷつんと切れちゃって、大暴れした挙句に都市の方に行っちゃった。

 それにこっそり2番目の中兄ちゃんも付いて行って。私はまあ、問題児だったから追い出される形で都市に流れて、合わせてダンジョンで働き始めました。

 それで……まあ、やっぱり、大兄ちゃんみたいに先祖返りでなくとも、ダンジョンで働けるくらい魔法が使えたり出来る兄妹は私や中兄ちゃん以外にも結構居たから、私の両親はやっぱり優秀な子供が生まれやすい組み合わせだったのかなあ、って思わなくもないんだけれど。

 でも、大兄ちゃんと中兄ちゃんはもう二度と故郷には帰らないと思います。私も、またあのワーライオンのお婿さん見に行きたいけど、きっと帰ったところで見せてもくれないし、それに多分思い出の中でずっと反芻している方が良い気もしているし、帰らないかな。

 ちょっとだけ寂しいですけどね。

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