赦罪譚
月面の駅で
名残が肩に降る
「さよなら」を言い損ねた言葉たちが
空白を食べて大きくなっていった
指の震えで描いた樹形図を
炎であぶり出すように
僕らは後悔を音にして
口ずさむ術しか知らない
もしすべてが記号だったら
君を「友」と呼んで傷つけることもなかった
もし今が夢だったなら
この世界に落ちた涙の重力に抗えたのだろう
思い出が自爆ボタン
選べなかった可能性だけが
街灯に吊るされて揺れていればいい
もし言葉が雪だったなら
降り積もる前に溶け合えただろう
もし視線の先に終わりがなかったなら
赦しを知らずに
美しさと痛みを入れ替え続けていた
結局
どれも 「愛してる」の言い換えだったと気づく
本当にさ
化け物は化け物らしく丈に合わせて生きていればいいものを