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7話 上位種


 おかしいと思ったらハイエルフか。

 普通のエルフと違って長命――ほぼ俺と同じ不老である存在だ。

 

 街にいたら大騒ぎになる。下手したら連れ攫われて奴隷にされる可能性がある。

 一般のやつは見分けがつかなく普通のエルフだと思う。

 まあ、ハイエルフは自分の身が危険だとわかり、ひっそり人気のない場所で暮らしているのが基本である。


 そう、昔は――。 


「この子、本当にハイエルフなのか?」


 公の場ではハイエルフは200年前に絶滅したと言われている。

 だが、あくまで公の場での話だ。

 それは噓で絶滅してない――魔王(トワ)に保護されて魔族領のどこかで平和に暮らしている。


 そう、友人でもある俺でさえ、知らない場所で、

 もしいたら報告してくれと言われたが、長年生きている俺でもハイエルフに会ったことがないからわからない。だがフローラは俺と会う前は、ハイエルフにいたずらして遊んでいたと言っていた。

 会ったことのあるフローラなら普通にわかる。  


「そうよ、でもおかしいわ。アナタ、ちょっと魔力が異質よ。ハイエルフならもっと魔力が輝いてもいいのに、奥底で眠っている感じだわ」


 ハイエルフで間違っていないようだが、何か違うのか?

 確かに奥に膨大な魔力を感じる。


「俺は会ったことはないが、まだ未成年だからでは? まだ成長段階で発達しない可能性があるぞ」


「いいえ、違うわ。昔会ったハイエルフは子どもでも輝いていたわよ。当時、10歳のクソガキだわ。500年前でも覚えているわ……」 


 忘れない思い出みたいだ。

 「いたずらした」しか教えてはくれないが、ロクなことはしていなかっただろうな。


「黙ってないで何か言いなさいよ。隠しても無駄よ」


「精霊さんに隠しても無理か……。そう、私はハイエルフみたい」


「みたいって、他人事のように言うわね。上位種の自覚はないの?」


「だって両親は普通のエルフだもん。私だけハイエルフってわからない……」


 聞いたことがある。稀にエルフでハイエルフが生まれることがある。

 片親の先祖がハイエルフならあり得る話だ。


「だから奥底の魔力が眠っているのね、納得したわ」


 フローラは自分だけ納得した。

 やはり、エルフで生まれるハイエルフは少し性質が違うのかもしれない。

 まあ、少し見た目が違う――耳が長めなのがハイエルフと思ったほうがいいか。

 

 あくまで基準だ。全部がそうではないが。


「あの……村の人には内緒にしてほしいの……。私がハイエルフってことは誰も知らないの……」


 知らないのか?

 こんな山奥に住んでいれば隠さなくてもいいと思う。

 訳ありならしょうがない。


「わかった、約束する。フローラ、ベラベラとしゃべるなよ」


「なによ! アタシが口が軽いみたい言うじゃない! 約束は守る主義よ!」


 俺の発言で顔を膨らませる。

 あまり守ったことがないから心配である。


 今回は大丈夫と信じよう。


「ありがとう! 約束ね! 名前はまだだったね、私はユーディア――ユーディア・ラピスラズリ!」


 少女――ユーディアは笑顔になった。

 家名持ちか。おい……ラピスラズリって――。


「ユーディア、ちなみに母親の名前は?」


「お母さんの名前? エーニ・ラピスラズリだよ」


 おいおい、収納鞄を開発したエルフではないか……。

 その功績のあまり有名になりすぎて街中を歩けないと聞いた。

 周りを魅力するほどの容姿との噂も。


 まさか子どもを生んで亡くなったとは……。

 アレクが狙っていたとは言っていたが残念だったな。

 じゃあ、子どもが山奥にいるのはハイエルフを隠すためにここに住ませたのか?


 いや、まだ確定したわけではない。


「ユーディア、ちなみに母親は商品を開発して売ったことはあるか?」


「あるよ、私が持っている収納鞄よ。けど、これはお母さんが私専用に作ってくれた特別な鞄なの。大事なもので形見でもある」


 腰に付けた青い小さな鞄を見せて、中から次々と山菜やキノコを出す。

 本当だ……収納鞄だ……。

 しかし、ここまで小さい収納鞄は見たことがない。売っている鞄は背負う物しかないはずだ。

 売っていない物を持っているってことは、本当にエーニ・ラピスラズリの子どもだ。


 ここまで自慢したら――。


「アナタ、大金持ちじゃない!? 親が稼いだお金はどうしているのよ!?」


 お金にがめついフローラはユーディアの顔に近づき、問いかける。

 ダメだ……金がらみになると止められない……。

 金なら俺たちもそれなりに持っているから気になることではないぞ。


「お金は契約した商会の管理者にお願いしているから、どのくらいあるかわからないよ……。いつでも言えば引き下ろすことができるけど……成人になるまで自分で管理できないよ……」


 まあ、普通ならそうだろうな。さすがに子どもにはまだ管理できない。親が稼いだ額なんて言えないだろ。


「なんだ、知らないならいいわよ」


 わからなければ潔いな、というか金の話は人様とするようなものではない。


「母親の自慢は控えておけよ。世界中に影響を及ぼしたエルフだからな。特に街で行ったときは家名は言わようにな、金目的の輩に絡まれるぞ」


「えっ!? お母さんって、そんなに有名だったの!? お兄さんが言うのなら気をつけるよ」


 この様子だと街には行ったことはなさそうだ。

 やっぱり母親は子ども身を隠したかっただろ。


「よろしい。立ち話もあれだ。そろそろ戻らないとな。ああ、それと俺の名前は――」


 ユーディアに俺たちの自己紹介をして、光魔法(ライト)で明るい球体を創り、夜道を照らして村へ向かう――。

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