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メイは自分の耳を疑う

「メイちゃん達が異変の起きた35階でどのように立ち回ったかも聞いたけどね。

 まあ、必要なのはやっぱり連携だね。

 異変が起きていたとは言え、35階で少しでも危なげがある時点でね、拙いと言わざるを得ないね。

 どっちも単騎で街のダンジョンの15階相当が2人も居るのに、メイちゃんの陰に隠れて本来の実力も発揮出来なくなっちゃってるんじゃないかな。

 再戦した時もメイちゃん任せだったみたいだけど、それもメイちゃんが一番最善って思っちゃう時点でね。

 なので、これから旅を続けるにあたって、そして将来的に北にも着いて行きたいなら、ウトとエロクーにはメイちゃんとも連携を取れるようになって貰います」


 ……来た。

 思わずウトは息を呑んだ。

 ドラゴニュートのユーリさん。体格はヒューマンより一回り大きい自分と同じくらい。

 でも、中に詰まっているものは自分とは……メイさんとも段違いの濃さを誇るというのは、その姿を見ただけでも分かる。

 種族としての素質以上に、更にメイさんよりも鍛えているその内実。

 先日の会話を思い出す。


『あの、メイさん……ユーリさんの扱きって、どれだけ厳しいのか教えて貰っても良い?』

『んー……んー……。本当に死ぬ一歩手前や、本当に精神が壊れてしまう一歩手前を、全部理解されてるって思った方が良いね』

『……』


 空いた口が塞がらない。


『ついでに言うと、効率良く鍛える為ならお金も手段を選ばないよ』

『…………』

『その二つを組み合わせるとね。才能があるとは言えただの田舎娘だった私が半年でフロアボスを務めるようになったの』


「まず、ウト。

 君がメイちゃんと共に戦うには、その疾さをもっともっと活かせるようになる必要があります。

 要するに、メイちゃんより先に敵陣に突っ込み、掻き乱せるようになりましょう。

 その為に、これからダンジョンに、単独で挑んで貰います」

「えっ」

「30階で、1人でデゼンとデケムを相手してください。

 ちょっと魂の質(レベル)の高い、致命傷を受けた時に、それを回復する魔法を使える僧侶も呼んであるので、保険処理なしで何度でも戦えます。

 それにそうすれば、階層に出入り直す必要もなくて、変なところに入ってしまう心配もなくなるからね」

「えっ?」

「目標は10戦して7……いや、8勝出来るくらいまでかな。じゃ、頑張ってね」


 肩を掴まれた。

 いつの間にかデゼンが後ろに居た。


「この頃検証の為に殺されまくっていたからな。久々にいい体験が出来そうだ」

「あ、あの?」

「問答無用!」


 引き摺られていった。




「さて、次にエロクー」

「は、はい!」


 らしくない、しゃきっとした立ち姿と言葉遣い。


「君のグリフォンとしてのパワーはメイちゃんの前では余り役に立ちません。疾さで言ってもメイちゃんに負けてるからね。

 それより、魔法を磨いて貰います。後方から、空を飛びながら、魔法による援護を主体として立ち回れるようにしましょう。

 多分、特別な属性以外は使えるようになれると思うから、まずはそれを3日でその体に刻み込みます。

 その後、35階に行って貰います」

「……」

「まあ……全員倒せとは言わないけど、8人くらいまで倒せると良いかな」

「……はい」

「じゃ、後で僕直々に体で色んな属性の魔法を受けて貰うから、そこから学んでね。それが一番早いから」

「…………はい?」




「それで、メイちゃん」

「うん」

「覚醒を使えるようになったのは良いけど、まだそこまで使い慣れてないだろうからね。

 僕とひたすらに戦って貰います」

「分かった」

「後、毎回覚醒は解いて、斧槍も持たない状態で、覚醒してね。最初は猶予を長く設けるけど、段々短くしていくから」

「……分かった」


 そこからの10日以上は、ウトとエロクーにとっては今まで過ごした日々の中で最も濃く、最も過酷で、最も成長した時間となった。


*


*


「……空が、青いなあ」

「青い、なあ」

「何もない1日が、こんなにも良いものだとは、今までの俺は、思わなかった」

「平穏って、とても掛け替えのないものなんだな」


 ユーリが及第点と認めて、

 仰向けになってほとんど動かないまま、口だけ時々動かすウト。

 四肢すら放って横になっているエロクー。

 特にエロクーのそんな姿、寝る時ですら見る事はなかった。

 メイはそんな姿を見ながら、都市で買って来た様々なご飯を黙々と食べていた。


「あのさあ、メイさん……なんでそんな平気なの?」

「んぐんぐ……こういう事何度もやってたら慣れるよ」

「えぇ……」

「でも、私も今日一杯は何もしたくないけどね。もぐもぐ。

 ……あ、ディッツェちゃん来たよ?」

「……無理、動きたくない」

「ワタシも」

「まったくもー……」


 仕方なくメイだけが腰を上げて出迎える。

 ヒューマンくらいの背丈しかない、そのディッツェに腰を下げて目線を合わせて。


「ええっと……これからよろしくお願いします」

「よろしくお願いします。戦闘には役立てませんが、宝箱開けは頑張りますので」


 そう言いつつ、解錠の為の道具だけではなく、弓や短剣も持っていた。それから杖も。

 その基礎技術をメイが鍛えられている最中にみっちり教えられていたのは、メイも知っていたし、兄の補助的な役割でしかなかったとは言え、魂の質(レベル)も凡人よりはよっぽど高いのが何となく伺えた。

 そのディッツェは寝転がってる2人の方を見て。


「ウトさんと、それからエロクーさん、ですよね?」

「うん、まあ。こんな事になっちゃってるけど」

「やっぱりエロいですね」

「……ん?」


 聞き間違えたかな?


「いや、エロクーさんに啄まれる時、初めてそんな死に方して興奮しちゃって。

 その嘴、今見てもゾクゾクします」

「…………んん??」

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